成長可能性が見込める魅力的で革新的な商品やサービスに取り組むスタートアップ企業に対して、成長戦略を積極的に進める企業からのM&Aのニーズは非常に高まっています。
また、スタートアップのイグジット戦略として、M&Aの注目も高まっています。
本記事では、スタートアップ企業のM&Aを成功させるためのポイントを、成功事例を交えて詳しく解説します。
\成約例や支援の特徴・流れを紹介/
スタートアップ企業とは、創業から間もない会社のことです。革新的な技術や新しいサービスを提供するなど、短期間で急成長している企業のため、大企業や投資家からの注目も集めています。
M&Aは合併と買収のことであり、スタートアップのM&Aとは、革新的な技術やサービスを提供する新しい会社を、他の企業などが買収することを指します。
スタートアップ企業は、先ほども述べた通り新しいサービスや技術を提供する、創業間もないながらも急成長を果たしている、もしくは目指している企業のことです。
革新的な、という点がポイントであり、これまでにない技術やサービスを提供するために、必ずしも安定した経営が可能というわけではありません。
なぜなら、新しいものを提供することは、資金がかかるだけでなく、すぐには受け入れられない可能性もあるからです。
スタートアップ企業のイグジット戦略には、大きく分けてM&AとIPOの2種類があります。イグジット戦略とは出口戦略のことであり、会社をはじめからイグジットするための戦略ともいえます。
ベンチャー企業にとって資金提供は重要であり、資金提供を受けるためには事業計画をはっきりさせておく必要があります。
イグジット戦略を葬式から明確にしておくことで、出資者を納得させることができ、希望の額を集められる可能性が高くなります。ここでは、スタートアップ企業のイグジット戦略について詳しく解説します。
スタートアップのM&Aは単なる買収や企業の乗っ取りというわけではなく、成長戦略として考えられています。スタートアップは資本金の回収をする必要があり、大手企業は成功した、もしくは成功しつつある新しいビジネスモデルを取り込むことができるからです。
M&Aによって買い手側も売り手側も大きく成長できるチャンスが来ることもあり、成長戦略として注目を集めています。
IPOもまた、スタートアップ企業でよく使われるイグジット戦略の一つです。企業が初めて一般に株式を公開することであり、「新規上場」とも呼ばれています。
IPOは成功するまでに時間がかかるものの、M&Aとは違って経営者が持っている株を失うことがなく、そのまま経営に携わることができます。ただし、M&Aは事前に金額がわかり、投資家や創始者の利益が確定するのも早いですが、IPOは株式を上場してみなくては利益が確定しません。
大きな成功をする場合もありますが、その反面失敗するリスクも少なくないでしょう。日本ではスタートアップ企業が出口戦略としてIPOを選ぶことが多いですが、アメリカではM&Aでイグジットするケースが多くなっています。
スタートアップ企業がイグジット戦略としてM&Aを選ぶ件数は、近年増加傾向にあります。2021年にはスタートア企業のM&Aは143件にも上り、IPOの件数を大きく上回っています。(出典:EY「スタートアップM&A動向調査 2021」)
とくにグローバル企業の参入が増えて以降、スタートアップ企業のM&Aが大型化する案件も増えてきています。日本政府や経済産業省の諸改革によるスタートアップ企業のM&A促進やグローバル化が後押しされているのも、ポイントといえるでしょう。
そのため、スタートアップ企業のM&Aはイグジット戦略の一つとして、今後も増加する可能性が高いとされています。
スタートアップのM&Aは、売り手側にとってメリットだけでなくデメリットもあります。ここでは、スタートアップのM&Aにおける売り手側のメリットとデメリットについて詳しくみていきましょう。
スタートアップのM&Aにおける売り手側のメリットは、以下の通りです。
メリットが大きいからこそ、多くのスタートアップ企業はイグジット戦略としてM&Aを選択しています。
スタートアップのM&Aにおけるメリットの一つ目は、達成がスピーディーという点です。M&Aは、売り手側と買い手側の合意さえすれば、M&Aに着手してからわずか1か月程度で成立した例もあるほどです。
IPOの場合は、上場するために純資産額や利益額など、さまざまな要件を満たさなければなりません。一方でM&Aは買い手となる企業さえ見つけることができ、相手が提示した条件に合意すれば、そのまま契約が成立します。スピーディーで手続きも難しくはないため、ごく短期間で成立させることができるのです。
