
EC市場の拡大に伴い、メーカーが消費者に直接商品を販売するD2Cモデルが注目を集めています。
市場が成長する一方で競争も激化しており、企業の成長戦略としてM&Aが活発化しています。
この記事では、D2C企業の経営者に向けて、M&Aのメリット・デメリットから具体的な手続きの流れ、企業価値を高めるポイント、成功事例まで、意思決定に役立つ実用的な情報を網羅的に解説します。
\成約例や支援の特徴・流れを紹介/

電子商取引市場の拡大に伴い、D2C(Direct to Consumer)業界は急速な成長を続けています。
この成長は、消費者の購買行動の変化が大きく影響しており、SNSでの情報収集や商品の比較検討が容易になったことで、消費者が企業と直接つながるD2Cモデルの優位性が高まっています。しかし、市場の活性化とともに競争は激化し、多くの新規参入や大手企業の参入も相次いでいます。
こうした背景から、D2C業界は市場の成熟期を迎えつつあり、差別化や効率的な事業運営がこれまで以上に重要になっています。
D2Cとは「DirecttoConsumer」の略で、メーカーが自社で企画・製造した商品を、卸売業者や小売店などの中間業者を介さずに、自社のECサイトなどを通じて消費者へ直接販売するビジネスモデルを指します。中間マージンを抑えられる一方で、広告・物流・顧客対応などのコストを自社で負担するため、価格設定次第で収益性をコントロールできるという特徴があります。
また、顧客と直接つながることで、購買データや顧客の声を収集・分析しやすく、スピーディーな商品開発やマーケティング施策に活かせます。この顧客とのダイレクトな関係構築が、ブランドへのロイヤルティを高める重要な要素となっています。
インターネット普及により、消費者はいつでもどこからでも商品やサービスにアクセスできるようになりました。これに伴い、商品を購入する際にインターネット上の口コミやSNSでの評判を重視するなど、消費者の購買行動は大きく変化しています。
この変化を背景に、D2Cブランドは顧客と直接コミュニケーションを取り、ニーズを素早く把握して商品開発やマーケティングに反映させることで、強い顧客エンゲージメントを築き、急速な成長を遂げました。この消費者行動の変化への対応がD2Cの成長を後押ししています。
D2C市場は急速な拡大を続けていますが、その成長とともに競争が激化している点が課題です。
新規参入ブランドの増加に加え、大手企業もD2Cビジネスへ参入しており、差別化が難しくなっています。また、広告費の高騰や物流コストの増加も、企業の収益を圧迫する要因となっています。D2C市場は成熟期を迎えつつあり、単に商品を販売するだけでは生き残りが難しい状況です。
このような背景から、企業は独自のブランド価値を確立し、顧客との強固な関係を築くことで、競争優位性を確保する必要が出てきています。

経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によると、2021年の国内のBtoC-EC市場規模は、前年から7.35%増加し20.7兆円に達しています。この市場拡大に伴い、D2C業界は活発な動きを見せており、M&Aの動きも進んでいます。
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近年、大手企業が新しい成長戦略としてD2Cブランドの買収を積極的に進めています。これは、成長分野であるD2C市場への参入や、既存事業とのシナジー効果を狙ったものです。大手企業は、買収対象のD2Cブランドが持つ独自のブランド力や熱心な顧客基盤、そしてデータに基づいたマーケティング手法を高く評価しています。
また、D2Cブランド側から見ても、大手企業の資金力や販売チャネル、経営ノウハウを活用することで、ブランドのさらなる成長やグローバル展開を加速できるというメリットがあります。このような戦略的な買収は、D2C業界全体の活性化にも繋がっており、今後もこの傾向は続くと予想されます。
