会社分割に分類される新設分割と吸収分割は、経営統合や組織再編を目的として実施されるケースが多い傾向にあります。類似点が数ある中で細かい違いも存在し必要な手続きも複雑です。
この記事では、新設分割と吸収分割の違いについて、会計・税務処理にも触れながら、メリット・デメリットなどを解説していきます。
\成約例や支援の特徴・流れを紹介/
会社分割とは、株式会社や合同会社などが所有する権利義務の一部もしくは全部を他の会社に承継するM&Aの手法です。株式交換や企業合併と同じく組織再編行為と呼ばれる会社分割は、分割後の会社が消滅しないため経営統合やグループ内再編を目的として実施されます。会社分割は「吸収分割」と「新設分割」の2つに分けられます。
また、会社分割を実施する際の税務は、適格要件を満たした会社分割方法を行えばM&A実施に伴う課税が発生しない「組織再編税制」に基づき適用されます。
会社分割のメリットは5つあります。以下で解説していきます。
会社分割は、株式交換や企業合併などの組織再編行為と共通で、株式を対価とします。資金繰りが困難な企業が会社分割を行う場合は、相手企業に対して株式交付を実施するだけなので手元に資金がなくても対価を支払えます。
取引先との契約・資産・事業への許認可などの移転をまとめて行えます。個別の手続きが不要なため利便性が高く、事業譲渡の代わる手法として選択されるケースが増えています。
宅地建物取引業の許認可のように一部承継できない事業もありますが、ほとんどの場合は届出の提出のみで承継が可能です。一から許認可申請が必要なものは少ないといえるでしょう。
事業分割後に従業員が元の会社・新事業を引き継いだ会社のどちらに雇用されるかはその企業の状況・特色により異なりますが、従業員の同意は不要です。
ただし、異なる事業への所属や望まない異動を命じられた場合に、従業員は異議申し立てが行えます。従業員の同意が必要ないからと言って本人の希望や分割前とかけ離れた事業部への所属などを行うと、異議申し立てをされる可能性があることを押さえておく必要があるでしょう。
好調な事業分野を残し、経営状況が思わしくない事業分野に関しては必要な措置を行うなど「分社化」が可能なので、将来的に起こり得る倒産のリスクを分散できます。さらに事業分野が身軽になることで、より専門的な異なる分野への参入が可能になります。事業拡大や会社のスリム化に活用するケースも多いでしょう。
会社分割によりスリム化が実現できれば事業部の責任者も減少するため、スピーディーに話を進めることが可能です。参考意見の収集・経営者の意思決定も早く行えます。
会社分割のデメリットは6つあります。以下で解説していきます。
資産・各種契約などの包括的承継が可能な点は会社分割のメリットである反面、簿外債務や偶発債務まで包括内に存在しており、引き継いでしまう恐れがあります。
株主総会を開催する手間と時間、さらに株主の同意が3分の2以上必要です。特別決議の可決や事業に直接携わっていない株主に対して、分割理由の説明をしなくてはなりません。株主が経営者で構成されている場合には、説明は不要でしょう。
届出だけで引き継げない事業も一部存在します。事業承継に許可が必要な場合は、許認可の手続きが不要である会社分割の利点が活かせません。賃金業・旅館営業・ホテル等が再度許認可の取得が必要な事例として挙げられます。
会社分割の税務関係の取り扱いは煩雑さが目立つケースもあります。分割が適格・非適格の判定を行い、適格であれば納税は未発生となります。いかにコストを抑えるかがポイントになるでしょう。財務処理も煩雑になりやすい傾向があり、特に税務処理前の基本土台作りは経験を積んだ専門家でも難しい作業となります。
分割によって株価変動が起きた場合、対価が株式である会社分割は信頼性低下の影響を被ります。企業イメージが低下する可能性もあるでしょう。
会社分割は対価として株式を渡すため株式評価を行いますが、中小企業である場合は特に、国税庁により発表される類似業種に沿って計算するため、評価部分だけでも膨大な時間がかかってしまいます。