スタートアップのM&Aにおけるメリットの二つ目は、事業のさらなる成長が期待できるという点です。いくら革新的な技術やサービスを提供できているとしても、創立したばかりの企業では資本金が少ない場合も多く、思うように事業展開ができない場合もあります。
しかし、M&Aによって買い手側の販路や売買に関するノウハウ、資金を活用することができるようになるため、これまでよりも大きく成長できるチャンスがきます。買い手側の知名度を活用することもできるため、単独で事業を展開するよりもスピーディーに事業の拡大ができるでしょう。
スタートアップのM&Aにおけるメリットの三つ目は、経営が思わしくなくてもチャンスがあるという点です。M&Aと並ぶスタートアップのイグジット戦略ですIPOは、赤字であったり利益がそこまで上がっていなかったりする場合は、実行できません。
新規で上場するにはそれなりの条件があり、IPOのチャンスすらつかめないスタートアップ企業も少なくないからです。
しかし、M&Aであれば、赤字経営の場合でも買い手側が魅力を感じればチャンスはあります。買い手側が欲している新しい技術や今後の成長を見込める高いポテンシャルなどがあれば、価値を感じてもらえるからです。
スタートアップ企業にとって、M&Aは決してメリットだけというわけではありません。以下のようなデメリットもあるため、きちんと把握してよく検討する必要があります。
それぞれどのようなデメリットなのかを、詳しくみていきましょう。
スタートアップのM&Aにおけるメリットの一つ目は、経営権を譲渡しなくてはならないという点です。そのため、イグジット戦略としてM&Aを選択すると、会社の経営に口を出すことができなくなってしまいます。ただし、引き続き一定の株を保有し、代表取締役として会社に残り共に成長していくというようなスキームも可能です。詳しくは、M&Aの仲介会社やアドバイザリーに相談してみましょう。
\成約例や支援の特徴・流れを紹介/
逆に会社から離れたい場合でも、ロックアップといって経営サポートのためにそのまま数年間会社に残らなくてはならない場合もあります。
また、会社から離れたとしても数年間は競合するような事業を起こすことは禁止されてしまう場合がほとんどです。そのため、イグジット後も自分で事業を継続したい場合は、M&Aが向かない可能性もあります。
スタートアップのM&Aにおけるメリットの二つ目は、顧客離れや人材流出の恐れがあるという点です。M&Aは、大手企業に買収されるということであり、買収した側の企業文化に合わせなくてはならなくなります。
マニュアルも整備されて、これまでは個人の裁量で決定できていたことも、決められなくなってしまう恐れもあるでしょう。そのため、自由な社風がいい、新しいことに挑戦することにやりがいを感じているなどといった理由で入社してきた人は、会社を離れてしまう可能性もあります。
また、顧客にとってもブランドが変わってしまうことで離れていってしまう可能性があるでしょう。買収した企業の経営理念には賛同できない、という場合も考えられます。
スタートアップのM&Aにおけるメリットの三つ目は、売却額が少ない可能性がある、という点です。M&Aは、必ずしも売り手側の意向だけで金額が決められるわけではありません。
IPOであれば、しっかりとした下準備をして満を持して上場するわけですから、上場ができれば大きな利益につながる可能性は高いといえるでしょう。そもそも将来性を見込まれた、高い価値があると判断された企業歯科、IPOがかなわないため、当然といえます。
一方でM&Aは、買い手側との合意が必要になるため、買収金額を値下げされてしまう場合も考えられます。特に赤字経営や思ったように利益が出せていない場合は、注意が必要です。
とはいえ、中には何億円もの金額でM&Aが成功している事例も多くあるため、将来性がある、もしくは革新的な技術力があるという場合には高額でも売却も可能です。
スタートアップのM&Aは、当然ですが、売り手側だけでなく買い手側にもメリットとデメリットがあります。売り手側は、買い手側のメリットとデメリットも考慮して買い手を見つける必要があります。ここでは、買い手側のメリットやデメリットもチェックしておきましょう。
スタートアップのM&Aにおける買い手側のメリットは、以下の通りです。
メリットが感じられるからこそ、買い手側は大きな資金を投じてM&Aを実行します。ここでは、スタートアップのM&Aにおける買い手側のメリットについて詳しくみていきましょう。
