【2022年最新版】大企業・中小企業、業界別のM&A事例40選

【2022年最新版】大企業・中小企業、業界別のM&A事例40選

M&Aは、事業継承や事業規模拡大などさまざまな理由で、世界中で行われています。この記事では、日本・世界で起きているM&Aの事例を紹介していきます。成功事例・失敗事例の両方を確認し、自社のM&Aを成功に導きましょう。

M&A事例の最新動向

M&A事例の最新動向

M&A件数は2006年にピークを迎え、その後リーマンショックなどにより2011年まで減少傾向となりました。近年では、ベンチャー企業を対象としたM&Aや、日本の経営者の高齢化や少子化による後継者問題を解決するため事業継承のM&Aが増加しています。

M&Aが活発に行われている業界は、ヘルスケアや電気通信分野などで、海外の企業とM&Aを行い、事業規模拡大をしている企業もあります。M&Aの最新動向を確認しましょう。

M&Aの成約件数推移

レコフデータは、1985年以降の日本企業が絡むM&Aの件数を公開しています。レコフデータによると、M&A件数は2006年に2,725件でピークを迎えますが、2011年まで減少が続きます。2012年より上昇傾向になり、2019年4,088件を突破して、過去最高を記録します。

2020年は、コロナ渦の影響で減少はしましたが、それでも3,730件の過去3番目に多い数値です。

参考:レコフデータ グラフで見るM&A動向

M&Aが急増している背景

近年は、ベンチャー企業を対象としたM&Aが増加傾向にあります。2019年には、日本企業が関わったM&Aのうち、ベンチャー企業を対象としたものは1,375件あり、全体の3割を占めました。2021年はM&Aの件数が過去最多のペースで進みました。

これは、コロナ渦の影響で、企業が資金調達や新たな市場への参入など、事業の変化を求められM&Aする企業が増えたからです。さらに、2021年以降は政府主導の成長戦略や事業政策も重なり、M&Aの市場はより活性化傾向にあります。

M&Aが目立った業界

日本では、ヘルスケアと電気通信分野にM&Aが集中しています。特に、製薬関連のM&Aが活発で、近年の大型M&Aでは、2019年にアステラス製薬が米バイオ企業のオーデンス・セラピューティクスを3,200億円で買収しています。

ほかにも、富士フイルムホールディングス・旭化成・大日本住友製薬の3社が、欧米の企業に対し大型買収を実施しました。ヘルスケア・電気通信分野以外では、ハイテクやエネルギー分野・電力分野や不動産分野のM&Aが多く行われています。

目立ったM&A目的

最近のM&Aを行う背景として、後継者を獲得する目的でのM&Aが目立っています。現代の日本では、企業の経営者は60代や70代の方が多く、深刻な後継者問題に直面しており、事業継承のM&Aは2020年は過去最多の616件で、事業継承問題を解決する手段として、M&Aの重要性が高まっています。また、現代では事業拡大を目的として海外の企業とM&Aを行う企業も増えています。

2021年に行われた有名M&A事例7選

2021年に行われた有名M&A事例7選

2021年は、前年から続く新型コロナウイルス感染拡大が収まらない年となり、多くの企業が影響を受けました。その中で、2021年のM&Aは過去最多のペースで進捗しました。コロナ渦においては、経営の合理化や資金調達が求められ、M&Aを行い事業変化を図る企業が増加しました。

2021年は、事業継承や業務拡大を目的にM&Aを行う会社が増加しました。どの業界も競争が激しく、自社だけでは乗り越えられない課題も、M&Aを行うことで他社の強みを活かし、競争を生き抜ける場合があります。2021年に行われたM&Aの有名事例を確認しましょう。

1.GMOインターネットによるOMAKASEの買収

2021年6月に、GMOインターネットがOMAKASEをインターネットインフラ事業の拡大を目的に買収し、子会社化しました。このM&Aでは、同年に施行された新しいスキームの「株式交付」が行われました。株式交付は株式交換と方法は同じですが、完全子会社化しない買収でも対価として株式を用いられるようになりました。

本件のM&Aにより、両社の強みを活かしたシナジー効果による業務拡大が期待されています。

譲渡企業の概要

OMAKASEは資本金500万円の東京の会社で、「つくり手が、もっともっと料理に没頭できるように」をミッションに掲げています。OMAKASEは、人気飲食店やレストランに特化した飲食店予約管理サービスを提供しています。

店舗側とユーザーをつなぐ予約管理サービスにより、予約管理のみでなくユーザー管理やユーザーリマインド、キャンセルなどの店舗側の負担が軽減されています。

譲受企業の概要

GMOインターネットは、資本金50億円、2020年12月期で連結売上高2,105億円の会社です。1995年にインターネット事業を創業し、「スピリットベンチャー宣言」という理念のもと、社会果たす役割やミッションを掲げ事業をしています。提供するサービスは自社開発・自社提供です。

インターネットインフラやインターネット広告、インターネット金融、暗号資産、オンラインゲームやモバイルゲームなどのゲーム事業など幅広く事業を展開しています。

M&Aの目的・背景

このM&Aの目的は、インターネットインフラ事業の拡大です。譲渡企業のOMAKASEが提供しているサービスは、人気飲食店に特化した事業に強みがあり、予約が難しい人気飲食店とユーザーを結びつけるサービスを提供しています。

譲受企業のGMOインターネットは、このOMAKASEの強み評価しており、自社が行っている事業と合わせてシナジー効果を生みだし、業務拡大できると判断しM&Aに踏み切りました。

M&Aの手法・成約内容

GMOとOMAKASEによるM&Aは、2021年に施行された「改正会社法」により定められた新しいスキームの「株式交付」により成立しました。OMAKASEの株式61.5%を、GMOインターネットが取得しました。

株式交付とは、株式交換と同じ方法を使い、売却側株主への対価として売却企業の新株予約券や株式を交付します。株式交換では、売却企業側を完全子会社化するときに限定して使われてきました。株式交付では、この制約が取り除かれ、GMOがOMAKASEを完全子会社化せずに買収し、対価として株式も得られるようになりました。

参考
https://masouken.com/news_releases/262

2.凸版印刷によるアイオイ・システムの買収

2021年5月、凸版印刷がM&Aによりアイオイ・システムを子会社化することが発表されました。苦境を強いられている出版業界の国内大手企業が、「脱印刷」の一環として物流のDX市場に参入するためのM&Aで、大きな注目を集めました。

譲渡企業の概要

アイオイ・システムは、物流や製造関連支援システム、機器の開発や製造・販売などを手掛けている会社です。アイオイ・システムが提供するデジタルピッキングシステムは、同業界で国内最大手のシェアを誇り、海外市場でもトップクラスのシェアを持ちます。

同様にプロジェクトピッキングシステムの分野でも優れたシステムでシェアを伸ばし、海外企業にも採用されています。

譲受企業の概要

凸版印刷会社は東京にある大手印刷会社で、情報コミュニケーション事業や生活・産業事業、エレクトロ二クス事業など幅広く事業展開しています。サプライチェーンのデジタル化を推進していて、2万社を超える企業と取引実績を持ちます。

DXソリューションを開発・運用するビジネスを行っています。2005年より凸版印刷は積極的にM&Aを実施していて、常に市場拡大や事業展開を図っています。資本金は1,049億円、2021年3月期の連結売上高は1兆4,699億円です。

M&Aの目的・背景

本件のM&Aの目的は、凸版印刷の物流業界におけるDX事業へ本格参入することです。現在、物流市場はコロナ渦や社会のデジタル変革の影響により順調に拡大していますが、人手不足・サービス競争激化の問題も抱えています。これらの問題を解決するために、デジタル技術を活かした取り組みが推進されています。

物流業界全体で、企業買収や事業譲渡のM&Aは増加傾向にあります。凸版印刷は、サプライチェーンのデジタル化を進めたいという目的で、海外と72カ国と取引実績があるアイオイ・システムとM&Aを行いました。両社は物流市場の新たなビジネスチャンスと捉え、両社の技術やノウハウを組み合わせて物流効率化を図り、業界全体の発展と社会的コスト低減を目指しています。

M&Aの手法・成約内容

凸版印刷とアイオイ・システムのM&Aでは、株式譲渡のスキームを用い、アイオイ・システムの株式を75.8%取得しています。取得価格は公表されていません。

参考
https://www.toppan.co.jp/news/2021/05/nwsrelease210528_2.html

3.ベネッセ・ホールディングスによるプロトメディカルケアの買収

2021年に、教育事業や介護事業を幅広く展開しているベネッセ・ホールディングスが、介護事業の拡大を目的にプロトメディカルケアをM&Aしました。このM&Aは、ベネッセ・ホールディングスが、人材サービスが業務拡大に重要と考え、プロトメディカルケアの人材サービス事業に注目し行われました。