新設分割・吸収分割のどちらの手続きも複雑で時間がかかる上、株主総会の決議・招集通知の郵送など物理的にも時間を要することを押さえておく必要があります。
M&Aにおける会社分割は2種類に分けられます。新設立された法人と既存の法人で行われる「新設分割」は、資産・事業権利義務・各種契約の移転相手が新設立会社になります。一方で、既存の法人2社の間で行われる「吸収分割」は、資産・事業権利義務・各種契約の移転相手が既存の他社になります。
対価の受け取り先によって新設分割・吸収分割ともに、事業分割した企業側が対価を授受する「分社型分割」と、事業分割した企業の「株主」に対して対価を渡す「分割型分割」の2つに分類されます。M&Aを実行する際は、「分社型新設分割」・「分割型新設分割」・「分社型吸収分割」・「分割型吸収分割」の4通りから手法を選択します。
会社分割の枠組みに存在する新設会社について解説していきます。
新設分割とは、株式会社または合同会社が既存事業の全部または一部を新設会社に承継する、会社法第2条で定義されたM&Aの手法です。一事業部としてよりも専門的な新会社として立ち上げる方がメリットが多い場合に、使用されるケースが多いでしょう。
新設分割では原則的に、株式の交付を対価としますが、持分・新株予約権・社債なども対象になります。分割実施後の対価の受取先によって「分社型新設分割」・「分割型新設分割」に分類されます。
新設分割は、グループ内再編を目的として行われるケースが多い傾向にあります。新設分割により主力事業を一部切り離し、分社化・子会社の設立を行うことで、組織管理のスリム化・親企業側の経営戦略が実行できます。
さらに、2社以上の共同新設分割により合弁企業の設立も可能です。複数の企業が重点事業を切り離し、新設する合弁企業に集約させることで、高収益を生むシナジーが期待できるでしょう。
新設分割のメリットは5つあります。以下で解説していきます。
会社設立や事業譲渡で対価が現金である場合は多額資金が必要ですが、新設分割の対価は株式交付または株式等(株式・社債・新株予約権・新株予約権付社債)で事業承継が可能であるため、大きな資金は不要です。
事業譲渡でも株式等を対価にできるケースもありますが、現物出資のため裁判所選任の検査役による調査が必要です。さらに、新設会社は全株式に譲渡制限のある非公開会社であるため株式の現金化が困難です。売り手にとって対価が株式である選択肢は魅力的ではありません。
新設分割では、資産各種契約・組織・従業員など全てを承継会社に引き継げます。資産には施設や設備だけではなく、資本剰余金・資本準備金なども含まれます。ただし、許認可の取得は新たに行う必要があるため注意しましょう。
新設分割は、特定事業の切り離しによる新会社への移転・複数事業の組み合わせにより1社にまとめるグループ再編や合併会社の立ち上げが比較的柔軟に行えます。同じく株式を対価とするM&Aスキームの株式交換や株式移転は会社を丸ごと取得しなければいけないため、特定事業の取得が目的の場合は新設分割が有効でしょう。
さらに、新設分割と株式譲渡の組み合わせによりM&Aの選択肢が広がります。買収対象事業や組織の性格・経営統合におけるビジョン・売主の分割条件希望などに合わせ、柔軟なM&Aが行えます。
新設分割は、分割事業の権利義務を新設会社にまとめて承継することが可能です。譲渡の場合は権利義務について一つひとつ契約の再締結などの移転手続き・事業の許認可取得が必要で、取引先・従業員との個別交渉に時間とコストがかかります。細かい手続きが不要で、許認可の引き継ぎも一部を除いて容易であることが新設分割の利点でしょう。
権利義務が膨大である場合は、新会社設立後に事業譲渡で移転するよりも新設分割を行う方がコストを抑えられ、目的達成への時間も大幅にカットできます。
新設分割における適格要件を満たせられれば、「課税優遇措置」を受けられます。事業譲渡など他のM&Aなどと比べて、大きな優位性となるでしょう。
新設分割のデメリットは4つあります。以下で解説していきます。
包括的承継の可能な新設分割は、簿外債務や偶発債務などリスクとなり得る不要な資産まで引き継いでしまう可能性があります。一方で事業譲渡の場合は、契約で定めた特定の権利義務のみを承継するので不要な資産を引き継ぐ心配が要りません。
