M&Aのメリットとは?買い手・売り手それぞれのメリット・デメリットを徹底解説!

吸収合併の事例

M&Aは現代のビジネス環境において重要な経営戦略の一つで、単に会社を売買するだけでなく、企業の成長促進や事業承継の問題解決など、多様な目的で活用されます。

本記事では、M&Aにおけるメリットデメリットについて、【売り手】【買い手】【従業員】【手法別】それぞれの立場・視点から多角的に掘り下げていきます。

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M&Aのメリットは買い手と売り手双方にある

M&Aとは、企業の合併や買収を指し、事業の成長戦略や事業承継の選択肢として重要な役割を果たすものです。

M&Aのメリットは、買い手と売り手の双方に存在します。

売り手企業にとっては、後継者問題を解決して従業員の雇用を維持する手段となり、経営者の個人保証の解除や創業者利益の獲得が可能となります。

一方、買い手企業にとっては、短期間での事業規模拡大や新規市場への参入がしやすくなるメリットがあります。

ただし、M&Aには文化の統合や想定外の負債といったデメリットも存在するため、それぞれの立場からメリットとデメリットを十分に理解することが成功の鍵です。

上場企業や大手企業がM&Aを選択する背景

近年、上場企業や大手企業がM&Aを積極的に活用する背景には、ROE(自己資本利益率)経営への意識の高まりがあります。企業は内部留保を有効活用し、企業価値を向上させる手段として、新規事業への進出や事業ポートフォリオの再編を加速させています。

特に、海外の企業を買収してグローバル展開を図る動きや、技術革新に対応するためにスタートアップや中小企業を買収するケースが増加しています。

また、自社のコア事業に集中するため、ノンコア事業を売却するカーブアウトも選択肢の一つです。
これらのM&Aは、メリット・デメリットを慎重に比較検討した上で行われる戦略的な経営判断と言えます。

【売り手側】M&Aにおける売り手にとってのメリット5つ

【売り手側】M&Aのメリット・デメリット

M&Aは、会社や事業を譲渡する売り手にとって、後継者問題を解決する有力な手段であり、オーナー経営者が創業者利益を獲得する機会でもあります。

ここでは、売り手側のM&Aにおける具体的なメリットを5つご紹介します。

① 創業者利益(キャピタルゲイン)を獲得できる
② 後継者不在による事業承継問題を解決できる
③ 従業員の雇用を安定的に維持できる
④ 経営者の個人保証や担保を解消できる
⑤ 大手の傘下に入ることで事業の成長が期待できる

①創業者利益(キャピタルゲイン)を獲得できる

オーナー経営者がM&Aによって自社の株式を売却すると、その対価として創業者利益(キャピタルゲイン)を得ることができます。これは、長年かけて築き上げてきた会社の価値を現金化する有効な手段であり、経営から引退した後の生活資金や、新たな事業を始めるための元手として活用できます。

IPO(株式公開)も同様に創業者利益を得る方法ですが、厳しい審査や長い準備期間を要するため、全ての企業に適しているわけではありません。M&Aは、特定の買い手との交渉を通じて、比較的短期間かつ非公開のまま、会社の価値を個人資産として確定させることが可能です。

②後継者不在による事業承継問題を解決できる

多くの中小企業では、経営者の高齢化に伴う後継者不在が深刻な経営課題となっています。

親族や社内に適任者が見つからない場合、事業の継続が困難となり、黒字経営であっても廃業を選択せざるを得ないケースも少なくありません。

M&Aは、このような事業承継問題を解決するための有効な選択肢です。

第三者に会社や事業を譲渡することで、これまで培ってきた技術、ブランド、取引先との関係、そして従業員の雇用を守りながら、事業を次世代へと引き継ぐことができます。これにより、経営者は安心して経営の一線から退くことが可能となります。

③従業員の雇用を安定的に維持できる

後継者が見つからずに廃業を選択した場合、そこで働く従業員は職を失うことになります。M&Aによって事業が第三者に引き継がれる場合、通常、従業員の雇用契約も買い手企業にそのまま承継されます。