譲渡企業の概要

東京のプロトメディカルケアは、介護や福祉、医療に関する各種メディアの運営、人材派遣や人材紹介、情報誌の出版事業など幅広く事業を展開しています。資本金は4億9,800万円、売上高は2020年3月期は38億4,600万円です。

譲受企業の概要

ベネッセ・ホールディングスは、教育事業と介護事業などをしている会社です。教育事業では、郊外学習で通信教育や学習塾、予備校の運営や学習進路教材などを手掛けています。介護事業では、入居や在宅・通所介護サービス、看護師や介護職の人材派遣、介護相談や高齢者向け配食サービスなどを手掛けています。

ベネッセ・ホールディングスは、事業拡大のために積極的にM&Aを以前にもしていて、2014年にも子供向け英会話教室を首都圏や関西圏で展開していたミネルヴァインテリジェンスをM&Aしています。資本金は137億円、2021年の連結売上高は4,275億3,100万円です。

M&Aの目的・背景

ベネッセ・ホールディングスは、介護事業の領域を拡大させ業績向上をするため、プロトメディカルケアとM&Aをしました。ベネッセ・ホールディングスは、介護事業で利用者の視点に立ちサービスの運営の追求をしていて、新規の介護施設やサービスエリア展開の拡大を図っています。

東京で介護業界にシェアを持つプロトメディカルケアを子会社化し、介護事業の拡大スピードを高められると判断し、株式の取得に至りました。

M&Aの手法・成約内容

ベネッセ・ホールディングスは、株式譲渡によりプロトメディカルケアの全株式を取得しました。このM&Aにより、プロトメディカルケアはベネッセ・ホールディングスの完全子会社となりました。譲渡価格は公表されていません。

参考
https://masouken.com/news_releases/249

4.ヒト・コミュニケーションズ・ホールディングスによるUsideUの買収

2021年6月30日に、ヒト・コミュニケーションズによるUsideUの買収が行われました。本件のM&Aにより、ヒト・コミュニケーションズはオンライン接客分野へのサービスを提供できるようになりました。

譲渡企業の概要

ヒト・コミュニケーションズは、ヒト・コミュニケーションズ・ホールディングスの子会社で、一般労働者派遣事業や有料職業紹介業、アウトソージング事業などを行っています。

譲受企業の概要

UsideUは、オンライン接客事業を展開しています。「タイムレップ」とよばれる法人向け遠隔接客販売ツールの開発や販売を行っています。

M&Aの目的・背景

本件のM&Aは、ヒト・コミュニケーション・ホールディングスのオンライン接客分野へのソリューション提供開始です。オンライン接客事業を強みとするUsideUを買収することで、進歩が著しい非対面・非接触の営業を強化し、省力・省人化による生産性向上を図っています。

M&Aの手法・成約内容

本件M&Aでは、UsideUの発行済株式を、ヒト・コミュニケーションズが50.01%取得し、子会社化しました。取得価格は非公表です。

参考
https://www.nihon-ma.co.jp/news/20210629_4433-3/

5.日本商業開発によるツノダの買収

不動産業界に属している会社同士のM&Aが行われました。譲渡企業は愛知県にあるツノダ、譲受会社は日本商業開発で、両社は、不動産の事業拡大と拡張を目的にM&Aを行いました。現代の不動産業界は、規模縮小と競争激化の流れにあり、業務効率化を求められています。

このM&Aでは、日本商業開発が、ツノダを買収することにより、愛知県や岐阜県などの東海地方のツノダが所有する物件の獲得に至りました。

譲渡企業の概要

ツノダは愛知県にある会社で、不動産の賃貸管理事業を行っています。不動産の賃貸管理事業の他、自動車の企画や開発、販売などの事業も展開しています。

譲受企業の概要

日本商業開発は大阪府にある会社で、不動産投資事業やサブリーズ・ファンドフィー事業、企画や仲介事業を展開しています。独自の事業として、「JINUSHIビジネス」という土地のみを対象とする不動産投資商品の開発・販売をしています。資本金は30億円、2020年12月期の連結売上高は298億円となっています。

M&Aの目的・背景

このM&Aの目的は、不動産事業の拡大と拡張です。不動産業界は、規模縮小と競争劇化が激しい業界です。業務効率化が図れない会社は、競合他社に負けてしまうケースが増加し、ユーザーに対し幅広いサポートをしている大手企業の力が強くなっています。

譲渡企業のツノダは、愛知県をはじめ東海エリアの物件を多数所有していました。ツノダは、旧工場用地日などの優良物件を活用し、不動産賃貸事業も展開しています。日本商業開発は、ツノダを子会社することでグループとして所有する不動産の数を増やし、営業エリアを広げました。

M&Aの手法・成約内容

このM&Aでは株式譲渡のスキームが選択され、日本商業会社がツノダの全株式を取得しました。譲渡価格は公表されていません。

参考
https://masouken.com/news_releases/237

6.トゥルースによるビーイングの買収

2021年に、トゥルースによるビーイングの買収が行われました。本件M&Aは、譲渡企業の会長が譲受企業の代表を務める会社で、マネジメント・バイアウトによる非公開化を目的に行われました。

譲渡企業の概要

ビーイングは、建設業を対象として、土木生産ソフトの販売を行っています。1984年にコンピューター関連の販売会社としてスタートし、2004年にはジャズタック上場を果たしています。

譲受企業の概要

トゥルースは、ビーイングの会長が代表を務める会社で、ビーイングの株式取得・保有を事業内容にしています。

M&Aの目的・背景

本件のM&Aの目的は、マネジメント・バイアウトによる非公開化です。ビーイングは、土木積算分野で安定した経営を続けていましたが、建設業の情報通信技術化の流れの中で、土木積算分野に依存した事業構造に不安を抱えていました。事業構造の変革を行うには、施策への投資が必要で、株価の下落などの悪影響が懸念されます。

そこで、中長期的な利益につながるように、M&Aが行われました。非公開化により機動的な意思決定が行えると考えられています。

M&Aの手法・成約内容

本件M&Aの手法・成約内容は、公開買い付けです。買付価格は1株あたり900円で、買付株式数は4,064,911株です。

参考
https://maonline.jp/news/20210208d

7.ビジネス・ブレークスルーによるブレンディングジャパンの買収

需要が拡大する子供向け英会話オンライン市場への参入を目的とするM&Aが2021年に行われました、譲渡企業はブレンディングジャパン、譲受会社はビジネス・ブレークスルーです。

両社のM&Aにより、ビジネス・ブレークスルーの新規事業参入が可能となりました。また、このM&Aでは、効率性向上やコスト削減も期待されています。

譲渡企業の概要

ブレンディングジャパンは福岡で子供専用オンライン英会話スクールを運営している会社です。海外に拠点を持つフィリピン講師により、英会話スクールを運営しています。

インターネット調査による、価格満足度やレッスン満足度、ママさんがおすすめする英会話スクール第1位を獲得するなど、人気がある英会話スクールを展開しています。

譲受企業の概要

ビジネス・ブレークスルーは、社会人対象の人材育成教育事業や、幼児から高校生までのインターナショナルスクールなどの学校運営をしている会社です。人材育成教育事業では、社会人を対象にビジネス基礎から専門分野まで10,000時間以上のコンテンツを有し、多彩な配信メディアを通しサービスを提供しています。

ビジネス・ブレークスルーは、2019年にもICT領域の教育や研修プログラム展開を目的としてM&Aを行いました。資本金は18億円、2021年雄連結売上高は58億8,800万円です。

M&Aの目的・背景

本件のM&Aの目的は、ビジネス・ブレークスルーの子供向けオンライン英会話市場への参入です。ブレンディングジャパンとビジネス・ブレークスルーは、フィリピン在住の英会話講師を採用して運営している共通点があります。

ブレンディングジャパンを子会社化して、需要が増加する子供向けの英会話オンライン市場への参入が可能になりました。また、両社が一体化することで効率性を上げて、コストを下げることも目的にしています。

M&Aの手法・成約内容

今回のM&Aでは、株式譲渡のスキームが選択され、ビジネス・ブレークスルーはブレンディングジャパンの全株式を取得しました。譲渡価格は公表されていません。

参考
https://masouken.com/news_releases/254

日本国内の大型M&A事例9選

日本国内の大型M&A事例9選

日本の大企業が行ったM&Aを紹介していきます。大企業によるM&Aでは、大量生産によるコストダウンや販売ノウハウ・販売網、設備、従業員などが共有され、双方の企業に利益がもたらされるケースが多く見られます。

1.大正製薬によるドクタープログラムの買収

2016年に、大正製薬がドクタープログラムを買収しました。大正製薬は日本を代表する大手製薬会社ですが、さらなる事業拡大のため、スキンケア事業でシェアを得ているドクタープログラムを買収しました。本件M&Aでは、大正製薬がドクタープログラムの株式をすべて取得しました。