新設分割を行う対象の事業に簿外債務や偶発債務偶発債務が含まれている場合は、新設会社にそのまま承継されてしまい後に大きな負債を抱えてしまうリスクが発生するでしょう。
新設分割の実施には、株主総会における特別決議を行う必要があります。税務上の適格要件を満たすためには、複数の細かい条件確認・調整をしなければいけません。煩雑である新設分割の事務手続きは負担が大きいといえるでしょう。
新設分割では、2つの法律に則って手続きを行う必要があります。債権者保護手続きや株主総会などといった手続きは、会社法で定められています。さらに従業員の権利保護の手続きは、労働契約承継法で定められています。一方で事業譲渡では、債権者保護手続き・労働契約承継法に基づく手続きが要りません。
これらの複雑な手続きには費用と時間がかかるため、個別に権利義務を移転できる事業譲渡を行った方がよいケースもあります。
新設分割の対価である株式を現金に換金したい場合、分割後に新設会社が上場していなければ現金化が容易ではありません。現金化が可能でも分割相手が関係者などの場合に限られ、売価交渉の手間も生じてしまいます。
新設分割には複数の手続きが必要です。流れに沿って解説していきます。
新設分割計画とは、新設分割に関する基本事項を記載するものです。必要とされる具体的な項目は、以下を参考にしてみてください。
新設分割実行前後のタイミングで開示義務のある書類が存在します。開示とともに告知を行い、会社本店住所に対象である必要書類の6カ月間備え置きが定められています。
株主総会で特別決議の承認を得る必要があります。特別決議は、議決権株式総数の過半数以上の株主出席と3分の2以上の賛成が要件となっています。ただし、略式組織再編および簡易組織再編の条件を満たす場合は、株主総会における特別決議は不要です。
新設分割に反対の株主が現れた場合は、特別決議での承認を得た場合でも対象の株主の株式買取を行う必要があります。会社側は申し立て期間の通知に、株主総会開催通知日から20日間の申し立て期間を設定しなければなりません。
新設分割では、既存債権者に損失が及ぶ事態を避けるために債権者保護手続きを行います。債務履行支障該当の債権者に対して、官報公告・個別催告を実施します。公告・催告の記載必須内容は以下の通りです。
債権者に対する異議申し立て期間は、最低でも1カ月提供しなければなりません。ただし、新設分割実施後に債権者の所有権利に変化が及ばないと認められた場合に限り、債権者保護手続きは省略が可能となります。
新設分割の登記手続きには、分割会社が行う変更登記・新設会社が行う設立登記が必要です。2社の登記を同時に実行しなければいけません。登記申請方法は2つに分類されます。
分割会社と新設会社が同一の登記所管轄区域に存在する場合は「同時申請」と呼ばれ、登記所で新設分割および変更登記の手続きの申請を行います。分割会社と新設会社が同一の区域内に存在しない場合は「経由申請」と呼ばれ、新設会社管轄区域の登記所で分割会社側の登記変更を合わせて手続きします。
登記申請時に必要な書類については、以下を参考にしてみてください。状況によって他にも必要書類が求められる可能性もあるので、法務局や専門家への事前確認が確実でしょう。
債権者保護手続きの際に債権者に対する公告・個別催告のいずれかを怠ると、分割会社・新設会社ともに債権者から債務履行請求される事態に発展するケースがあります。企業再生を目的とする新設分割では、分割会社の不良事業を対応する債権者への債権困難など不都合も起こり得るでしょう。新設会社は債務履行請求をされた場合、対応を求められることになります。
新設分割の実行前と同様に、実行後も開示しなければならない書類があります。会社本店住所への備え置きは6カ月以上です。書類への記載必要項目は以下を参考にしてみてください。
分割会社の株主・役員・新設分割を承認しなかった債権者などは、新設分割成立後6カ月以内に限り、会社法による新設分割無効の裁判提起が認められています。