これにより、社員は生活の基盤を失うことなく、慣れた職場で働き続けることが可能になります。

また、買い手が資本力のある大手企業であれば、福利厚生の充実や給与水準の向上、キャリアアップの機会増加など、従業員の労働環境が改善される可能性もあります。長年会社を支えてくれた従業員の雇用を守れることは、経営者がM&Aを決断する上で重要な動機の一つです。

④経営者の個人保証や担保を解消できる

中小企業の経営者の多くは、金融機関からの借入に際して、個人として会社の債務を保証する「経営者保証」を提供していたり、自宅などの私有財産を担保に入れたりしています。

これは経営者にとって大きな精神的負担であり、万が一会社の経営が傾いた場合には、個人資産を失うリスクを伴います。M&Aが成立し、経営権が買い手に移転するタイミングで、これらの個人保証や担保は買い手側に引き継がれるか、あるいは解消されるのが一般的です。

これにより、経営者は長年の重圧から解放され、売却で得た対価を実質的な退職金として活用できます。

⑤大手の傘下に入ることで事業の成長が期待できる

M&Aによって大企業のグループに加わることで、売り手企業は自社単独では得られなかった経営資源を活用できるようになります。買い手が持つ豊富な資金力、広範な販売ネットワーク、高いブランド力、優れたマーケティングノウハウなどをレバレッジとして利用することで、事業を大きくスケールさせることが可能です。

例えば、新たな設備投資や研究開発を加速させたり、これまで取引のなかった地域や顧客層へアプローチしたりすることができます。子会社化された後も、自社の強みを活かしつつ、親会社のサポートを得ることで、より一層の事業成長が期待できます。

【売り手側】M&Aにおける売り手にとってのデメリット3つ

 M&Aによる従業員へのメリット・デメリット

M&Aは売り手にとって後継者問題の解決や創業者利益の獲得など多くのメリットがある一方で、いくつかデメリットも存在します。ここでは、M&Aにおける売り手側の主なデメリットを3つご紹介します。

① 希望する条件の買い手が見つからない場合がある
② 既存の取引先との関係性が変化する恐れがある
③ 従業員が経営方針の変更に反発する可能性がある

①希望する条件の買い手が見つからない場合がある

M&Aを成功させるには、自社の事業価値を適正に評価し、従業員の雇用維持や企業文化の尊重といった希望条件を満たす買い手を見つけ出す必要があります。

しかし、理想的な相手がすぐに見つかるとは限らず、買い手候補の探索が長期化するケースも少なくありません。特にニッチな業界や小規模な事業の場合、候補先の母数が限られます。
また、売却価格やその他の条件面で双方の希望が折り合わず、交渉が最終的に決裂することもあります。

M&A仲介会社などの専門家の支援を受けたとしても、必ずしも望み通りの相手とマッチングできるわけではないという点は、デメリットとして認識しておくべきです。

②既存の取引先との関係性が変化する恐れがある

M&Aによって経営者が交代すると、新しい経営方針のもとで取引条件の見直しやサプライヤーの変更が行われる可能性があります。特に、前経営者との個人的な信頼関係に基づいて継続してきた取引は、M&Aを機に解消されてしまうリスクがあります。

例えば、製造業や運送業など、特定の仕入先や販売先との連携が事業の根幹をなしている場合、取引関係の変化は事業運営に大きな影響を及ぼしかねません。買い手の方針によっては、長年の付き合いがあった取引先との関係が途絶え、サプライチェーンの再構築が必要になることも考えられます。

③従業員が新しい経営方針にの変更に反発する可能性がある

M&Aが成立すると、買い手企業の経営方針が導入され、人事制度、評価基準、業務プロセス、そして企業文化などが大きく変化することが一般的です。こうした変化に従業員が適応できず、不満や不安から反発を招くケースは少なくありません。

例えば、地域に根差した経営を続けてきた薬局が、全国展開する大手チェーンの傘下に入り、効率性を重視する運営方針に転換した場合、従来のやり方に愛着を持つ従業員のモチベーション低下や離職につながる恐れがあります。経営統合後のプロセスが不十分だと、組織の一体感が失われ、生産性が低下するリスクがあります。