譲渡企業の概要

譲渡企業は、美肌を作る化粧品の開発と販売を手掛けるドクタープログラムです。「安全を重視し、効果を追求し続けた化粧品の提供」を理念に、美と健康を提供し続け、多くの方に愛されている化粧品会社です。製薬発想から生まれた高い技術力が特徴です。

買収前の2016年3月の売上高は12億8,500万円で、従業員は38名の中小企業です。

譲受企業の概要

譲受企業は、消費者の健康維持を目的とするセルフメディケーション事業や医薬品の販売、新薬の開発事業などを手掛ける大正製薬です。大正製薬は、日本を代表する大企業で、2021年3月期の売上高は1,901億5,600万円、従業員は2,885人を超えています。

M&Aの目的・背景

大正製薬がM&Aに至った経緯は、通信販売とスキンケア事業の拡大です。大正製薬はセルフメディケーション事業の成長のため、通信販売の拡大を図っていました。大正製薬のセルフメディケーション事業で得たノウハウと、買収企業のドクタープログラムのスキンケア技術を組み合わせることで、短期間での成長が見込めると考えていました。

これらの理由から、ドクタープログラムの買収に至りました。

M&Aの手法・成約内容

本件M&Aでは、ドクタープログラムの全株式を大正製薬が取得し、完全子会社化しました。

参考
https://maonline.jp/news/20161226b

2.ヤフーによるZOZOの買収

2019年9月に、ZOZOTOWNとZホールディングスの間でM&Aが行われました。両社のM&Aでは、ネット通販事業を手掛けるライバル同士のM&Aで、注目を集めました。

譲渡企業の概要

ZOZOはファッションサイト「ZOZOTOWN」を運営する会社です。ZOZOTOWNは、国内のファッションサイトで圧倒的なシェアを誇っています。出店者に対して、商品の保管や注文処理、梱包や配送、返品などに対応するカスタマーサービスを提供しています。

譲受企業の概要

譲受企業のZホールディングスは、ヤフーを傘下に持つ持株会社で、2019年に称号を「ヤフー株式会社」から「Zホールディングス株式会社」に移行しました。

ヤフー株式会社は、1996年に検索サイト運営から始まり、日本最大級のインターネットサービス企業へ成長した会社です。

M&Aの目的・背景

Zホールディングス傘下のヤフーは、ネット上の電子ショッピングモールの「PayPayモール」を運営しています。ZOZOTOWNを買収し、PayPayモールに出店させ、集客力向上を図りM&Aに至りました。また、Zホールディングスのモバイル決済「PayPay」を、ZOZOTOWNに導入することも目的です。

M&Aの手法・成約内容

Zホールディングスが、約4,007億円で株式公開買付けによりZOZOTOWNの発行済み株式を取得しました。このM&Aにより、ZホールディングスのZOZOTOWNの株式保有比率は、50.1%となりました。

参考
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50021500Q9A920C1I00000/

3.日本電産によるエマソン・エレクトリックの買収

2016年に、日本屈指の大企業の日本電産がアメリカンのエマソン・エレクトリックの事業を買収しています。産業・商業用事業の成長力向上を目的にM&Aが行われ、日本電産がヨーロッパや北米の市場獲得をしました。日本電産は以前にもM&Aを積極的に行っていて、他社の強みを取り入れ事業拡大をしています。

譲渡企業の概要

譲渡企業は、アメリカのエマソン・エレクトリックです。エマソン・エレクトリックは、電子部品の開発や製造・販売などを手掛けている会社で、産業向け以外にも一般向けのサービスも提供しています。売上高は2015年9月時点で223億400万ドルでした。

譲受企業の概要

譲受企業の日本電産は、小型・大型モーターや精密機械、電子部品などの製造や販売を行う日本屈指の大企業です。2020年3月末で従業員は117,206名在籍しています。1980年代よりM&Aを続けていて、自社の技術向上とM&Aにより業績を伸ばしています。2021年3月期の連結売上高は1兆6,180億6,400万円です。

M&Aの目的・背景

このM&Aの目的は、産業・商業用事業の成長力向上です。日本電産は、このM&Aの前にも2社の企業を買収していて、世界市場で基盤を固めています。

本件のM&Aも、エマソン・エレクトリックが持つヨーロッパや北米の市場の獲得が狙いです。M&Aにより、該当エリアの販売事業を獲得し、自社製品と絡めて製品の提供体制を整えました。

M&Aの手法・成約内容

このM&Aでは、日本電産がエマソン・エレクトリックの持つモータ・ドライブ事業と発電機事業を買収しています。買収金額は12億米ドル(約1,200億円)で、2016年に合意契約と資産株式売買契約が結ばれました。

参考
https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/1608/05/news127.html

4.楽天によるFablicの買収

2016年、楽天はフリマアプリサービスを展開するFablicを買収しました。両社のM&Aにより、ユーザーにとって利便性が高いサービスを作り出しました。

譲渡企業の概要

譲渡企業のFablicは、個人間の売買をサポートするフリマ型の事業を展開する日本の会社です。2017年に日本初のフリマアプリ「フリル」を提供開始して、女性に人気のある商品を取り扱い、若年層から支持が高い企業です。

譲受企業の概要

譲受企業の楽天は、楽天市場などのインターネットサービスや金融サービス、スポーツ事業などを展開する大企業です。2000年に店頭上場を果たし、30以上の国と地域にサービスを提供していて、社内の公用語は英語とするなどグローバルな企業です。2020年の従業員は連結で23,841名です。

M&Aの目的・背景

楽天とFablicのM&Aの目的は、個人取引の事業強化です。両社は、EコマースにおけるC2C事業の獲得を狙い、楽天が持つマーケティング能力とFablicが持つフリマ市場における高い企画力の融合を図りました。

楽天が持つ「ラクマ」とFablicの「フリル」を融合し、相互利用でシナジー効果を得られ、2017年には流通総額が1,400億円を超えるなど、大成功のM&Aとなりました。

M&Aの手法・成約内容

楽天を存続会社とする吸収合併が2018年7月にFablicとの間で行われました。本件のM&Aでは、株式譲渡のスキームが選択され、株式の取得価格は非公表です。

参考
https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2016/0905_01.html

5.ソフトバンクによるスプリント・ネクステル・コーポレーションの買収

M&Aは成長戦略として多くの大企業が活用しています。その中で、ソフトバンクは特に積極的に大型M&Aを繰り返しています。2019年に日本企業が関わったM&Aで、ソフトバンクグループはM&A取引金額上2位と3位にランクインしています。

ソフトバンクは2013年に、アメリカで携帯電話や長距離通信事業を手掛けているスプリント・ネクステル・コーポレーションを買収しました。このM&Aにより、前年比に比べ売上が大幅に増加しました。

譲渡企業の概要

スプリント・ネクステル・コーポレーションはアメリカの企業で、携帯電話や長距離通信事業などを展開しています。買収前の資本金は、2021年12月31日時点で60億1,900万ドルです。

譲受企業の概要

譲受企業のソフトバンクグループは、自社では事業を行わない特殊持株会社で、子会社が事業をしています。子会社の事業では、日本やアメリカの通信事業やインターネット事業、Eコマースなどを展開しています。連結の従業員数は、2021年3月時点で58,763名です。

M&Aの目的・背景

ソフトバンクグループとスプリント・ネクステル・コーポレーションのM&Aは、ソフトバンクの世界における事業基盤の確保と事業の強化を目的に行われました。ソフトバンクグループは、固定通信から移動通信へ移り変わると予測し、2004年に日本テレコム、2006年にボーダフォン日本法人を買収しています。

ソフトバンクグループは、日本で培った経験を海外事業に活かすため、アメリカへの参入を図りました。このM&Aにより、ソフトバンクグループは日本とアメリカで日米合算数で顧客数トップになりました。2014年の3月期決算も、前年比に比べ売り上げが3兆4,641億1,500万円となり売上が増加しました。このうち、本件M&Aによる効果は2兆6,010億3,100万円です。

M&Aの手法・成約内容

ソフトバンクグループは、2013年にスプリント・ネクステル・コーポレーションの70%の株式を買収しました。買収額は約201億ドル(1兆5709億円)です。

参考
https://group.softbank/news/press/20121015

6.日本たばこ産業による海外たばこ事業の買収

日本の大企業のM&Aの実例として、日本たばこ産業(JT)による買収があげられます。大企業のJTは、1999年にアメリカRJRナビスコの米国外たばこ事業、2007年にはイギリスのギャラハーを買収しました。このM&Aにより、日本たばこ産業は世界の広範囲に市場を広げ、海外のたばこ販売数を増加させています。