近年のD2C業界におけるバリュエーション評価は、従来の財務指標だけでなく、ブランド力、顧客基盤、データ活用能力といった無形資産が重視される傾向が強まっています。
これは、D2Cビジネスが顧客との直接的な関係を通じて、高い顧客ロイヤルティやLTV(顧客生涯価値)を創出する特性を持つためです。
例えば、単に売上規模が大きいだけでなく、特定のニッチ市場で強いブランドを確立しているD2C企業や、SNSフォロワー数やメルマガ会員数といった顧客エンゲージメントを示す指標が高い企業は、将来的な成長性や収益性を高く評価される傾向にあります。一方で、競争激化による広告費の高騰や物流コストの増加など、D2C特有の課題もバリュエーションに影響を与える要因となっています。
このような状況下では、安定した収益モデルの確立や、独自の強みを明確に提示することが、企業価値を高める上で不可欠です。

D2C事業の売却は、単に会社を手放すというネガティブな選択肢ではありません。
経営者にとって多くのメリットをもたらし、創業者利益の確定による新たな挑戦への資金確保や、後継者問題の解決につながります。
ここでは主なメリットを4つご紹介します。
・事業の成長資金を確保できる
・後継者がいなくても事業を存続させられる
・大手資本のもとでブランドをさらに成長させられる
・従業員の雇用と生活を守れる
■M&Aの売却とは?売却価格の決め方や手続き、メリットを徹底解説
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■関連記事:M&Aのメリットとは?買い手・売り手それぞれのメリット・デメリットを徹底解説!
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D2C事業を成長させるには、新商品の開発、マーケティング、人材採用などに継続的な投資が必要です。
M&Aによって事業を売却し、創業者利益(キャピタルゲイン)を得ることで、まとまった資金を確保できます。
この資金を元手にして新しい事業を立ち上げたり、アーリーリタイアを実現したりと、経営者は次のステージへ進むための選択肢を大きく広げることが可能です。また、会社の借入金に対する個人保証からも解放され、精神的・経済的な負担を軽減できるという大きなメリットもあります。
多くの中小企業と同様に、D2C企業においても後継者不足は深刻な経営課題の一つです。経営者が高齢になっても、親族や社内に適任者が見つからず、事業の継続を断念せざるを得ないケースは少なくありません。
M&Aは、このような後継者問題を解決する有効な手段となります。自社事業に魅力を感じ、成長させてくれる意欲のある第三者に経営を引き継ぐことで、これまで育ててきたブランドや事業、そして従業員の雇用を守りながら、会社の存続を図ることが可能です。
自社単独の経営では、資金や人材、ノウハウの面で限界があり、成長が頭打ちになることがあります。
M&Aによって大手企業のグループに加わることで、その豊富な経営資源を活用できるようになります。
例えば、大手の持つ強力な販売網や物流網を利用して販路を拡大したり、潤沢な資金を投じて大規模なプロモーションを展開したりすることが可能です。
また、大手企業が持つブランド力や信用力を背景に、新たな取引先との関係構築や優秀な人材の採用が容易になり、ブランドのさらなる飛躍が期待できます。
後継者不在や業績不振を理由に廃業を選択した場合、従業員は職を失うことになります。これは経営者にとって非常に心苦しい決断です。
M&Aによって事業が第三者に引き継がれる場合、スキームによっては従業員の雇用契約も買い手企業に承継され、彼らの雇用と生活基盤を守ることができる可能性があります。たとえば、株式譲渡の場合は原則として雇用契約も承継されます。事業譲渡の場合は、原則として従業員の同意を得て雇用契約が承継されます。
さらに、買い手が大手企業であれば、福利厚生制度が充実したり、キャリアアップの機会が増えたりするなど、従業員にとって労働条件が改善されるケースも多く、M&Aが従業員のメリットにもつながる可能性があります。