【買い手側】M&Aにおける買い手にとってのメリット5つ

【買い手側】M&Aのメリット・デメリット

M&Aは、買い手企業にとって事業の成長を加速させ、競争優位性を確立するための有効な手段です。
新規事業への参入や事業の多角化、節税対策など、様々なメリットが期待できます。この見出しでは、買い手企業がM&Aを行うことによって得られる具体的なメリットについて詳しく解説します。

① 事業の成長スピードを加速させられる
② 新規事業参入や事業の多角化を実現できる
③ 節税対策ができる
④ 競争優位性を強化できる
⑤ シナジー効果が得られる

①事業の成長スピードを加速させられる

自社で新規事業を立ち上げる場合、人材採用や育成、技術開発、設備投資、販路開拓などに多くの時間とコストがかかります。M&Aを活用すれば、すでに関連する事業基盤を持つ企業を買収することで、これらのプロセスを大幅に短縮し、事業展開のスピードを格段に速めることが可能です。

例えば、会社分割のような手法を用いれば、必要な事業部門だけを切り出して獲得することもできます。これにより、市場の変化に素早く対応し、競合他社に先んじて優位なポジションを築くことができます。

「時間を買う」という観点において、M&Aは非常に効果的な成長戦略です。

②新規事業参入や事業の多角化を実現できる

自社にノウハウがない未経験の分野へ新たに参入する際、M&Aは有効な手段となります。その分野で実績のある企業を買収することで、専門知識を持つ人材、技術、許認可、顧客基盤などを一度に手に入れることができ、参入障壁を大きく下げることが可能です。

これにより、事業の多角化を推進し、単一事業に依存する経営リスクを分散させられます。また、海外の企業を買収することで、現地での事業基盤を確立し、グローバル市場への進出を円滑に進めることも期待できます。自社単独での展開に比べて、時間とリスクを抑えながら新たな市場を開拓できる点は大きなメリットです。

③節税対策ができる

買い手企業がM&Aを行うメリットの一つに、節税効果が期待できる点があります。

買収対象の企業が過去の事業年度で赤字を計上しており、「繰越欠損金」を保有している場合、一定の要件を満たせば、買い手企業はこの繰越欠損金を引き継ぐことができます。

繰越欠損金は、M&A後の自社の黒字と相殺することが可能なため、課税対象となる所得金額を圧縮し、結果として法人税の納税額を抑える効果があります。ただし、繰越欠損金の引き継ぎには税法上の細かいルールがあるため、実行にあたっては税理士などの専門家と十分に協議することが不可欠です。

④競争優位性を強化できる

M&Aは、市場における自社の競争優位性を高めるための強力な戦略です。

同業他社を買収することで市場シェアを直接的に拡大し、業界内での発言力を高めることができます。
また、事業規模が拡大することで「規模の経済」が働き、原材料の共同購入によるコスト削減や生産効率の向上が期待でき、価格競争力を強化できます。

さらに、独自の技術や特許、強力なブランドを持つ企業を買収すれば、自社の製品やサービスの付加価値を高め、他社との差別化を図ることが可能です。これにより、持続的な成長基盤を構築し、市場でのリーダーシップを確立することにつながります。

⑤シナジー効果が得られる

M&Aにおけるシナジー効果とは、複数の企業が統合されることで、それぞれが単独で運営されていた時の力の合計を上回る、相乗効果が生まれることを指します。

具体的には、互いの販売網を活用して売上を伸ばす「販売シナジー」、生産拠点や管理部門を統合してコストを削減する「コストシナジー」、両社の技術やノウハウを融合させて新たな製品やサービスを開発する「開発シナジー」などが挙げられます。

これらのシナジー効果を最大限に引き出すことができれば、企業価値を飛躍的に向上させることが可能です。M&Aの成否は、このシナジーをどれだけ実現できるかにかかっていると言っても過言ではありません。