日本たばこ産業はほかにも数々のM&Aをしていて、世界1位のフィリップモリスや2位のブリティッシュ・アメリカン・タバコと互角に渡り合える地位を確立しています。

譲渡企業の概要

譲渡企業の1社目のアメリカRJRナビスコホールディングスは、たばこ以外にもスナック、ビスケットなどの食料品の製造や販売を手掛けている会社です。2社目のギャラハーは、ヨーロッパやアフリカ・中央アジアなどでたばこの製造や販売事業を展開しています。買収時は、紙たばこの販売数世界第5位でした。

譲受企業の概要

日本たばこ産業は、たばこ事業を中心に海外に数多くの子会社を持つ日本の大企業です。従業員は2020年12月31日時点では58,300名を抱えていて、紙たばこの世界シェア第4位で、日本では第1位です。2020年の12月期の連結売上高は2兆925億6,100万円です。

M&Aの目的・背景

このM&Aの目的は、日本たばこ産業の市場シェアの拡大です。海外に市場シェアを持つアメリカRJRナビスコホールディングスやギャラハーを買収し、ブランド力や販売網・ノウハウなどを共有しました。これにより、コスト削減や双方のブランド力や技術力の融合を図り、シナジー効果獲得を図りました。

日本たばこ産業は、近年は電子タバコへの進出が遅れ、株価の低迷を受けて、海外市場のブランド強化や新興市場のシェア獲得に狙いを定めた経営をしています。ほかにも、2016年~2017年にアメリカやロシアの企業を買収していて、高価格帯や低価格帯の市場を強化しています。

M&Aの手法・成約内容

日本たばこ産業のM&Aでは、高額な取引が行われています。アメリカRJRナビスコホールディングスは、日本企業当時の史上最高額の78億ドル(9,400億円)で買収をしました。ギャラハーは、約1兆7,800億円で買収しています。

参考
https://www.jti.co.jp/corporate/outline/history/index.html

7.KDDIによるソラコムの買収

通信事業大手のKDDIによるIT企業のソラコムの買収が2017年に行われました。KDDIが次世代のネットワークを作るため、ソラコムが誇る技術力に着眼し、M&Aを行いました。

譲渡企業の概要

譲渡企業は、通信プラットフォーム「SORACOM」を手掛けるIT企業のソラコムです。ソラコムは携帯電話のコアネットワークをクラウド上に作成しています。SORACOMのWebコンソールやAPIを活用すると回線やデバイスを一括管理・操作可能です。

通常、コアネットワークはハードウェアとし提供されていますが、ソラコムはそれをソフトウェア化させ、クラウド上に展開させることに成功しています。

譲受企業の概要

譲受企業は、携帯電話事業を主力とする通信事業大手のKDDIです。競争が激しい携帯電話業界の中で、長年日本のトップを走り続ける大企業です。

M&Aの目的・背景

本件のM&Aは、KDDIが通信プラットフォームの構築の推進を目的として行われました。KDDIが、ソラコムの技術力に注目し、強力な次世代ネットワークを作ることを目標にしています。

KDDIが誇るビジネス基盤と、ソラコムが保有する通信プラットフォームを連携させ、さらなる事業拡大を図っています。

M&Aの手法・成約内容

本件のM&Aでは、株式譲渡の手法を用いてKDDIがソラコムを連結子会社化し、買収額は公表されていませんが約200億円ほどであったと推測されています。

参考
https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2017/08/02/2607.html

8.住友重機機械工業によるイタリアの機械メーカーの買収

2018年6月に、住友重機機械工業はイタリア企業のLafert S.p.Aを株式取得し子会社化しました。このM&Aの目的は、顧客満足度や技術力向上です。

譲渡企業の概要

譲渡企業は、イタリアで産業用のモータ・モーションコントロールの製造や販売を手掛けるLafert S.p.Aです。顧客の要望に応える製品を提供していて、機械の自動化や省エネルギー化を進めています。

買収前の2017年の売上高は約200億円で、従業員は796人でした。イタリア以外でも、スロベニアや中国に製造拠点を置く会社です。

譲受企業の概要

譲受企業は、日本の総合機械メーカーの住友重機械工業で、精密機械や産業機械、建設機械の製造、船舶の建造や販売などの事業展開をしています。2021年3月の連結売上高は8,490億6,500万円で、従業員は24,050名が在籍する大企業です。

M&Aの目的・背景

このM&Aにの目的は、顧客満足度向上とヨーロッパ市場の強化や技術の向上です。Lafert S.p.Aはヨーロッパで顧客の獲得に力を入れていて、顧客の求めたカスタム品の提供も行える高い技術力もあります。

住友重機機械工業はLafert S.p.AとM&Aすることにより、ヨーロッパにおける生産拠点の確立と技術力向上、事業領域の拡大などを図りました。

M&Aの手法・成約内容

本件のM&Aでは、株式譲渡のスキームが選択され、住友重機機械工業はLafert S.p.Aを子会社化しました。取得額は213億5,600万円で、株式取得時には追加の支払いが盛り込まれました。追加支払額の限度額は7億6,900万円です。

参考
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/01375/

9.野村不動産ホールディングスによる隆文堂の買収

国内屈指の大企業である野村不動産ホールディングスにより、ホテル事業を手掛け国内外から高評価を得ている隆文堂が買収されました。

本件M&Aでは、ホテル事業の拡大を図る野村不動産が、ホテル事業のノウハウが充実している隆文堂を買収し、さらなるホテル事業の加速を目的としています。

譲渡企業の概要

譲渡企業の隆文堂は、「庭のホテル東京」や「東京グリーンホテル後楽園」などを保有している会社です。

譲受企業の概要

譲受企業の野村不動産は、野村證券の総合不動産会社で、「PROUDシリーズ」で知られる分譲マンションを手掛けています。

M&Aの目的・背景

本件M&Aの目的は、野村不動産のホテル事業の拡大と成長加速です。野村不動産は、中長期経営計画の中で、新たな事業領域でホテル事業に進出しています。譲渡企業の隆文堂は、ミシュランガイド東京2010より10年続けて快適なホテルとして高評価を得ていて人気があります。

野村不動産は、本件M&Aにより隆文堂の持つホテル事業のノウハウを獲得し、ホテル事業の基盤拡充を図っています。

M&Aの手法・成約内容

本件M&Aでは、野村不動産ホールディングスが傘下の野村不動産を介して隆文堂の株式をすべて取得しました。これにより、隆文堂は野村不動産の完全子会社となりました。本件M&Aの取引額は非公開です。

参考
https://www.nihon-ma.co.jp/news/20190110_3231-2/

中小企業のM&A成功事例7選

中小企業のM&A成功事例7選

中小企業のM&Aが年々増加していて、M&Aの重要性が高まっています。M&Aが中小企業で増加する理由の1つに、経営者の高齢化があります。経営者の高齢化により、事業継承に頭を抱えている経営者が多くいるのです。M&Aは、中小企業の事業継承の悩みを解決するための手段として選択されています。

それに加え、近年では市場拡大などの経営戦略の一環としてもM&Aが行われています。近年行われた中小企業のM&Aを確認していきましょう。

1.テクノモバイルによるCOMBOの買収

COMBOとテクノモバイルが2020年にM&Aをしました。このM&Aでは、買い手の事業拡大や技術者獲得の目的と、売り手の経営に対する不安解消を目的とし、取引が成立しました。

譲渡企業の概要

譲渡企業のCOMBOは、VRおよびARの開発を手掛けている会社です。本社所在地は宮城県で、札幌と仙台に拠点を持っています。さまざまな業界に広くネットワークを持ち、オリジナルシステムの受託開発やシステム・モバイルアプリ開発などの事業実績が豊富です。

譲受企業の概要

譲受企業のテクノモバイルは、Webシステムやモバイルアプリの開発などを行っている会社です。人々に「便利」と「感動」を与えることを指名とし、積極的に新しい技術を作り出し続けています。本書所在地は東京都です。

M&Aの目的・背景

COMBOは、新型コロナウイルスの影響による経営の先行き不安を解消するため、会社売却を望んでいました。買い手のテクノモバイルは、地方への事業拡大とエンジニア獲得のため、M&Aを検討していました。

両社の経営者同士の初回の面談で思惑が一致し、2020年にM&Aが成立しました。会社売却後、両社の強みを活かし、システム開発の業務における連携体制が確立されました。

M&Aの手法・成約内容

本件のM&Aでは、株式譲渡のスキームが選択されました。COMBOは、テクノモバイルに90%の株式を譲渡しました。

参考
https://br-succeed.jp/content/agreement/post-3127

2.スキットによるアヤトの買収

富山県で地元広報誌の制作などを手掛けるアヤトが、福岡県で一般商業印刷業を手掛けるスキットに買収されました。本件のM&Aでは、M&A以降もそれぞれの経営者が積極的に行動をしたことで、スムーズに経営統合された成功事例です。

譲渡企業の概要

売り手企業は、書籍や販促物の企画や印刷サービスの提供を富山県で展開しているアヤトです。親子3代で経営を続けていて、富山県で愛され続けている老舗企業です。企業や公的機関向けの定期刊行物や伝票などの印刷事業をしています。