スタートアップのM&Aにおける買い手側のメリットの一つ目は、既存の事業を強化できるという点です。買い手側は、シナジー効果の得られる企業を買収することで、自社製品の競争力を高めたり、これまで以上に販路を拡大したりといった効果が望めます。
既存事業の弱点をゼロから補完しようと思うと、新しい部署を立ち上げたり人材を一から育成したりとコストも時間もかかってしまいます。
しかし、既存事業の弱点を補完できるような企業を買収することで、ある程度のコストはかかるものの、既に基盤ができている企業であれば手間や時間はかかりません。時間をかけることなく簡単に既存事業の強化ができる点は、買い手側にとって大きなメリットといえるでしょう。
スタートアップのM&Aにおける買い手側のメリットの二つ目は、新規事業に参入できるという点です。新しい事業を立ち上げたいと感じていても、一から会社を立ち上げるには資金や人材が必要です。
しかし、既にある企業を買収すれば、何もない状態から始めるよりも低コストで新規事業への参入ができ、その後も事業の拡大を図ることが可能になるでしょう。
スタートアップのM&Aにおける買い手側のメリットの三つ目は、斬新なアイデアを獲得できるという点です。自社だけでは思いつくことができない革新的なアイデアや技術を持った会社を買収することによって、自社の事業を拡大させるためのシナジー効果を得ることが可能です。
スタートアップ企業はこれまでにない技術やサービスを提供していることも多く、自社との相乗効果が大きな企業を選ぶことで、より自社を成長させることができるでしょう。
スタートアップのM&Aは、買い手側にとってもメリットばかりがあるわけではありません。M&Aをすることによって、以下のようなデメリットがあることも、把握しておく必要があります。
それぞれどういったことなのか、詳しくみていきましょう。
スタートアップのM&Aにおける買い手側のデメリットの一つ目は、費用に見合った効果がない場合もあるという点です。高額を支払って企業を買収したからといって、必ずしも狙った効果が得られるわけではありません。
狙っていた取引先が取引を打ち切ってしまうことも考えられます。そのため、事前に取引先などにはきちんと話をして、理解を得るなどの努力も必要になるでしょう。
スタートアップのM&Aにおける買い手側のデメリットの二つ目は、優秀な人材が流出してしまうリスクがあるという点です。
買収前の会社だからこそ入社した、立ち上げたばかりの企業でもっと新しいことに挑戦してみたかったなどといった人材は、買収して大手企業の傘下になってしまうと離職してしまう恐れがあります。
そのようなことにならないためには、早めに社員に通達し、フォローしていくことが大切です。社員の要望を聞き、きちんと話し合いの場を設けることで離職者は減らすことができるでしょう。
スタートアップのM&Aにおける買い手側のデメリットの三つ目は、買収・企業統合に時間がかかるという点です。合意さえできれば話を早く進めることも可能ですが、逆にいうとなかなか合意に至らなければ買収に時間がかかってしまいます。
また、2つの会社の統合には、さらに時間が必要となるでしょう。とくに社員の意識を切り替えるには、手間も時間もかかります。そのため、M&Aをするなら早めに統合の準備を進めておくことが大切です。
スタートアップのM&Aには、多くの成功事例があります。買収のための費用も億を超えることもあり、スタートアップのM&Aを狙っているなら、気になるところです。ここでは、2014年からのM&Aを、年代別に紹介していきます。
株式会社LABITは、会社設立3年目で株式会社ジョブダイレクトとのM&Aに合意しています。株式会社LABITは「すごい時間割」という、大学生向けの時間割共有アプリを提供していた会社です。
設立は2011年で、わずか2年程度でユーザーが10万人を超え、さらに翌年の2014年にはユーザー数が倍の20万人に増加しました。講義の登録数もどんどん伸びて順調に業績を伸ばしていた時期に、事業譲渡がされました。
その理由として、「すごい時間割」はユーザーの増加が見込める時期が年にわずか2回しかなく、時間も資本もない立ち上げたばかりの会社では限界があると判断されたからです。そのため、M&Aで大手企業の資本力をもとに時間をかけて拡大させていく方針になりました。
参照:https://fundbook.co.jp/column/understanding-ma/student-entrepreneurs/
株式会社リジョブは、会社設立から5年の2014年に株式会社じげんに株式を譲渡しています。株式会社リジョブは、美容関係に特化した求人メディアであり、設立後は順調に業績を伸ばしていました。