提起が認められると、新設会社解散・分割会社登記の新設分割前への変更が裁判所によって強制的に行われます。新設分割の手続きや関係者への対応などは、専門家に相談のもと注意深く行うべきでしょう。
会社分割には、「適格要件」を満たす場合は資産・負債の簿価評価、「適格要件」を満たさない場合は時価評価を行う制度が存在します。時価評価した場合は譲り受けた資産・負債に差額が生じることで譲渡損益などが計上され、簿価の場合よりも仕訳・会計処理が複雑になります。以下では、「適格要件」を満たした場合の簿価評価について、分社型と分割型に分けて解説します。
新設分割分社型では、新設企業が発行した株式を分割会社が譲受するので、事業の分割会社の株主は承継側の株主でもあります。承継企業と、分割企業・承継企業それぞれの株主の会計処理について考える必要があります。
新設分割分社型で「分割企業」が行う取引は、分離先企業に対する事業に関わる資産・負債の承継を行う代わりに分離先企業の株式受取です。分割企業の会計処理は、譲渡資産・負債を消滅させ取得した分離先企業の株式(譲渡資産と負債の差額)を資産として借方に計上します。資産と負債の価額は、会社分割が「適格要件」を満たす時は簿価、「適格要件」を満たさない場合は時価となります。
続いて分離先である「承継企業」の会計処理についてです。「承継企業」が行う取引は、分割企業からの事業譲受によって得た受資産・負債の計上と、その差額を用いて資本金・資本剰余金の会計処理を行うことです。会社分割の契約時に資本金増加額を設定し、契約書に明記しておきます。会社分割の手法に関わらず、分割企業の会計・税務処理は基本的に同じです。
対価を受け取る側である分割会社の株主は承継企業の株主と同一であるため、分社型分割を行う上で個別に必要な会計・税務処理はありません。
会社法では会社分割の分社型だけ定められており、分割型には規定がありません。新設分割分割型の手続きは、分社型の会社分割実施・自社の株主に対する対価である株式の配当の2段階の工程が完了したものとして扱われます。以下の、分割企業、分割企業と承継企業それぞれの株主の会計処理について押さえておくとよいでしょう。
「分割企業」は、新設分割分社型と同様の処理をした後に株式の現物配当における会計処理を行います。株式の現物配当の会計処理は、貸方による配当株式の計上・借方による同額の純資産の減少を行います。純資産の具体的な勘定科目振り分けは、取締役会などで決定します。
新設分割分割型と新設分割分社型の異なる点は、対価である株式の受け取り相手です。対価の受け取り相手が違うので取引内容自体は丸ごと同じではありませんが、会計処理方法は同じです。
「分割企業の株主」は新設立した会社の株式受け取りと引き換えに、分割企業の保有株式が事業を分割した分だけ価値が下がります。受け取った承継企業の株式価値と分割企業の株式価値の減った分が同じなので、振り替えた株式を株主を借方・貸方にそれぞれ計上します。
会社分割分割型も新設分割・吸収分割問わず、分割企業株主の会計処理は基本的に同じです。さらに、「承継企業の株主」は分割企業の株主と同一なので、個別の会計・税務処理は必要はありません。
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会社分割の枠組みに存在する吸収分割について解説していきます。
吸収分割は、既存企業に対して事業の資産・権利・義務などを承継するM&Aの手法です。吸収分割を含む会社分割のスキームにおいて事業譲渡側は「分割会社」と呼ばれ、新設分割と同様で対価の受け取り相手次第で「分社型吸収分割」・「分割型吸収分割」に分けられます。既存会社への事業移転以外は、新設分割と違いありません。
吸収分割は、経営統合やグループ内再編を目的に実施されます。具体例としては、親会社が事業を子会社に渡すことによる持株会社制への移行・子会社同士での吸収分割によるグループ企業内での経営資源再配分などがあります。事業を移転させることで子会社組織による迅速な意思決定につながるため、より事業遂行が有効になります。