譲受企業の概要

買い手企業は、福岡県を中心に東京や大阪・福井で一般商業印刷業を運営するスキットです。同業や関連業種から委託される印刷に加え、ポケットフォルダーや選挙ポスター、ノベルティーなどのオリジナル印刷商品開発や販売事業を展開しています。

M&Aの目的・背景

売り手のアヤトの経営者は、自身の高齢化により後継者問題に悩んでいて、事業継承を検討していました。しかし、社内の人材や子供に打診しても、良い返事を得られていませんでした。一方、買い手のスキットは、売上拡大を図り、M&Aを検討していました。

両社の顧客層は違っていて、両社がM&Aをすることでシナジー効果を生み出し、売上向上が期待できると判断し、M&Aが行われました。

M&Aの手法・成約内容

本件のM&Aは、株式譲渡のスキームが選択されました。売り手のアヤトの経営者は、あらかじめ社員に対しM&Aを行うことを公表し、社員肩の理解をスムーズに得ていました。買い手のスキットの経営者は、M&A以降、週の半分をアヤトで過ごして、社内組織図の明確化やルールの明文化を図り、経営の統合に力を入れました。

両社の経営者が積極的に行動したことで、M&A後の経営統合もスムーズに進んだ事例です。

参考
https://br-succeed.jp/content/agreement/post-2276

3.日輪によるライフ・コーポレーションの買収

2019年にライフ・コーポレーションと日輪がM&Aしました。ライフ・コーポレーションは事業継承を目的に、日輪は高齢者の働き先確保を目的に、株式譲渡のスキームが選択されM&Aが成立しました。

譲渡企業の概要

譲渡企業は、愛知県で常駐警備事業を展開するライフ・コーポレーションです。多くの取引実績と経験から得たノウハウで、どのような警備にも対応している会社です。

譲受企業の概要

譲受企業は、人材派遣や紹介予定派遣などの人材サービスを展開している日輪です。「必要な時、必要な人と物を。そして安全を」を理念に、付加価値の高いサービスを提供しています。人材サービス事業以外でも、製造工程請負やシステムソリューション、焼き芋製造や販売など、幅広く事業展開しています。

M&Aの目的・背景

売り手企業のライフ・コーポレーションは、経営者の高齢化に伴い、事業継承の目的で会社売却を検討していました。一方、買い手企業の日輪は、自社の求人サイトに登録している高齢者の方の働き先を確保するためM&Aを検討していました。両社の思惑が一致し、M&Aに至りました。

M&Aの手法・成約内容

本件のM&Aでは、株式譲渡のスキームが選択されました。売り手企業のライフ・コーポレーションの経営者は、M&Aが完了したら引退する予定でしたが、買い手企業の日輪の経営者から要望を受けて、現在も社長業を続けています。

参考
https://br-succeed.jp/content/agreement/post-792

4.コウイクスによるSDアドバイザーズの買収

IT企業のコウイクスがSDアドバイザーズに2020年に買収されました。本件のM&Aの目的は、コウイクスは社外への事業継承、SDアドバイザーズは、非金融システムへの参入です。

譲渡企業の概要

譲渡企業は、システム開発やインフラ構築のサービスを提供するIT企業のコウイクスです。1984年に創業され、東京を中心にコンピューターや周辺機器のハードウェア診断プログラム開発などに力を入れてきました。

譲受企業の概要

譲受企業は、金融分野に特化したサービスを提供するSDアドバイザーズです。SDアドバイザーズは、複数の会社をM&Aでグループ化し、各社のブランドを維持しながらグループ全体を活性化しています。

M&Aの目的・背景

コウイクスは、社外への事業継承を目的にM&Aを検討していました。元々は社内での事業引継ぎを検討していましたが、前社長の家族が体調を崩し、社内承継が困難となりM&Aを決断しました。SDアドバイザーズは、非金融システムの分野に参入をするため、M&Aに至りました。

M&Aの手法・成約内容

本件のM&Aでは、株式譲渡のスキームが選択され、会社売却が実行されました。2020年7月、SDアドバイザーズは、コウイクスの株式を取得し子会社化しました。株式取得額は非公表です。コウイクスはSDアドバイザーズの傘下となったことで、経理のデジタル化、従業員の主体性向上などの効果が得られました。

参考
https://br-succeed.jp/content/agreement/post-3622

5.小野写真館による桐のかほり咲楽の買収

異業種同士のM&Aで成功した事例を紹介します。譲渡企業は桐のかほり咲楽、譲受企業は小野写真館です。異業種同士でありながら双方の強みが一致し、M&Aが成立した後、事業展開に成功している例です。

譲渡企業の概要

譲渡企業は、静岡県の伊豆で人気が高い旅館の「桐のかほり咲楽」です。静岡県の観光地の伊豆で、予約が困難となっている温泉旅館です。M&Aをする前は、経営者の高齢化により事業承継の時期に差し掛かっていました。旅館業は自由に休みをとれないので、子供や親族に旅館を引き継いでもらうのが難しい状態でした。

譲受企業の概要

譲受企業は、フォトスタジオを中心事業として、結婚式場の運営で業績拡大をしてきた「小野写真館」です。

M&Aの目的・背景

譲渡企業の「桐のかほり咲楽」は、後継者不足により外部に事業継承を行う目的でM&Aを検討していました。譲受企業の「小野写真館」は、コロナ渦で、ブライダル事業の売上が減少し、業種を超えて売上拡大を図りM&Aを検討していました。M&Aを行うことで、双方の悩みが改善できると両社の経営者が判断し、M&Aに至りました。

M&Aの手法・成約内容

本件のM&Aでは、事業譲渡のスキームが選択されました。双方の経営理念が一致し、交渉してからわずか3カ月でM&Aが成立しました。譲受企業は、旅館を獲得したことで、旅館にフォトスタジオを併設したり、旅館全体を貸し切り挙式を行ったりなどの新規事業をスタートし成功しています。

譲渡企業・譲受企業の双方の強みが融合し、異業種のM&Aで成功した事例です。

参考
https://ono-group.jp/profile/press/20201001/index.html

6.丸井織物によるミチの買収

M&A後も、両社で良い関係を築き上げ、業績向上をしているM&Aがあります。譲渡企業はミチ、譲受企業は丸井織物です。両社のM&Aでは事業譲渡のスキームが選択されました。M&A後も両社で良い関係が築かれていて、利益率が向上し新規事業への参入なども果たしているM&Aです。

譲渡企業の概要

譲渡企業は、ネイルチップの販売サイトを手掛けるミチです。Web上でネイルチップ専門店として地位を確立していて、女性に人気が高い会社です。

譲受企業の概要

譲受企業は、石川県に本社があり、1956年創立の大手合繊維物メーカーの丸井織物です。2011年に取締役が変わり、それ以降、圧倒的な企業成長のためにM&Aを経営戦略の柱とし、2年~3年の間に5社をグループ化しました。

M&Aの目的・背景

譲渡企業のミチは、自社事業の集中や選択を行うため、M&Aを検討していました。ミチは、ECサイトに関するノウハウを持っていて、リスティングやSEO対策が強みです。譲受企業の丸井織物も、子会社にデジタルマーケティングを強みとする子会社を持っていて、シナジー効果を創出するため、ミチとのM&Aを実施しました。

M&Aの手法・成約内容

本件のM&Aでは、事業譲渡のスキームが選択され、M&Aが成立しました。M&A後、丸井織物はミチの無駄なコスト削減の施策を行いました。それにより、2カ月で利益率15%から40%まで改善できました。ミチは、新規事業を始めながら丸井織物のネイル事業に協力するなど、良好な関係性を築いています。

参考
https://www.maruig.co.jp/3386

7.ゴーゴーカレーグループによるスニタトレーディングの買収

カレー業者同士で成功したM&Aを紹介します。譲渡企業はスニタトレーディング、譲受企業はゴーゴーカレーグループです。双方の思惑が一致し、両社それぞれその後の事業展開ができた実例です。

譲渡企業の概要

譲渡企業は、国内で7店舗のインド料理店を展開するスニタトレーディングです。

譲受企業の概要

譲受企業は、カレーチェーン店の運営や、カレーの商品開発や販売を手掛けるゴーゴーカレーグループです。

M&Aの目的・背景

譲渡企業のスニタトレーディングは、手作りのカレー商品をデパートに卸していましたが、利益が得られていませんでした。自社製品の味を広げるため、EC販売を得意とする企業に工場売却を検討していました。譲受企業のゴーゴーカレーグループは、インドカレーブランドを展開する中で、ハラール料理が作れる向上を探していました。