ゼロからD2C事業を立ち上げる場合、時間やコストがかかるだけでなく、失敗のリスクも伴います。しかし、既存のD2C事業をM&Aで買収することで、これらの課題を解決し、スピーディーに市場へ参入することが可能です。
買収側がD2C事業をM&Aで買収する3つのメリットを紹介します。
・新たな市場へスピーディーに参入できる
・独自のブランドや熱心な顧客基盤を獲得できる
・ECサイト運営のノウハウや人材を取り込める
■関連記事:買収とは?目的やメリット・デメリット、手法、流れを解説
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自社で新たにD2C事業を立ち上げる場合、市場調査から商品開発、ブランド構築、ECサイトの制作、集客まで、多くの時間とコスト、専門知識を要します。一方、M&Aで既に事業基盤が確立されたD2C企業を買収すれば、これらのプロセスを大幅に短縮し、事業運営をすぐに開始できます。
特に、自社の既存事業と親和性の高い領域のブランドを獲得することで、シナジー効果を早期に発揮し、競争優位性を素早く確立することが可能です。時間を買うという観点からも、M&Aは非常に効率的な手段といえます。
D2C事業の成功において、独自のブランド世界観を構築し、それに共感する熱心なファンを獲得することは極めて重要です。しかし、このような強力なブランドと顧客基盤をゼロから築き上げるには、長い時間と多大な労力がかかります。
M&Aを活用すれば、ターゲット企業が時間とコストをかけて築き上げてきたブランドイメージ、信頼、そしてロイヤルティの高い顧客基盤を一度に獲得できます。この顧客基盤は安定した収益源となるだけでなく、新商品の展開やクロスセルの基盤としても活用でき、事業拡大の大きな足がかりとなります。
D2C事業を成功させるためには、Webマーケティング、SNS運用、CRM(顧客関係管理)、データ分析、物流といったEC運営に関する専門的なノウハウが不可欠です。これらのノウハウを持つ人材を自社で育成したり、外部から採用したりするのは容易ではありません。
M&AによってD2C事業を買収することは、単に事業を手に入れるだけでなく、その事業を支える優秀な人材や組織体制をまとめて自社に取り込むことにつながります。これにより、自社全体のEC事業のレベルアップやDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させることが可能です。
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D2C事業のM&Aは、専門的な知識や交渉力が求められる複雑なプロセスです。
一般的に、専門家への相談から始まり、相手先の選定、交渉、デューデリジェンス(買収監査)を経て、最終的な契約締結に至るまで、半年から1年以上の期間を要します。ここでは、M&Aを円滑に進めるための基本的な流れを7つのステップに分けて具体的に解説します。
【ステップ1】M&A仲介会社などの専門家へ相談する
【ステップ2】売却・買収先の候補を選定する
【ステップ3】経営者同士で面談し、大まかな条件を交渉する
【ステップ4】基本合意書を締結する
【ステップ5】デューデリジェンス(買収監査)が実施される
【ステップ6】最終的な条件を交渉し、最終契約書を締結する
【ステップ7】経営権の移転手続き(クロージング)を行う
■関連記事:M&Aの全体の流れと進め方|検討~クロージングをわかりやすく解説
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M&Aを成功させるためには、豊富な知識と経験を持つ専門家のサポートが不可欠です。
まずは、M&A仲介会社やファイナンシャルアドバイザー(FA)などに相談することから始めます。
専門家は、客観的な企業価値評価(バリュエーション)の実施、自社の強みや希望条件に合った相手先候補のリストアップ、交渉戦略の策定、複雑な契約手続きの支援など、M&Aの全プロセスにわたって重要な役割を果たします。