グループ再編に多用される吸収分割は既存他社と行う際は、理想的な売り手他社を見つけ出すことが成功の鍵となるでしょう。
吸収分割のメリットは4つあります。以下で解説していきます。
吸収分割において承継会社の支払う対価は現金・株式のどちらでも実施できます。多額資金の用意がなくても、株式の交付を行うことで事業取得が可能です。簿価な資金での承継が「適格分割」で認められると消費税も発生しないため、税負担が減らせます。
包括承継である吸収分割は契約や移転手続きがシンプルです。労働者や取引先との契約・各種許認可を個別に行わなければならない事業譲渡に比べて、吸収分割は簡易的に手続きできるため大規模事業の承継には適した手法でしょう。
吸収分割は、会社の一部事業を切り離し分割することでグループ内再編・経営統合の実施が可能です。承継会社が求める事業のみ引継ぐことで経営統合後のシナジーの発揮も期待できます。一般的に事業承継時に必要な期間に比べて短く済むため、早期にシナジーが目に見えてくるでしょう。
包括承継である吸収分割は、労働者の移籍についても個別の同意が不要です。重要な要素を持つ人材の流出も起こりにくいでしょう。ただし、労働契約承継法に規定されている手続きをしなければ、吸収分割事態が無効になる可能性があるため怠らないよう注意が必要です。
吸収分割のデメリットは4つあります。以下で解説していきます。
包括承継は承継内容を選別できないため、現在または将来的に経営ダメージになり得る簿外債務や偶発債務などの不要資産までも引き継いでしまう恐れがあります。
事務手続きの代表例として株主総会の特別決議が挙げられますが、他にも一定の規模以上の吸収分割を行う場合に債権者は異議申し立てが可能であり、異議申し立てがあった際には弁済手続きが必要です。事務的なコストが大きく負担になるでしょう。
承継会社が吸収分割の対価を株式として発行すると1株あたりの価値が下がり、それに伴って株主構成や株式所有率も変化します。株価下落により既存株主からは不満の声が出るでしょう。
さらに分割会社の株主が承継会社の株主となるため、株主構成も変化します。新しい株主と波長が合わなかったり敵対的な人物がいたりした場合に、業務に支障が出る可能性も考えられます。
吸収分割実施は承継会社の現場の立場としては突然、対象事業の部門が丸ごと加わってくることになります。別組織の社風・事業文化・企業方針・業務スタイルなどは全く異なるため、人事制度や事業運営体制などをすり合わせていかなくてはなりません。綿密にM&A後の経営統合プロセスであるPMI(Post Merger lntegration)を事前策定しなければ、現場の混乱を招き業務の実効性を下げてしまう可能性が懸念されるでしょう。
経営統合がスケジュール通りに進まずに現場負担が増えてしまうと経営に支障をきたし、想定していたほどのシナジー効果が生まれない事態に発展しかねません。
吸収分割を成功させるには必要な複数手続きを確実に行うことがポイントでしょう。一般的な吸収分割の場合、全プロセスを完了させるまでに3カ月前後かかるため、計画的な労務手続きに注意が必要です。流れに沿って解説していきます。
取締役会での承認後、分割会社と承継会社間で吸収分割契約の締結を行います。分割契約書には会社法第757条・第758条に規定された事項の記載が必要です。
分割会社は吸収分割の効力発生日から6カ月間、吸収分割の内容に関する書類の備置が定められています。株主総会実施の2週間の間で株主に対する公告・通知のどちらか早い日、債権者に対する催告・公告のどちらか早い日を基準に作成します。
労働承継法に定められている「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」により、従業員に対して事前通知を行います。分割が行われる日時・事業内容・分割後の従業員の労働条件(就業場所や業務内容など)が通知内容となります。
吸収分割は、株主総会を開催し、特別決議で承認を得なければいけません。株主総会の通知とともに、分割を行う旨を株主に事前に通知しておきましょう。簡易吸収分割・略式吸収分割の場合は、株主総会の承認が不要です。