双方の思惑が一致し、M&Aに至りました。

M&Aの手法・成約内容

本件のM&Aでは、事業譲渡のスキームが選択されました。スニタトレーディングは向上を売却したことで、ゴーゴーカレーグループが持つ販路を使い、自社ブランドの展開がしやすくなりました。買い手のゴーゴーカレーグループは、ハラール料理のメニュー開発ができるようになりました。

本件のM&Aにより、両社の課題が解決され、効率的に事業拡大が図れました。

参考
https://br-succeed.jp/content/agreement/post-1088

海外のM&Aの成功事例3選

海外のM&Aの成功事例3選

日本だけではなく、世界各国でM&Aは活発に行われています。2021年は新型コロナウイルスの影響で、経営戦略の見直しとテクノロジー導入の加速が起きています。景気回復に向けて、M&Aへの意欲が高まっている状態です。新型コロナ前も、世界では数多くのM&Aが行われてきました。

過去に起きた世界のM&Aの事例を確認していきましょう。

1.アメリカ通信大手によるAT&TによるディレクTVの買収

2014年、アメリカ通信大手のAT&Tが、アメリカ衛星放送の大手ディレクTVを約486億ドルで買収しました。このM&Aにより、アメリカや中南米の契約者の獲得に成功しています。

譲渡企業の概要

譲渡企業は、アメリカ衛星放送大手のディレクTVです。南米に1800万人の加入者を持っています。

譲受企業の概要

譲受企業は、アメリカ通信大手のAT&Tです。

M&Aの目的・背景

買収時、アメリカでは有料放送事業の成長が鈍化していて、携帯端末やタブレットへの配信の普及が必要となっていました。売り手企業のディレクTVは豊富なコンテンツを持っていました。買い手企業のAT&Tは、携帯端末やダブレット端末への配信強化に加え、買収により事業の簡素化を図り、コスト削減を図りました。

また、このM&Aにより、AT&Tは、アメリカや中南米の多くの契約者獲得に成功しています。

M&Aの手法・成約内容

本件のM&Aは、AT&TがディレクTVを約485億ドルで買収しました。

参考
https://jp.reuters.com/article/directv-idJPKBN0DY0PS20140519

2.DellによるEMC買収

2015年に、大手アメリカパソコンメーカーのDellが、ストレージ機器開発事業を展開するEMCを買収しました。このM&Aにより、世界最大のIT企業グループ「Dell Technologies」は誕生しました。

譲渡企業の概要

譲渡企業は、ストレージ機器開発事業を手掛けるEMCです。

譲受企業の概要

譲受企業は、アメリカの大手パソコンメーカーのDellです。

M&Aの目的・背景

M&Aの目的は、インターネットが普及する時代において、製品やサービス、人材や海外市場のシャア拡大です。このM&Aにより、世界最大のIT企業グループが誕生し、世界180カ国でサービスが提供されています。年間売上高は約740億ドルで、従業員数も14万人を超えています。

M&Aの手法・成約内容

本件のM&Aは、DellがEMCを約670億ドルで買収しました。

参考
https://www.publickey1.jp/blog/16/dell_technologies_emc.html

3.電通によるスワール社買収

電通イージス・ネットワークが、アメリカのマーケティング会社のスワール社の買収を行いました。本件のM&Aでは、電通イージス・ネットワークが、スワール社の株式100%取得しました。

譲渡企業の概要

譲渡企業は、アメリカのデジタルマーケティング会社のスワール社です。1997年に設立され、ソーシャルメディアを中心にデジタルマーケティング領域で発展を遂げてきました。

Webサイトの構築やコンテンツ作成、メディアプランの策定や実施の他、ブランデットコンテンツやeCRMに強みがあります。アメリカの「サンフランシスコ・ビジネス・タイムズ」という雑誌でサンフランシスコ最大の独立系エージェンシーに位置づけされています。

また、「サンフランシスコ・ウィークリー」という雑誌でも高評価を得ています。

譲受企業の概要

譲受企業の電通イージス・ネットワークは、日本に本社を持つ株式会社電通の海外本社です。

M&Aの目的・背景

本件M&Aの目的は、電通グループのグローバルネットワークブランドのマックギャリーボウエンが、デジタル領域で相乗効果を高められる拠点をアメリカ西海岸に設立することです。これにより、顧客企業へのサービス品質向上を図っています。

買収後、電通イージス・ネットワークはスワール社を「スワール・マクギャリーボウエン」に改名しています。

本件M&Aにより、アメリカに展開するグループ各社と連携を密にして、成長戦略を加速しています。

M&Aの手法・成約内容

本件M&Aの手法・成約内容は、電通イージス・ネットワークが、スワール社の株式100%取得です。これにより、スワール社は電通イージス・ネットワークの完全子会社となりました。

参考
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2017/1206-009406.html

M&Aを成功させるポイント

M&Aを成功させるポイント

M&Aは必ず成功するわけではなく、失敗するリスクも潜んでいます。M&Aを成功に導くためのポイントを把握しておきましょう。

M&Aは専門家の協力を得て行う

M&Aは、税務や財務、法務など幅広い知識が必要です。それらをすべて自社だけで行うのは難しいことです。M&Aの専門知識がない状態で交渉を進めていくと、自社にとって不利な条件で交渉されたり、M&A後に多大なリスクを背負ったりする恐れがあります。

M&Aの各専門分野に通じている専門家に相談をし、交渉を進めていきましょう。現在、M&Aの仲介会社が数多く存在します。M&Aの仲介会社には、税務や財務、法務などの専門知識を有しているスタッフが在籍しています。また、M&Aの仲介実績が豊富な会社であれば、自社と同じような状態のM&Aの経験があるかもしれません。

余計なリスクを背負わず、M&Aに通じている専門家の協力をもらい、スムーズにM&Aを進めていきましょう。

事前準備

M&Aを決意したら早めに動き出すことがポイントです。M&Aは、それぞれの業界の特性や経済動向に影響を受けやすく、買い手候補が見つかりやすいタイミングが存在します。決断が遅れることで相手先を選ぶ時間が足りなくなり、悪い条件で会社を売却しなければいけない恐れがあります。

買い手側も同様で、M&Aの仲介会社に登録して情報を待つだけではなく、日ごろからM&Aの情報に目を向けておくことが重要です。お気に入りの企業が見つかったときに、すぐに行動に映し出せないと、ほかのライバル企業に先を越されてしまいます。

売り手側も買い手側も、M&Aを決めたらすぐに行動に移し、それぞれのニーズにあった企業を見つけられるようにしましょう。

売り手側も買い手側も自社への理解を深める

売り手企業は、M&Aを決めたら、顧客や商品別の売上や採算性、強みや課題、技術や従業員の状況など自社の情報を整理しましょう。M&Aで好条件で取引を行うためには、自社の強みや課題を明確にすることが大切です。

それと同時に、従業員の雇用や取引先との関係、売却価格など譲渡・売却するときの優先順位を明確にしましょう。また、買い手企業も、自社の経営状況や理念、M&Aの目的を明確にし、どんな企業であればマッチするか事前に明確にすることが大切です。

売り手・買い手企業もM&Aを決めたら、自社の整理をしっかりと行ったうえで、その後の相手企業選びや交渉に移りましょう。

買収監査

M&Aで相手先企業を選んだら、デューデリジェンスと呼ばれる買収監査をしっかりと行いましょう。デューデリジェンスはM&Aの数ある手続きの中でも重要なプロセスです。デューデリジェンスは、売り手側から出された資料や情報が正しいものかどうか、売り手側の資産は本当に実在するかなどを確認するものです。

デューデリジェンスは、財務・法務・税務・労務・ビジネス・不動産などに分かれます。それぞれの専門家がいるので、専門家に項目ごとに依頼し、正確な調査をするのがおすすめです。デューデリジェンスで懸念事項が出てきた場合、問題が起きたときの対応策や賠償などを契約書に盛り込んだり、買収価格を調整したりしてリスクの顕在化に備えましょう。

デューデリジェンスは、行う内容により多額の費用がかかります。デューデリジェンスを行い過ぎて費用が嵩み、M&A後に最終的に残る利益が少なくなった事例もあります。そのような事態にならないように、必要なデューデリジェンスを絞って行いましょう。

経営者同士の人間関係を良好にする

M&Aをする際、経営者同士の人間関係を良好に保つことが重要です。企業の最も価値ある財産は従業員です。従業員の知識やスキルはもちろん大切ですが、取引先との関係など、すべて人と人との関係で企業は成り立っています。

売り手側の企業の経営者の人間性に惹かれ長年頑張ってきた従業員が、買い手企業の経営方針に合わず、M&Aをきっかけに退職してしまう場合があります。その結果、主要な取引先との関係が壊れ企業価値が大幅に下がる恐れがあります。M&A成立前に従業員の退職や取引先との契約打ち切りなどが起こると、M&Aも破談となるケースがあります。

このような事態にならないように。事業をM&Aで引き継ぐ際、全経営者に一定期間会社に残ってもらう場合があります。M&A後も、買い手・売り手企業の経営者同士が協力することが大切です。