【買い手側】M&Aにおける買い手にとってのデメリット4つ

M&Aによる顧客へのメリット・デメリット

M&Aは企業が事業を拡大し競争力を強化するための有効な手段ですが、買い手(譲受側)にとっては、様々なリスクやデメリットが伴うことも理解しておく必要があります。以下では、買い手側のデメリット4つを解説します。

①想定したシナジー効果が得られないリスクがある
②優秀な人材の離職につながる可能性がある
③買収後に簿外債務などの問題が発覚することがある
④「のれん」の減損により財務状況が悪化する恐れがある

①想定したシナジー効果が得られないリスクがある

M&Aの計画段階で算出されるシナジー効果は、あくまで事前の予測であり、実際にその通りの効果が得られる保証はありません。両社の企業文化の違いによる従業員の対立、業務プロセスの統合の遅れ、顧客の離反など、様々な要因によって期待した成果が出ないリスクがあります。

例えば、ブランドイメージの異なる企業同士が統合した結果、既存顧客が離れてしまうケースも考えられます。不動産業のように特定の地域情報や人脈が強みの事業では、統合が逆にその強みを削いでしまう可能性もあります。

事前の綿密な分析と、買収後の丁寧な統合プロセス(PMI)がなければ、シナジーの実現は困難です。

②優秀な人材の離職につながる可能性がある

M&Aにおいて、買い手が最も価値を置く経営資源の一つが、売り手企業の持つ優秀な人材です。

しかし、M&A後の経営方針の変更、待遇への不満、あるいは新しい企業文化への不適応などを理由に、事業の中核を担うキーパーソンが離職してしまうリスクは常に存在します。特に、創業オーナーのカリスマ性や特定の技術者のスキルに事業が大きく依存していた場合、その人物の流出は買収した事業の価値を著しく損なうことになりかねません。

人材の定着を図るためには、買収交渉の段階から丁寧なコミュニケーションを重ね、統合後のキャリアパスや処遇を明確に示すことが重要です。

③買収後に簿外債務などの問題が発覚することがある

M&Aのプロセスでは、買い手が売り手企業の財務や法務のリスクを精査するデューデリジェンス(DD)が行われます。

しかし、このDDをもってしても、財務諸表に記載されていない「簿外債務」や、将来発生する可能性のある「偶発債務」を完全に見つけ出すことは困難な場合があります。例えば、未払いの残業代、将来の訴訟リスク、不動産の土壌汚染などがこれに該当します。

買収後にこれらの問題が発覚した場合、買い手は想定外の金銭的負担を強いられることになります。DDの精度を高めることはもちろん、契約書に表明保証条項を設けるなど、法的なリスク対策を講じることが不可欠です。

④「のれん」の減損により財務状況が悪化する恐れがある

M&Aにおいて、買収価格が売り手企業の純資産額を上回る場合、その差額は「のれん」として会計上、買い手企業の資産に計上されます。この「のれん」は、売り手企業が持つブランド力や技術力、顧客基盤といった目に見えない価値を反映したものです。

しかし、買収した事業の収益性が当初の計画を下回った場合、この「のれん」の価値を切り下げる「減損処理」を行わなければなりません。のれんの減損は特別損失として計上されるため、買い手企業の当期利益を大幅に圧迫し、財務状況を一気に悪化させる要因となり得るリスクがあります。

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【従業員】M&Aにおける従業員にとってのメリット・デメリット

 M&A成功事例・失敗事例

M&Aは企業経営に大きな影響を及ぼしますが、そこで働く従業員にとっても自身のキャリアや生活に深く関わる重要な出来事です。M&Aによって、従業員の処遇や労働環境が向上する可能性もあれば、新たな環境への適応が求められるデメリットも存在します。