株式会社じげんに移行した後は、美容特化のサイトのほかに介護に特化した求人サイトも作られ、多くの人に利用されています。
創業者は次の事業を立ち上げるためにM&Aを選択し、ロックアップ期間がない提案をしてきたため、株式会社じげんの契約に応じています。スピーディーな決断が次へとつながった事例といえるでしょう。
参照:https://fundbook.co.jp/column/understanding-ma/student-entrepreneurs/
株式会社ゲームエイトは、設立からわずか1年程度で株式会社GUNOSYへ株式譲渡しています。株式会社ゲームエイトとは、今では月間4200万人が利用するゲーム攻略メディアの「Game8」を運営する会社です。創業者は前述した株式会社Labitの共同代表取締役であった西尾健太郎氏です。
M&Aに応じたのは、会社のさらなる成長を求めてのことであり、2015年に株式会社GUNOSYの子会社となっています。株式会社GUNOSYにとっても、ゲーム関連の顧客を取り込むなどシナジー効果が発揮され、どちらも大きな成長が可能となりました。
参照:https://fundbook.co.jp/column/understanding-ma/student-entrepreneurs/
Candleは、創業から2年程度でクルーズのM&Aに応じています。Candleはファッションや美容関係の女性向けのまとめが集められた女性向けメディア・動画を運営しています。
業績は順調に伸びていましたが、新しく大きなことにチャレンジするべくクルーズの買収に応じています。クルーズ側は事業の拡大を狙っての買収でしたが、金額が12.5億円と大きなこともあって、話題になった1件です。
参照:https://www.utokyo-ipc.co.jp/column/startup-ma/
ふらりーとは、設立から約1年半程度でオイシックス・ラ・大地がM&Aをした会社です。家庭料理のシェアリングサービスを提供していて、主に主婦などをターゲットとしていました。
もともとふらりーとの行っていた事業がオイシックス・ラ・大地が参入したいと考えていた新規事業と一致していたこともあり、シナジー効果を期待して買収を行ったとのことです。買収金額は公表されていませんが、M&Aで完全子会社化をしている案件です。
参照:https://www.utokyo-ipc.co.jp/column/startup-ma/
ラクサス・テクノロジーズは、2006年に創業された会社ですが、2015年に新しく開発された「ラクサス」と呼ばれる独自のビジネスモデルが注目を浴び、2019年にワールドに買収されました。
スタートアップというには創立からそれなりの年数がたっているものの、新しいビジネスモデルの開発からは約4年程度でM&Aをされている会社です。
「ラクサス」は毎月定額を支払うことでブランドバッグをレンタルできるシステムのことであり、買収をしたワールドはアパレル大手であるため、シナジー効果を期待してのことです。実際に、資金力を背景にカバンの調達支援などをおこなうことを発表しています。また、株式譲渡価格は43億円もの金額になっています。
オーテは、人気の高いナンプレやクロスワードなどといったパズルを解くとポイントを貰え、懸賞に応募できるというシステムを開発したスタートアップ企業です。
アプリで手軽にパ図を楽しめるだけでなく、懸賞でさまざまな景品が当たるかもしれないというわくわく感がヒットしました。
2014年に設立されたオーテがアイモバイルに買収されたのは、設立から5年後の2019年です。オーテはアイモバイルの子会社になることによって、アイモバイルの持つ広告運用のノウハウを活用し、さらに事業を発展させたいと考えています。
スフィダンテは、2009年に設立された会社で、ミクシィによる買収は2019年に行われています。スマホフォトプリントの画質の維持などに関して高い技術力を持っているスタートアップです。
ミクシィは家族で写真を共有できるアプリなどを展開しているため、買収は双方のサービスをより向上させることができるとして、ミクシィが完全子会社化することとなりました。スキームは株式譲渡となっていますが、その価格は公開されていません。
株式会社Nagisaは、アプリに関して高い企画力を持っていることが魅力のスタートアップでした。開発に関しても高い技術を持っていて、漫画アプリや西友の動画などを配信していました。
買収したのは株式会社メディアドゥであり、出版市場の拡大を目標に、電子書籍に関する事業にも取り組んでいます。そこで、株式会社NagisaのM&Aに踏み切りました。