株式買取請求権について書面で通知を行うことで、分割に反対する株主の株式買取が可能です。
会社法により、債権者の保護を目的として一連の分割手続きについて異議を申し立てる権利が定められています。
分割会社・新設会社の両方で登記申請を行います。分割会社が手続きを行う際に必要なものは、株式を渡すために起こる資本減少の証明書類・代表者役員の印鑑登録証明書です。新設企業が手続きを行う際に必要なものは、定款・分割計画書・債権者保護手続きの書類などです。
場合によっては代表取締役における選定書・役員就任における承諾書・役員の印鑑登録証明書・分割会社で新設分割計画・決議を承認した際の株主総会議事録・株式増加に伴って資本金も増加するため会社法の規定に則って計上し直された資本金額の証明書面・本人確認書類なども必要になります。
吸収分割契約の効力発生日から2週間以内に行わなければならないため、時間的な制限には注意が必要です。
分割会社と新設会社両方で、効力発生日から6カ月間、各本店に事後開示書類を備置する必要があります。
吸収分割は、新設分割とは違い承継企業が既存会社であるため、その会社の株式の保有株主がすでにいます。しかし、会社分割では分割企業が承継企業または承継会社の株主に対して対価を支払うので、承継企業の株主の対価受け取りはなく、会計処理も発生しません。分社型・分割型に分けた会計・税務処理について解説します。
吸収分割分社型の会計・税務処理は、分割企業・承継企業ともに新設分割と同様の処理で問題ありません。承継企業については「逆取得」ではない場合に、分割によって譲り受けた資産・負債と、株式資本の差である「のれん」が発生するなど、細かい異点はあるので注意しましょう。
分割企業の株主と承継企業の株主も、新設分割分社型と同様で会計・税務処理は発生しません。
吸収分割分割型の会計・税務処理も、基本的に新設分割と同様の処理を行います。分割型・分社型ともに承継企業に既存株主がいますが、会計処理は取引主体ではないため本質的に変わりません。分割企業と承継企業・企業別株主の処理については以下の通りです。
分割企業は承継により分離した資産・負債を消滅させ、受け取った株式を借方に計上します。現物配当した株式は貸方へ計上し、減少した純資産は借方に計上します。これに対して承継企業は、譲り受けた資産・負債と、増加した純資産の計上を行いまし。
分割企業の株主は、承継企業の株式を受けとるため、両方の会計処理を行う必要があります。一方で、承継企業の株主は取引の主体ではないため、会計・税務処理の発生はありません。
新設分割と吸収分割の大きな違いは、新設企業に事業を譲渡するのか、既存企業に事業を譲渡するのかという点です。
新設分割の実施は、新設会社に事業を分割するため新たに許認可の取得が必要なケースが多く、事業分割後すぐには事業を始められません。しかし、新設会社の株主は分割会社の株主だけになるので、事業譲渡側の会社関係者が100%新設会社の株主になります。
一方で、吸収分割の実施は、既存会社に対して事業を譲渡するため許認可の再取得が必要ないケースが多く、事業譲渡後すぐに事業を始められます。しかし、すでに存在している会社に対して事業を承継するため株主が既にいるケースが多く、承継会社から株式を譲渡されたとしても、分割会社が100%の親会社になれない可能性が高いでしょう。
複数ある手続きをスムーズに進めることが会社分割成功の重要点となるでしょう。一つひとつの項目について理解し、流れに沿って行うためには専門的な知識や技術が欠かせません。
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会社分割の枠組みにある新設分割と吸収分割は、事業譲渡などのM&Aに比べて少ない資金での実行可能や、包括承継による各種手続きのシンプルさなどが利点といえるでしょう。しかし、労働契約において必要な手続きは留意事項が複数あり、提出期限を遵守しないと分割自体が無効になる恐れもあります。
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