複数の専門家と面談し、実績や手数料体系、担当者との相性などを比較検討して、信頼できるパートナーを見つけることが最初の重要なステップです。
専門家との契約後、売却側であれば自社の事業内容や希望条件などをまとめた匿名の資料(ノンネームシート)を作成し、買い手候補企業へ打診を開始します。関心を示した企業とは秘密保持契約を締結した上で、より詳細な企業情報(インフォメーション・メモランダム)を開示します。
M&A仲介会社は、幅広いネットワークを駆使して、自社とのシナジー効果が期待できる候補先をリストアップします。これらの候補の中から、事業内容や企業文化、将来のビジョンなどを考慮し、交渉を進める相手を数社に絞り込んでいきます。
候補先が絞られた段階で、双方の経営者同士が直接会って話し合うトップ面談が行われます。この面談の目的は、資料だけでは伝わらない経営者の人柄や事業に対する想い、企業文化などを相互に理解し、信頼関係を構築することです。
また、事業の将来性やビジョンを共有するとともに、譲渡価格や従業員の処遇、売却後の経営体制といったM&Aの基本的な条件について、大まかなすり合わせを行います。ここでの合意形成が、その後の交渉をスムーズに進めるための土台となります。
トップ面談などを通じて、双方がM&Aの実現に向けて前向きな意思を確認できたら、その時点での合意内容を書面で確認するために基本合意書(LOI)を締結します。この書類には、暫定的な譲渡価格、M&Aのスキーム、今後のスケジュール、デューデリジェンスへの協力義務、そして買い手側に付与される独占交渉権などが記載されます。
一般的に基本合意書は、取引条件の多くは非拘束(目安)とする一方で、独占交渉権・秘密保持・費用負担など一部条項に法的拘束力を持たせることがあります。以降の交渉のベースとなる重要な文書であり、誠実に交渉を進めるという意思表示としての意味合いを持ちます。
基本合意書の締結後、買い手側によって売り手企業の詳細な調査であるデューデリジェンス(DD)が実施されます。これは、買収対象企業の価値やリスクを正確に把握するために行われるもので、財務、税務、法務、人事、ビジネスモデル、ITシステムなど、調査は多岐にわたります。
売り手側は、公認会計士や弁護士といった専門家から要求される膨大な資料を迅速かつ正確に開示する必要があります。この過程で開示情報と異なる重大な問題が発覚した場合、譲渡価格の減額や、最悪の場合は取引の中止につながる可能性もあります。
■関連記事:デューデリジェンス(DD)とは?意味や種類、進め方・注意点を解説
デューデリジェンスの結果を踏まえて、最終的な交渉が行われます。DDで発見された問題点などを考慮し、譲渡価格の調整や、従業員の処遇、役員の退任時期、表明保証の内容といった契約の詳細な条件を詰めていきます。
双方の利害が絡むため、交渉は最も難航する局面となることも少なくありません。すべての条件について双方が合意に至ったら、法的な拘束力を持つ最終契約書(株式譲渡契約書など)を締結します。
この契約書はM&Aの取引内容を法的に確定させるものであり、締結後の変更は原則として不可能です。
最終契約書の締結後、契約書に定められた前提条件がすべて満たされたことを確認した上で、経営権を完全に移転させるための最終手続きであるクロージングを実行します。
具体的には、売り手は株式や事業資産を買い手に譲渡し、買い手は譲渡対価を支払います。
これに合わせて、株主名簿の書き換えや役員の変更登記といった法的な手続きも行われます。
このクロージングをもってM&Aの一連の取引は完了となります。その後は、PMI(経営統合プロセス)へと移行し、円滑な事業の引き継ぎとシナジーの創出を目指します。

D2C事業の売却価格は、現在の利益額だけで決まるわけではありません。将来にわたって成長し続ける可能性や、買い手企業との事業シナジーをいかに具体的に示せるかが、企業価値評価を大きく左右します。
買い手企業がM&Aを行う最大の目的は、自社との相乗効果(シナジー)を創出することにあります。