ここでは、従業員にとってのM&Aのメリットとデメリットについてご紹介します。

M&Aにおける従業員にとってのメリット

M&Aは、従業員にとって自身のキャリアを見つめ直し、新たな可能性を広げる機会になる点がメリットになります。

・労働条件の改善
買い手企業がより大きな組織である場合、給与水準の向上や福利厚生の充実など、労働条件の改善が期待できます。

・キャリアアップの機会増加
事業拡大に伴い新たなポストが生まれることで、昇進や責任ある立場への抜擢といったキャリアアップのチャンスも増えるでしょう。

・スキルアップの機会
自社だけでは関われなかった大規模なプロジェクトへの参加や、買い手企業が持つ高度な技術・ノウハウを習得する機会も得られます。

・雇用の維持
経営不振に陥っていた企業の従業員にとっては、M&Aによって雇用が守られること自体が最大のメリットとなります。

M&Aにおける従業員にとってのデメリット

上記メリットがある一方で、M&Aは、従業員にとって大きな環境変化を伴うため、デメリットも少なくありません。

・新しい経営方針や企業文化に馴染めない
仕事に対するモチベーションが低下することがあります。

・人事評価制度が変更される
これまでの評価がリセットされたり、キャリアプランの見直しを迫られたりすることも考えられます。

・組織再編によって異動や転勤を命じられる
希望しない部署への異動や転勤を命じられる可能性があります。

・リストラの対象となるリスク
重複する部門の統合などを理由に、リストラの対象となるリスクもゼロではありません。
このような将来への不安や環境の変化がストレスとなり、離職を選択する従業員が出ることもあります。

【手法別】M&Aの手法別のメリット・デメリット

M&Aには、株式譲渡や事業譲渡、会社分割など、さまざまな手法があり、それぞれ異なる特徴を持っています。M&Aの目的や対象とする事業の状況によって最適な手法は異なり、税務や法務の取り扱いも大きく変わるため、慎重な検討が不可欠です。

本見出しでは、代表的なM&A手法それぞれのメリットとデメリットについて詳しく解説します。
① 株式譲渡
② 事業譲渡
③ 会社分割
④ 株式交換・株式移転
⑤ 新株引受け
⑥ 合併

①株式譲渡のメリット・デメリット

【メリット】
株式譲渡は、個人株主が保有する株式を譲渡するだけで済むため、法的な手続きが比較的簡素である点がメリットです。また、会社を法人格ごと引き継ぐため、許認可の再取得や従業員との雇用契約の再締結が不要であることも挙げられます。

【デメリット】
買い手は、譲渡企業の資産だけでなく、簿外債務などの潜在的な負債やリスクも全て承継することになります。そのため、譲渡する企業のリスクを詳細に調査するデューデリジェンスが非常に重要となります。

②事業譲渡のメリット・デメリット

【メリット】
事業譲渡は、会社全体ではなく特定の事業を選択して譲渡する手法です。買い手企業は、引き継ぐ資産や負債の範囲を限定できるため、簿外債務などの不要なリスクを回避し、必要な事業だけを承継できる点が大きなメリットです。売り手企業にとっても、不採算事業のみを切り離して主力事業に集中するなど、柔軟な事業再編が可能となります。

【デメリット】
デメリットとして、個別の契約が必要となるため、資産、負債、契約などを一つずつ移転する手続きが煩雑になりがちです。また、事業に必要な許認可は、原則として買い手企業が再度取得しなければなりません。この点に注意し、譲渡する事業の範囲を慎重に見極める必要があります。

③会社分割のメリット・デメリット

【メリット】
会社分割は、特定の事業に関する権利義務を包括的に承継する手法です。従業員との労働契約や取引先との契約関係を個別に結び直す必要がなく、スムーズに事業を引き継げる点がメリットと言えます。売り手企業は、承継会社の株式を対価として受け取ることも可能です。

【デメリット】
デメリットとしては、株主総会の特別決議が必要となることに加え、債権者保護手続きが求められる場合があるなど、会社法上の手続きが複雑になる点が挙げられます。また、企業が特定の事業を承継する際、譲渡の対象となる事業の範囲やデメリットを慎重に見極める必要があります。

④株式交換・株式移転のメリット・デメリット

【メリット】
株式交換や株式移転は、企業が他の企業を子会社化する際に、買収資金として現金を用意する必要がない点が大きなメリットです。譲渡する企業の株式を、買い手企業の株式と交換することで、完全親子会社関係を構築することが可能になります。