取引金融機関との関係を良好にする

M&Aでは多額の資金が動くため、金融機関から融資で買収資金を調達する場合があります。M&Aの交渉がうまくいっても、最後の最後で金融機関から融資を受けられず、M&Aを見送らなければならなくなった事例があります。

また、金融機関の中にはM&Aに詳しい人がいます。M&Aの知識が豊富な人から意見を聞くことで、自社のM&Aを成功に導くヒントが得られます。

普段から金融機関との関係を良好にしておき、経営戦略としてM&Aも検討していることを伝えておくとよいでしょう。そうすることで、実際にM&Aを行うときも、迅速に対応をしてもらえます。

自社の従業員や取引先との関係を良好にする

最終契約が結ばれたら、社内外へのM&Aの成約を開示します。その際、タイミングが重要です。

従業員の中でも、信頼が厚いキーパーソンの従業員とは、早い段階から信頼関係を築き、積極的にコミュニケーションをとることを心がけましょう。キーパーソンがリーダーシップをとってくれると、ほかの従業員の不満を軽減でき、トラブルがあったときでも迅速に対応が可能です。

主要な取引先との関係性も重要で、情報開示後、なるべく早く経営者自ら挨拶に伺うことがポイントです。取引先との契約書の中で、M&Aをするときは事前了解を得られていないといけない条件が盛り込まれているものがあるので、事前に契約書を確認しましょう。

売上をあげる

売り手・買い手にとって双方にメリットがあるのがM&Aです。M&Aが成功したといえるように、売上をあげ利益を増大させるなどして、わかりやすい形で成果をあげることが重要です。それぞれの取引先を紹介したり、販売ルートに商品をクロスセルしたりして事業展開を行いましょう。

事業展開をして周囲の企業を巻き込むことで、さらに経済の活性化につながります。M&Aにより、さらに事業の成長スピードを加速し、シナジー効果が得られる企業とM&Aをしましょう。

M&A失敗事例10選

M&A失敗事例10選

M&Aは大きな利益を生む一方、大きな損失を出すリスクもあります。M&Aで大きな損失を出すと、最悪経営破綻に追い込まれる場合があります。事前の調査を怠らないようにして、慎重にM&Aを進めていきましょう。

M&A仲介会社が開催するM&Aセミナーへ参加するのもおすすめです。ウィルゲートM&Aは、M&Aの成約実績が豊富な会社で、M&Aに関するセミナーも多数行っています。M&Aを検討している方は、事前にウィルゲートM&Aが行っているセミナーに参加し、M&Aの知識をつけておくとよいでしょう。

M&Aを多数行っている国内の大企業でも、買収企業の粉飾や不正会計、経営悪化などによりM&Aが失敗した事例があります。M&Aの成功事例だけではなく失敗事例も確認しておくことで、自社がM&Aを行う際に気を付けなければいけないポイントを把握できます。ここでは10個の失敗事例を確認していきましょう。

1.東芝がアメリカの原発買収で損失

2006年に、東芝がアメリカのウエスチングハウスを買収しました。譲受企業の東芝は日本を代表する大企業で、電気製品の開発や販売だけではなく、電力開発や送変電・配電事業、公共・交通・放送のソリューション事業など幅広く事業展開しています。

譲渡企業のウエスチングハウスは、アメリカ原発事業大手の1886年から1999年まで存在したアメリカの総合電機メーカー「ウエスチングハウス・エレクトリック」の原子力事業部門です、1950年代以降「加圧水型原子炉(PWR)」の開発を行い、独占的な地位を占めていました。

しかし、2011年に起きた東日本大震災を境に、世界的に原発事業に逆風が起きました。世界で原発事業の新施設開発に急ブレーキがかかり、ウエスチングハウスの業績が急激に悪化しました。ウエスチングハウスの簿外債務は6,253億円に及び、東芝に多大な影響を与えました。

これにより、東芝には2,600億円の減損損失が発生しました。天災により外部環境が変化し、事業買収の予測が大きく外れることがわかる結果となりました。

参考
https://www.asahi.com/articles/ASL827HP5L82ULFA036.html

2.丸紅がアメリカ穀物大手ガビロン買収で失敗

日本の総合商社の丸紅が、2012年に成長戦略の一環としてアメリカのガビロンを買収しました。譲受企業の丸紅は、生活産業や食料品産業、電力・インフラ事業など幅広く事業を展開しています。譲渡企業のガビロンは、穀物や肥料、エネルギー事業などを手掛けるアメリカの大手穀物メーカーです。

買収額は約2,880億円となりました。買収額には、アメリカから中国への大量輸出を当て込んでいたため、高額となりました。しかし、中国政府がガビロンによる寡占化を避けたため、中国への輸出が予想より増えませんでした。結果、丸紅は買収にかかったのれん代約500億円を損失する結果となりました。

参考
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00190/012700014/

3.キリンホールディングスがブラジルで苦戦

日本を代表する飲料メーカーのキリンホールディングスも、海外企業のM&Aで苦戦した経験を持ちます。

キリンホールディングスは、1907年に創業して以来100年以上にわたって日本の飲料業界をリードしてきました。ビール事業に始まり、発酵・バイオテクノロジーを活用し医療やヘルスサイエンス領域へ事業拡大しています。

2011年にキリンホールディングスは、ブラジルのビール大手のスキンカリオールを約3,000億円で買収しました。しかし、キリンホールディングスがスキンカリオールを買収した直後、ブラジルの景気が悪化しました。

そのため、2015年には減損損失約1,100億円を計上しました。その後、2017年にキリンホールディングスは、スキンカリオールをオランダのハイネケンに約770億円で売却しました。

参考
https://diamond.jp/articles/-/85142

4.NTTコミュニケーションズがアメリカで苦戦

NTTコミュニケーションズは約6,000億円を投じて、アメリカのインターネットサービスプロバイダとホスティングサーバ提供事業を行うベリオを買収しました。譲受企業のNTTコミュニケーションズは、ネットワークモバイル事業や電話・映像コミュニケーション事業、運用管理やセキュリティ事業など幅広く事業展開をしています。

ベリオの業績はNTTコミュニケーションズの買収後低迷し、買収翌年の中間決算期で、約5,000億円の減損損失を計上しました。

参考
https://maonline.jp/articles/kyogaku0066?page=2

5.第一三共がインド社製薬会社買収で減損

2008年に、日本の大手製薬会社である第一三共がインド最大のジェネリック医薬品会社のランバクシー・ラボラトリーズを買収しました。買収額は約4,800億円です。譲受企業の第一三共は、国内外で医薬品事業を展開し、 世界に通用する新薬提供し世界の人々の健康に貢献しています。

第一三共がランバクシー・ラボラトリーズを買収後、インド国内の工場で品質管理問題が起きたため、ランバクシー・ラボラトリーズの業績が急速に悪化しました。

業績悪化の理由は、品質管理問題によりアメリカ政府がランバクシー・ラボラトリーズの医薬府品の輸入を停止したためです。第一三共は、2015年にランバクシー・ラボラトリーズをインドの同業大手会社に売却し、減損処理を行いました。

参考
https://toyokeizai.net/articles/-/34803

6.資生堂がアメリカの化粧品会社買収で損失

日本の大手化粧品会社である資生堂が、アメリカの自然派化粧品会社のベアエッセンシャルを2010年に買収しました。買収額は約1,800億円です。ベアエッセンシャルは、テレビショッピングなどで化粧品を販売していて、それによる売上向上を見込みM&Aが行われました。

しかし、売上が伸びなかったため、資生堂は2013年と2018年に合わせて約950億円の損失が発生しました。

参考
https://biz-journal.jp/2017/12/post_21643.html

7.富士フイルムがアメリカゼロックスと合弁解消

富士フイルムホールディングスは、日本を代表する大企業で、液晶ディスプレイ材料作成や医薬品、化粧品やサプリメントなど幅広い事業展開をしています。2018年に、富士フイルムホールディングスによりアメリカの印刷機器販売を手掛けるゼロックスの買収で合意しました。

しかし、ゼロックス株主から反発があり、合弁が解消されました。最終的に、ゼロックスは株式の売却で約2,500億円を手にして、富士フイルムホールディングスは得るものはほとんどありませんでした。

参考
https://jp.reuters.com/article/zerox-fuji-idJPKBN1XF0LD

8.DeNaの買収失敗事例

DeNaは、2014年にキューレーションサイトを運営するiemoとベロリを買収しました。譲受企業のDeNaは、ゲーム事業だけではなく、ライブストリーミングやヘルスケア事業など幅広く事業展開しています。また、プロ野球やプロサッカーリーグのチームのスポンサーを務めるなど、スポーツ支援も積極的に行っています。