そのため、自社の事業が買い手のどのようなリソース(販売網、顧客基盤、技術力など)と結びつくことで、売上や利益が向上するのかを具体的に説明することが極めて重要です。
例えば、「貴社の販売チャネルを活用すれば、当社の商品の売上は〇%増加が見込めます」といったように、客観的なデータや根拠に基づいた成長戦略を提示できると、買い手は買収後の成功イメージを描きやすくなり、企業価値を高く評価する傾向にあります。
一時的な売上や利益の大きさよりも、将来にわたって安定的に利益を生み出し続けられる事業構造であるかが重視されます。特定の広告媒体に依存せず、多様な集客チャネルを持っていることや、リピート顧客の割合が高く、LTV(顧客生涯価値)を最大化する仕組みが整っていることは大きな強みです。
また、原価管理や業務効率化によって高い営業利益率を維持していることも、収益性の高さを証明する上で重要です。こうした安定した事業基盤は、買い手にとって買収リスクが低いと判断され、高い評価につながります。
D2C事業の競争力の源泉は、他社にはない独自のブランドコンセプトや世界観、そしてそれに共感する顧客との強い結びつきにあります。自社ブランドがどのような価値を提供し、なぜ顧客から支持されているのか、そのストーリーを明確に伝えることが重要です。
加えて、収集した顧客の年齢層、性別、居住地、購買履歴といったデータを分析し、どのような顧客層に支持されているのかを可視化して提示することも有効です。これらの情報は、買い手がM&A後のマーケティング戦略を立案する上で非常に価値があり、企業価値評価を高める要素となります。
現代のD2Cビジネスにおいて、SNSアカウントやメルマガ会員は、顧客と直接コミュニケーションを取り、販売促進につなげるための重要な資産です。
特に、フォロワー数が多く、エンゲージメント率(いいね、コメントなどの反応率)の高いSNSアカウントは、強力なマーケティングチャネルとして高く評価されます。アクティブなファンコミュニティが形成されている場合、その価値はさらに高まります。
日頃から質の高いコンテンツを発信し、顧客との関係性を深め、フォロワーや会員数を増やしておくことが、売却時のアピールポイントとなります。
自社の業績が右肩上がりの成長期に売却活動を開始するのが基本ですが、それに加えて外部環境、つまり市場全体の動向を見極めることも重要です。自社が属する市場が社会的に注目されており、成長トレンドにある時期は、多くの買い手がM&Aに積極的になり、競争原理が働いて高く売れる可能性があります。
M&A市場が活況を呈しているかどうかも大きな要因です。自社の内部要因と外部環境の両方を考慮し、最も有利な条件を引き出せるタイミングを逃さないよう、M&Aの専門家などから常に最新の情報を収集することが求められます。

M&Aは企業に大きな成長機会をもたらしますが、そのプロセスには多くのリスクも潜んでいます。
契約内容の確認を怠ったり、情報管理が不十分だったりすると、予期せぬトラブルに発展し、M&Aが失敗に終わるだけでなく、事業そのものに深刻なダメージを与えかねません。ここでは、M&Aを円滑に進め、成功に導くために最低限知っておくべき4つの注意点を解説します。
・自社に不利な契約内容になっていないか確認する
・M&Aの交渉中は情報漏洩を徹底的に防ぐ
・従業員や取引先への説明は慎重に行う
・売却で得た利益には税金がかかることを理解しておく
M&Aの最終契約書には、表明保証、競業避止義務、賠償責任の上限など、専門的で複雑な条項が数多く含まれています。これらの内容を十分に理解せずに署名すると、売却後に想定外の責任を追及されたり、自身の行動が長期間にわたって制限されたりするリスクがあります。
特に、会社の状況について買い手に保証する「表明保証」の範囲や、違反があった場合の損害賠償条件は慎重に交渉する必要があります。
契約書の内容は、必ずM&Aに精通した弁護士に依頼して詳細にチェックしてもらい、自社にとって不当に不利な内容がないかを確認することが不可欠です。