これにより、買い手企業は手元資金を温存しながら、迅速に事業規模を拡大できます。また、譲渡する側の企業の株主は、交換によって買い手企業の株主となることで、間接的に統合後の企業成長の恩恵を受け続けられます。

【デメリット】
株式交換や株式移転では、買い手企業の株主構成が変化する可能性があり、既存株主の持株比率が低下する恐れがある点がデメリットとして挙げられます。これは、新たな株式を発行して対価とするため、株式の希薄化が生じるためです。

また、子会社化される側の企業においては、親会社となる企業の経営方針に従う必要があり、従来の独立性が失われることもデメリットとなり得ます。企業価値の評価や交換比率の設定を誤ると、既存株主に不利益が生じるリスクもあります。

⑤新株引受けのメリット・デメリット

【メリット】
新株引受けは、企業が新株を発行し、特定の第三者に株式を割り当てることで資金を調達する方法です。この手法により、発行企業は返済義務のない資本を得られるだけでなく、引受先企業との間で事業上の提携を強化できる点がメリットです。

引受先企業にとっては、比較的少ない出資で相手企業との資本関係を築き、事業連携をスムーズに進められる利点があります。これにより、両社の連携を深め、共に事業を成長させる機会につながります。

【デメリット】
新株引受けのデメリットとして、新株が発行されることで既存株主の持株比率が低下し、1株当たりの価値が希薄化する点が挙げられます。これは、発行する株式数が増加することによって生じる問題です。

また、新株引受人はあくまで一部の株式を取得するに過ぎないため、発行会社の経営権を完全に掌握することはできません。この点は、新株引受を通じて企業の経営を完全にコントロールすることを目的とする場合には、デメリットとなるでしょう。

⑥合併のメリット・デメリット

【メリット】
合併のメリットは、複数の会社が完全に一体となることで、迅速な意思決定や経営資源の効率的な配分が可能になり、強力なシナジー効果を発揮しやすい点です。被合併会社の技術やノウハウをスムーズに承継し、事業基盤を強化できることも大きな利点と言えます。

【デメリット】
一方、デメリットとしては、人事制度や情報システム、企業文化の統合に多大な時間と労力を要することが挙げられます。また、被合併会社の権利義務を全て引き継ぐため、簿外債務などの潜在的リスクも抱え込むことになります。企業が特定の事業を承継する際、デメリットを慎重に見極める必要があります。

M&Aの成功事例と失敗事例を紹介

M&Aのメリットまとめ

M&Aは大きな成果をもたらす可能性がある一方で、失敗のリスクも伴います。成功事例と失敗事例を学ぶことは、自社がM&Aを検討する上で重要な示唆を与えてくれます。

成功の背景にはどのような戦略があったのか、失敗の原因は何だったのかを具体的に知ることで、M&Aを成功に導くためのポイントが見えてきます。ここでは、大企業と中小企業、それぞれの視点から具体的な事例を紹介します。

【大企業】M&A成功事例

通信業界においては、ソフトバンクが日本テレコムやイー・アクセス、ボーダフォンなどをM&Aにより買収した事例があります。ソフトバンクはその後も着実な成長を遂げ、2016年にはイギリスの半導体企業ARMを3.3兆円で買収しています。

今やECモール最大手として君臨する楽天が、国内の信販会社を買収し楽天カードをスタートさせたのは2004年から2005年にかけてのことです。2008年にはネット銀行の先駆けであったイーバンクを買収し、楽天銀行を設立しました。そして2021年3月、日本郵政と業務提携。1,499億円ほどの出資を受け、配達網を利用したマーケティングや共同の物流拠点の構築などを進めています。

世界に名だたる企業の歴史を振り返ると、それぞれにM&Aを繰り返し、着実に基盤を固め規模を拡大してきたことがうかがい知れます。

【大企業】M&A失敗事例

国内製薬第3位の第一三共は、2008年にインドの大手ジェネリック医薬品企業ランバクシー・ラボラトリーズを買収しました。しかしながら、TOB(株式公開買付)終了後にFDA(アメリカ食品医薬品局)より品質問題を指摘され、30品目以上がインドからの輸入禁止となる事態を招きます。これにより2014年、ランバクシー・ラボラトリーズの全ての株式を、インド第2位の製薬会社であるサン・ファーマシューティカル・インダストリーズに譲渡する羽目となりました。