本件のM&Aより、合計10サイトの運営を開始しました。しかし、医療関連やヘルスケアの情報を取り扱う運営サイトで、根拠が不明確なこと、外部コンテンツの無断使用を疑われる記事が多数見つかり炎上しました。

さらに、クラウドソーシングを通じ、低単価で外部ライターにリライトを助長する文言で発注を依頼していたことが発覚し、最終的に運営10サイトは閉鎖されました。

参考
https://dena.com/jp/press/2085/
https://jp.techcrunch.com/2016/12/01/welq-dena/

9.LIXILの買収失敗事例

日本の大手住設機器メーカーのLIXILは、2014年に、現アフリカLIXILのグローエ・ドーン・ウォーターテックを買収しました。

譲受企業のLIXILは、100年以上人に寄り添う独自の発想と工夫をし続け、日本の住設機器業界をリードしてきた大企業です。住設機器開発・販売だけではなくリフォーム事業も手掛けています。また、鹿島アントラーズのスポンサーを務めていて、スポーツ支援も積極的に行っています。

LIXILのグローエ・ドーン・ウォーターテックの買収額は約4,000億円で、この買収によりグローエ子会社の中国企業のジュウユウも傘下に入りました。しかし、その中国企業のジュウユウの不正会計が2015年に発覚し、ジュウユウは債務超過で破綻処理を迫られました。

LIXILもこの波を受けて、関係会社投資の減損損失や債務保証関連損失などで約608億円の損失が発生しました。グローエは、LIXILの買収以前の2009年にも一部出資をLIXILから受けていて、この時点でジュウユウの財務情報にアクセスできていないにもかかわらず、LIXILに報告をしていませんでした。

参考
https://br-succeed.jp/content/knowledge/post-2616

10.パナソニックの買収失敗事例

日本の大手家電メーカーのパナソニックが、2009年に三洋電機を買収しました。譲受企業のパナソニックは、パナソニックの創業者・松下幸之助が1918年に「松下電気器具製作所」を創設して以来、100年以上に渡り日本の電気機器業界をリードしてきました。松下幸之助は、経営に関する各書籍も出版していて、現代でも経営者から厚い支持を得ています。

パナソニックによる三洋電機の買収額は約6,600億円です。しかし、買収後わずか2年で三洋電機の企業価値は半分まで下落し、2,500億円を偏損処理する形となりました。三洋電機の企業価値下落の原因は、三洋電機主力事業の民生用リチウムイオン電池の事業価値が大きく毀損したためです。

参考
https://www.sankeibiz.jp/business/news/191220/bsc1912200500009-n1.htm

M&Aが失敗するよくあるパターン

M&Aが失敗するよくあるパターン

M&Aで失敗するパターンがあります。失敗するパターンとして多いのは、以下のケースです。

  • 期待した売上があがらない・買収額が高値掴みされる
  • 海外でトラブル発生
  • M&A後に人材流出
  • 買収後に粉飾や不正会計が見つかる
  • 買収後に企業イメージが悪化

M&Aで失敗しないために、失敗パターンを把握し、事前対応することが重要です。

期待した売上があがらない・買収額が高値掴みされる

M&Aで失敗するパターンとして挙げられるのは、まずは売上が上がらないことです。買収先企業が売上見込みとして考えていた予想よりも大きく下回ったり、収益が赤字になったりすることで経営を圧迫する恐れがあります。

売上が上がらない原因とすると、競争環境の変化や状況悪化が考えられます。また、買収企業に対する調査が不十分で、実際の評価額より高い金額で買収をしてしまう場合もあります。M&Aをするときは、今後起こりえる環境の変化を想定して、事前の買収企業調査も十分に行い、M&Aを実行しましょう。

海外でトラブル発生

M&Aでは、海外へ事業拡大を図り、海外の企業と契約をする場合があります。その際に注意しなければいけないのが、海外のトラブル発生です。

海外企業の買収をするときのリサーチ不足や、見込みの甘さにより買収効果が期待できない恐れがあります。海外企業とのM&Aは高額となるケースが多々あり、買収後に多額の簿外債務などが発覚すると、多額の損失を出します。

特に、中南米や中東のように政情が不安定な地域は、紛争や政変などの経済要因以外のリスクは致命的な結果を起こします。海外の企業とM&Aをするときは、しっかり政情を確認してから実行に踏み切りましょう。

M&A後に人材流出

経営をするうえで重要なのが人材です。M&A後、経営が変わり企業を離れたり、他社のライバル企業に引き抜かれたりすることで、製品やサービスの質が保てなくなり収益が悪化します。人的なリスクも考慮し、M&Aを検討する必要があります。

買収後に粉飾や不正会計が見つかる

M&Aでは、買収後に売り手企業の粉飾や不正会計が見つかり、買い手企業の経営が悪化する場合があります。M&Aでは、買収対象企業の財務状況やコンプライアンスの情報を精査するデューデリジェンスが行われます。

このデューデリジェンスが不十分だと、買収後に粉飾や不正会計が発覚するリスクを生じます。デューデリジェンスは専門家に依頼し、リスクを軽減することが重要です。

買収後に企業イメージが悪化

財務上の問題だけではなく、買収対象企業のコンプライアンスやハラスメント問題などが発覚し、買い手企業のイメージが買収後に悪化する場合があります。特に、文化や宗教などが大きく違う海外の企業を交えたM&Aのときは注意が必要です。

ウィルゲートM&Aで成約したM&A事例4選

ウィルゲートM&Aで成約したM&A事例4選

ウィルゲートM&Aは、上場企業含む9,100社以上の経営者とつながりを持つM&A仲介会社で、M&Aの成約実績が豊富です。ウィルゲート自体も、事業譲渡や事業譲受の経験を持っていて、当事者の気持ちを理解したうえで仲介相談に入ってくれるので、多くの経営者の信頼を掴んでいます。

ここでは、ウィルゲートM&Aの成功実績を確認しましょう。

Webコンサルティング会社の株式譲渡

買い手企業は、業績が好調でM&Aも積極的に行っていました。その中で、自社で保有をしていない成長エンジンを補うため、デジタルマーケティング領域の企業買収を考えていました。M&Aが成立後、同領域のノウハウや他商材をクロスセルする販路を獲得しました。買収額は1.7億円で、契約までの期間は4.5カ月と短い期間でした。

金融系マッチングメディアの事業譲渡

買い手企業は、買収により営業利益の増加や、経営のテコ入れができて成長につながるという理由で買収を決断しました。売り手企業は、これまでに取り扱いがなかった収益モデルのメディアであり、SEOに依存しない事業モデルであったのも買収の決断のポイントとなりました。M&Aの形式は事業譲渡で、売却額は1億円、契約までの期間は3カ月でした。

EC領域のSaaS事業運営企業の株式譲渡

買い手・売り手企業それぞれのM&Aの方針や自社の戦略、経営理念がマッチしM&Aが成立しました。売り手企業の自社顧客基盤やエンジニアリングを使用し、グローバルに事業展開ができると考え、買い手企業は買収に至りました。M&Aの形式は株式譲渡で、買収額は11億円、契約までの期間は4カ月でした。

比較系ポータルメディアの株式譲渡

売り手企業は、外部環境の変化により収益性が低下していました。しかし、買い手企業は自社のアセットを活かし経営のテコ入れをして、収益性が増加すると見込み買収に至りました。また、買い手企業の既存事業にはない顧客資産を売り手企業が保有していて、魅力を感じ買収しました。

売り手企業の代表者の連帯保証が外れ、メディアのトラフィック増加につながりました。M&Aの形式は100%株式譲渡で、買収額は2,500万円、契約までの期間は2カ月でした。

M&A相談ならウィルゲートM&A

M&A相談ならウィルゲートM&A

M&A相談を検討している方は、ウィルゲートM&Aにご相談ください。ウィルゲートM&Aは、ITやWeb事業領域のM&Aを中心に、数々のM&A仲介実績が豊富です。独自のネットワークを形成し、経営者とのつながりも豊富。相談料・着手金無料の完全報酬型なので、費用をなるべく抑えてベストマッチングを目指したい方におすすめです。

M&A事例 まとめ

M&A事例 まとめ

M&Aは、大企業だけではなく中小企業でも活発に行われています。M&Aの規模はそれぞれ違いますが、成功する事例にも失敗する事例には共通点があります。これからM&Aを行う方は、事前にM&Aの成功事例・失敗事例を確認しましょう。

また、M&Aを成功させるためのポイントについても、事前にチェックするのがおすすめです。実際にM&Aを行う際には、経験豊富なM&A仲介会社に相談して、効率的に進めていくのがおすすめです。

M&A仲介会社の中では、M&Aに関するセミナーを開催したり、無料相談に対応したりしている企業もあります。ウィルゲートM&Aは、各種セミナーや無料相談を開催しています。どこの仲介会社に頼めばよいか悩んでいる方は、まずはウィルゲートM&Aにご相談ください。

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