M&Aを検討しているという情報が、正式発表前に従業員や取引先、競合他社などに漏れてしまうと、様々な混乱を引き起こす原因となります。従業員の間に動揺が広がり、モチベーションの低下や優秀な人材の流出につながる恐れがあります。また、取引先が不安を感じて取引を縮小したり、顧客が離れたりするリスクも考えられます。
こうした事態を防ぐため、交渉相手とは必ず秘密保持契約(NDA)を締結し、社内でもM&Aに関する情報は経営陣など必要最小限のメンバーに限定して共有するなど、徹底した情報管理が求められます。
M&Aの成立が確定した後、従業員や主要な取引先にその事実を伝えるタイミングと内容は極めて重要です。従業員に対しては、経営者から直接、M&Aの背景や目的、そして最も重要な今後の雇用条件や待遇について、誠実かつ具体的に説明し、不安を払拭する必要があります。
取引先に対しても、今後の取引関係が継続されることを明確に伝え、安心感を与えることが大切です。
このコミュニケーションを誤ると、組織の混乱や事業基盤の弱体化を招きかねないため、買い手企業とも十分に協議の上、慎重に進めるべきです。
株式譲渡によって会社を売却した場合、オーナー経営者は譲渡対価から株式の取得費やM&A仲介手数料などを差し引いた「譲渡所得」に対して、所得税・住民税などが課税されます。税率は合計で20.315%(2025年時点)ですが、譲渡益は高額になることが多いため、納税額も相応に大きくなります。
手元に残る現金を最大化するためには、税金の知識が不可欠です。
例えば、退職金として一部を受け取ることで税負担を軽減できる場合もあります。事前に税理士などの専門家に相談し、適切なタックスプランニングを行うことが重要です。

D2C業界におけるM&Aは、様々な目的で行われ、多くの成功事例を生み出しています。大手企業が新興ブランドの獲得で新たな顧客層を開拓したり、異業種企業がECのノウハウを取り込んだりと、買い手と売り手の組み合わせによって多様なシナジーが創出されています。
ここでは、実際のM&A事例を参考に、3つの成功事例を解説します。
■関連記事:【最新版】大企業・中小企業、業界別のM&A事例40選
https://www.willgate.co.jp/ma-column/case-study/2030/
資生堂がドランクエレファントを買収した事例は、大手消費財メーカーが特定のターゲット層に強い影響力を持つD2Cブランドを取り込む典型的なM&A成功例です。
・時期:2019年
・買収:資生堂
・売却:Drunk Elephant Holdings, LLC(アメリカ)
・買収額:約910億円
この買収により、資生堂はドランクエレファントが持つ独自のブランド世界観や顧客との直接的なコミュニケーション手法を維持しつつ、自社の開発力や生産能力、資金力を提供しました。これにより、ドランクエレファントは既存ファンを大切にしながら成長を加速し、資生堂はこれまでアプローチが難しかった顧客層の獲得に成功しました。
P&GがNative Cosを買収した事例は、大手企業によるD2Cブランド獲得の代表例です。
・時期:2017年
・買収:P&G
・売却:Native Cos(ナチュラルデオドラントブランド)
・買収額:約1億ドル
この買収は、大手消費財メーカーが特定の製品カテゴリにおいて新しい顧客層を獲得し、ポートフォリオを強化するための戦略的な動きでした。Native Cosの持つ独自のブランド力と顧客基盤に、P&Gの豊富なリソースを組み合わせることで、さらなる成長を追求しています。
ユニリーバによるDr. Squatchの買収は、大手消費財メーカーが成長著しい男性向けパーソナルケア市場への参入を強化する戦略的なM&Aです。
・時期:2025年
・買収:ユニリーバがDr. Squatchを買収
・買収額:公式発表では非公開。一部報道では約15億ドルと報じられています。