漫画配信アプリは、コロナ禍で外出が制限されている時期に大きく需要を伸ばしていたことも関係しているでしょう。株式会社Nagisaの事例のように、M&Aの価格には、社会情勢が大きく関係する場合もあります。
参照:https://sogyotecho.jp/startup-ma/
株式会社aiforce solutionsは、企業がAIを活用できるようにするためのソフトウェアなどを提供していた会社です。2018年に設立され、3年程度でM&Aを行っています。
買収したAI inside株式会社もまた、AIを普及させることを命題としている会社であり、事業が競合しているだけでなく、同じようなビジョンを描いている会社でもあります。
考え方が似ていて将来に対するビジョンも似通っていることから、高いシナジー効果が期待できる事例です。株式会社 aiforce solutionsの技術力を活かした新事業の提供も始まり、スタートアップのM&Aで成功した事例の一つといえるでしょう。
参照:https://sogyotecho.jp/startup-ma/
\成約例や支援の特徴・流れを紹介/
スタートアップM&Aを成功させた創始者の中には、学生でありながら事業を立ち上げた人も多くいます。学生起業は、決して簡単なことではありません。
技術力や斬新なアイデア、実行力、決断力なども必要になってくるでしょう。ここでは、学生起業をしてスタートアップを成功させた3人の有名人について詳しくみていきましょう。
古川健介氏は、株式会社nanapiの創始者です。株式会社nanapiとは、「nanapi」という暮らしの情報メディアを運営している会社です。2009年にサービスを開始して以来、多くの人が利用し、翌年には「nanapi」モバイル版・「nanapiワークス」などもリリースされました。
古川健介氏は、大学受験を浪人していたころから匿名掲示板を開設するなどしており、早稲田大学在学中には会社メディアクリップの社長に就任していました。
株式会社nanapiは2014年にKDDIに株式譲渡されていますが、nanapiの事業を継承しているSupership株式会社の取締役に就任することで株式譲渡を行いながらもそのまま継続して運営に携わっています。大学在学中から精力的に活動し、成功した人物といえるでしょう。
参照:https://fundbook.co.jp/column/understanding-ma/student-entrepreneurs/
有安 伸宏氏は、起業家兼エンジェル投資家です。大学在学中に起業して以来、4つの事業を立ち上げ、3社のM&Aに成功しています。慶應義塾大学環境情報学部の卒業後に立ち上げたコーチ・ユナイテッドは、2007年に創業し、2013年にクック・パッドに売却されています。
コーチ・ユナイテッドは成長している会社であると同時に将来性もあったため、10億円という価格が付きました。その後、2015年にはTokyo Founders Fundを共同設立しています。
企業家としてだけでなく、エンジェル投資家としても有名であり、年間15社程度に投資をしている人です。起業して成功した会社の数も多いですが、それだけではなく、その経験を活かして投資家としても成功している事例といえます。
参照:https://fundbook.co.jp/column/understanding-ma/student-entrepreneurs/
柴田 陽氏も起業家でありエンジェル投資家です。大学生の時に起業を経験していて、卒業後の2010年には株式会社コードスタートを創業しています。株式会社コードスタートは、バーコード価格比較アプリ「ショッピッ!」などのアプリで話題になった会社です。
また、並行して青山花壇も設立し、どちらもM&Aに成功しています。その後、株式会社スポットライトを創業したものの、わずか2年程度で楽天に売却しています。
さらに2016年には株式会社クラウドポートを創業していることから、企業に関する多くの斬新なアイデアを抱えていることが魅力の人物といえるでしょう。
株式会社コードスタート・株式会社スポットライトともにスマホアプリの開発で成功している会社です。青山花壇も通販サイトであり、インターネットに強いことがうかがえます。
参照:https://fundbook.co.jp/column/understanding-ma/student-entrepreneurs/
スタートアップだからといって、かならずしもすべての会社がM&Aに成功するわけではありません。実際に、スタートアップのM&Aをしたものの、失敗した事例も多くあります。スタートアップのM&Aを成功させるためには、以下の3つのポイントが重要です。