パナソニックが松下電器産業と呼ばれていた1974年、北米大陸への市場拡大のためにアメリカ企業のテレビ事業を買収しましたが、ブランドを使用できず失敗に終わります。その後、1990年にはアメリカの映画製作・配給会社であるユニバーサル(当時MCA)を61億ドルで買収します。ユニバーサルの業績は好調でしたが、松下電器の業績が振るわなくなり1995年にはカナダの大手醸造会社シーグラムへ売却することとなりました。

外部からの指摘や本業の不振によりM&Aが失敗した例です。

【中小企業】M&A成功事例

愛知県を中心に施設常駐警備事業を展開する株式会社ライフ・コーポレーションは後継者不足により事業承継に悩んでいましたが、M&Aにより同じ愛知県の人材サービス業日輪へ譲渡することを決定します。長期戦の多いM&Aにおいて、マッチングからわずか1カ月での契約成立は異例のスピードです。人材業と警備業の融合による大きなシナジーが期待されます。

国内に7店舗を有し本場インド料理店サムラートを運営する有限会社スニタトレーディングは、チェーン展開するカレーの専門商社ゴーゴーカレーグループへ事業譲渡。事業成長と事業拡大という、互いのニーズが合致しすみやかなM&A契約成立に至っています。

【中小企業】M&A失敗事例

中小企業のM&Aは、交渉段階での情報漏洩や対応の不誠実さなどを理由に契約不成立・失敗を招くことがあります。

製造業の会社が経営者の高齢化と後継者不足を理由にM&Aを相談したところ、4カ月ほどで買い手企業が見つかり基本合意に至りました。ところが、最終契約の前に売り手製造会社の経営者が社内外の人間にM&Aの情報を漏らす事態が発生。これによって破談、M&Aは契約不成立となりました。

また、ある有名な運送会社がM&Aによる事業承継を相談したところ、すぐに買い手企業とのマッチングが実現。けれども売り手企業であるはずの有名運送会社が書類を提出しなかったり、後から条件変更を求めたりと不誠実な対応を続けたため、買い手企業の信頼を失い破談となった事例があります。

M&A相談ならウィルゲートM&A

ウィルゲートM&Aでは、15,100社を超える経営者ネットワークを活用し、ベストマッチングを提案します。Web・IT領域を中心に、幅広い業種のM&Aに対応しているのがウィルゲートM&Aの強みです。M&A成立までのサポートが手厚く、条件交渉の際にもアドバイスを受けられます。

一般的にM&Aの成約までは6ヶ月〜1年ほどの期間を要しますが、ウィルゲートでは平均で4ヶ月、最短1.5ヶ月での成約実績、40億円以上での成約実績もあります。完全成功報酬型で着手金無料なので、お気軽にご相談ください。

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まとめ

M&Aは、買い手と売り手の双方に、事業成長の加速や事業承継問題の解決など多くのメリットをもたらす経営戦略です。
しかし、期待通りのシナジーが得られない、企業文化の衝突、簿外債務の発覚など、潜在的なデメリットも存在します。

M&Aを成功させるためには、これらのメリットとデメリットを深く理解し、自社の目的に合った最適な手法を選ぶことが不可欠です。
また、デューデリジェンスによるリスクの徹底的な洗い出しや、統合後のプロセスであるPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)を計画的に進めることが成功の鍵となります。

高度な専門知識や経験も必要なため、M&Aの検討を進める際は信頼できるM&A仲介会社等プロ相談するのがおすすめです。

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ウィルゲートが目指すのは、売り手様、買い手様、双方に納得感のあるM&Aです。M&Aがお客様の目的やご希望に合致しない場合、無理にM&Aをすすめることは絶対にありません。

M&Aで思わぬ失敗をしないためにも、まずは一度、ウィルゲートM&Aにご相談いただければ幸いです。
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