Dr. Squatchは、自然由来の成分にこだわったハンドメイドソープから事業をスタートし、現在ではデオドラントやヘアケア、コロンなど幅広い製品を展開する男性向けパーソナルケアブランドです。特にデジタルエンゲージメント戦略に強みを持ち、熱心な顧客層を築いてきた点がユニリーバにとって魅力的な要素となりました。ユニリーバはDr. Squatchのブランド力と顧客基盤を活かし、グローバル市場でのさらなる成長を目指しています。
米国小売り大手のウォルマートは、2017年にメンズウェアブランド「ボノボス」を約3億1,000万ドルで買収しましたが、2023年にWHPグローバルとエクスプレスへ約7,500万ドルで売却しました。
この事例のポイントは以下のとおりです。
・時期:2017年買収、2023年売却
・買収:ウォルマートがメンズウェアブランド「ボノボス」を買収
・売却:ウォルマートがWHPグローバルとエクスプレスに「ボノボス」を売却
・買収額:買収時約3億1,000万ドル、売却時約7,500万ドル
ボノボスはデジタルネイティブ世代向けのD2Cブランドとして成長を遂げたものの、ウォルマート傘下では販路が拡大した一方で売上が伸び悩んでいました。売却によってWHPはブランドを、エクスプレスは営業資産とボノボス事業に関連する負債を取得しています。
M&Aの相談から成立までの期間は、規模や複雑さにより異なりますが、一般的に半年から1年程度を要します。マッチングやデューデリジェンス、条件交渉に時間がかかりますが、準備が周到であれば3ヶ月程度で完了するケースもあります。
M&A仲介会社に支払う費用は、成功報酬制が一般的で、取引金額に応じた「レーマン方式」が広く用いられています。取引金額が大きくなるほど料率が低くなる仕組みです。相談料や着手金、中間金が必要な場合もあります。料金体系は会社ごとに異なるため、複数の会社を比較し、契約前にサービス内容と費用の総額を十分に確認することが大切です。
小規模なD2C事業でも売却は十分に可能です。
近年は、数千万円から数億円規模の事業を売買する「スモールM&A」の市場が活発化しており、取引事例も増えています。売上や利益の規模が小さくても、特定のニッチ市場で高いシェアを誇っていたり、熱心なファンを持つ独自のブランドを確立していたりするなど、何かしらの強みや独自性があれば、買い手にとって魅力的な買収対象となり得ます。自社の強みを客観的に分析し、適切にアピールすることが重要です。
赤字の事業でも、売却できる可能性は十分にあります。買い手は現在の損益状況だけでなく、将来性や自社とのシナジー効果を総合的に評価して買収を判断するためです。例えば、現在は広告宣伝費などの先行投資で赤字でも、顧客基盤が順調に拡大しており、将来的に黒字化する明確な見通しが立っている場合は高く評価されることがあります。
売却後も経営者が会社に残るかは、当事者間の合意によって決まります。M&A後の円滑な事業引継ぎのため、元の経営者が一定期間、役員や顧問として会社に残るよう買い手から要請されるケースが一般的です。
D2C市場が激化する現代において、M&Aは事業の成長と存続を確実にするための重要な手段です。売却側には創業者利益の獲得や後継者問題の解決、買収側には新規市場への迅速な参入やノウハウの獲得といった、双方にメリットがあります。
M&Aのプロセスは専門性が高く複雑なため、成功確率を高めるには、信頼できるM&A仲介会社などの専門家と連携し、計画的に準備を進めて自社の企業価値を最大化することが不可欠です。
D2C事業のM&Aをご検討の際は、ぜひウィルゲートにご相談ください。
ウィルゲートが目指すのは、売り手様、買い手様、双方に納得感のあるM&Aです。M&Aがお客様の目的やご希望に合致しない場合、無理にM&Aをすすめることは絶対にありません。
M&Aで思わぬ失敗をしないためにも、まずは一度、ウィルゲートM&Aにご相談いただければ幸いです。
M&Aが解決策として見込める場合、15,100社以上の経営者とのネットワークから、最適なマッチングを迅速にご提示させていただきます。
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