それぞれどういったことなのか、スタートアップのM&Aを成功させるためにも、詳しく把握しておきましょう。
スタートアップのM&Aを成功させるためには、タイミングが重要です。例えば、株式会社Nagisaはコロナ禍で需要が一気に増し、そのことをきっかけとしてM&Aを成功させました。社会情勢を見極め、より必要とされているタイミングを見極めることで、高値をつけることができるという事例です。
そのほか、企業が成長しきったときよりも、あえて成長途中である方が良いでしょう。なぜなら、これからまだまだ伸びしろがあるというほうが、買い手側の企業にとっては魅力的に映るからです。
これからまだまだ大きく成長する可能性、将来性に高値を付けることが可能です。既に成長しきっていては新たな挑戦をすることは難しく、買い手側も慎重にならざるをえません。
そのため、より会社が魅力的に思える時期を逃さず、売却先を見つけることがM&Aを成功させるポイントといえます。
スタートアップのM&Aを成功させるためのポイントとしては、シナジーが期待される企業への売却というのもあります。シナジーとは、いわゆる相乗効果のことです。売り手側の会社の技術力やアイデアを買い手側の商品やサービスにより活かせることが重要です。
シナジー効果により、買い手側が低コストで事業の拡大ができれば、いうことはありません。また、買い手側に一方的にシナジー効果が期待できるというものではなく、売り手側にもメリットがあることが重要です。
売り手側の商品やサービスに、買い手側の広告ノウハウや資金力が活用できることで、今よりももっと成長できてこそ、スタートアップのM&Aの価値があるからです。また、企業には相性もあるため、相性の良い会社との提携がより重要となってきます。
シナジー効果は相性の良さがあってこそより発揮されるものであり、例えばブランドバッグの定期サービスとアパレル会社のM&Aなど相性の良い会社同士であれば双方の成長が見込めるからです。
そのため、売却先は慎重に見極めなくてはなりません。双方にとってより良い効果をもたらす売却先を見つけることが、M&Aを成功させるポイントといえるでしょう。
スタートアップのM&Aを成功させるためには、従業員への配慮も欠かせません。従業員への配慮をないがしろにしてしまうと、優秀な人材の流出につながり、結果的にM&Aが失敗に終わってしまう可能性があるからです。
日本ではM&Aに良いイメージを持っていない場合もあり、会社が売られるということで不安を感じる従業員も少なくありません。そのため、売却が決まっているのに何の説明もなければ、より不安をあおってしまうことにもなりかねません。
会社の売却が決まっているのであれば、特に高い地位にある人には早めに方針を話し、不安がないことを伝えましょう。詳細な説明があることで、従業員の不安や不満を抑えることができます。
また、売り手側は買い手側に対して、従業員が不用意にリストラされたり待遇面で不利になったりしないように、交渉をする必要があります。
スタートアップがM&Aで失敗することもあります。しかし、成功するためのポイントがあるように、失敗するときには失敗する原因があります。
そのため、失敗しないためには、失敗する原因を知っておくことが重要です。スタートアップがM&Aが失敗する原因には、以下のようなものが考えられます。
それぞれどういったことなのかを、詳しくみておきましょう。
スタートアップがM&Aで失敗する原因として考えられるのは、適切なタイミングで決断できないという点です。成功のポイントでも述べたとおり、スタートアップのM&Aを成功させるためには、タイミングが重要です。
「本当に売却するべきなのか」「売却先をどうやって選ぶべきなのか」など、迷っているうちに適切なタイミングを逃してしまうことも少なくありません。スタートアップのM&Aは、赤字であっても業績が伸びている場合は成功する確率も高いです。
独特のアイデアや独自のシステムがあり、起業当初で採算がとれていないだけ、ということも考えられます。実際に、スタートアップ企業は起業当初は赤字が続くことも珍しくありません。
そのため、「赤字続きで買ってくれないだろう」などといって売却先を探すことをやめてしまうと、売り出す適切なタイミングを逃してしまうこともあります。
イグジット戦略を成功させるために必要なのは、タイミングを見極める力と決断力です。失敗する場合の多くは、適切なタイミングを見誤り、売る決断ができない場合といえるでしょう。
スタートアップがM&Aで失敗する原因の一つは、買い手側と売り手側の相性が良くないという場合です。いくら注目のスタートアップ企業であっても、買い手側と売り手側にシナジー効果が期待できないのなら、意味がありません。
買い手側が新規参入を狙っている事業であればよいですが、全く畑違いの事業なら、ノウハウが全くないため、逆に双方の成長を疎外させてしまう恐れもあるでしょう。そのため、売り手側は買い手側の事業をしっかり理解して、相性がよくシナジー効果が期待できる会社を売却先に選ぶ必要があります。
スタートアップがM&Aで失敗する原因に、買収後の変化に対応できないというものがあります。買収するということは、買い手側の企業の文化が入ってくるということでもあります。業務の工程も変わり、マニュアルが買い手側に合わせて整備されることもあるでしょう。
事前にきちんとした説明などがない場合は、売り手側企業の従業員がそういったことに対応できず、優秀な従業員が離職してしまう原因にもなります。従業員が離職してしまうと、売り手側企業の魅力ともいえる独自の企画力や高い技術も失われてしまうかもしれません。
そうなれば、スタートアップのM&Aは失敗といえるでしょう。そのようなことにならないためにも、従業員への適切なケアが大切です。
\成約例や支援の特徴・流れを紹介/
スタートアップのM&Aを成功させるには、いくつかの課題があります。
ここでは、課題と対策について詳しく解説します。課題に対して適切な対策をすることによって、スタートアップのM&Aを成功させることができるでしょう。
スタートアップのM&Aにおける課題の一つは、人材の不足です。日本ではM&Aに対する知識を持つ専門的な人材が不足しがちです。M&Aを行うには、売り手企業に対する目利きが重要になります。
売り手側の企業との相性は良いか、どの程度プラスになるのか、投資した分を回収できるのかなどといったことを総合的に判断する必要があるからです。
しかし、日本では企業をした経験のある人は少なく、こういった目利きができる人材を抱えている企業は多くありません。そのため、M&Aの前に目利きのできる人材不足の解消が大きな課題となっています。
人材不足といった課題を解消するには、専門家の採用・人材の育成が重要です。人材を育成するにはコストと時間がかかるため、すぐにでも可能な専門家の採用を実践している企業もあります。
日本にはいまだに企業を経験したことがある人は少ないため、海外からそういった人材を招へいする場合もあります。専門家と一緒に仕事をすることによって経験値を貯めることで、自社の人材を育成することもできるからです。
特に欧米では人材の流動性が高く、日本とは違って企業を経験している人も少なくありません。そのため、M&Aを行う際に目利きができ、M&Aを成功に導くことができます。もちろん常に外部の人間に頼ることはできないため、同時進行で人材の育成をすることが重要です。
スタートアップのM&Aにおける課題に、PMIが適切ではない、というものがあります。PMIは、M&Aの後に統合効果を最大にするために必要な作業であり、PMIが適切でなければM&Aも失敗してしまいます。
なぜなら、M&Aが行われた後には、売り手側も買い手側も同じく混乱しがちだからです。混乱を最小限に抑え、うまく統合できなければ最悪業績が悪化してしまうことも考えられます。そのため、PMIの構築が適切でないというのは、M&Aをする上でかなり重要な課題となっています。
PMIが適切でないために混乱が起きてしまうのであれば、対策として考えられるのは、PMIを具体的に構築するということになります。
PMIを具体的に構築することで、売り手と買い手の相乗効果を最大限に引き出し、より事業を拡大させることもできるでしょう。また、社員にとってもM&Aの必要性を理解することで、組織の成長を促すこともできます。
M&Aによって起こる混乱やリスクなどを予測し、事前に対策を立てておくこともできるでしょう。PMIを具体的に構築することができれば、M&Aを成功させることもできます。
M&Aの大きな課題に、買収後の人材の流出があります。例えば、買収後に取引先を失うことは避けたいとそちらにばかり注力してしまうと、従業員の不満に気づけない場合があります。会社が買収されるということは、会社の体勢が一新されるということです。
人事評価制度や雇用条件などが変わる場合もあるでしょう。福利厚生や、会社内での過ごし方にも影響が出てくるかもしれません。そういった部分から不満や反感が募っていき、従業員のモチベーションの低下につながってしまいます。
また、モチベーションが低下したまま放置しておくと、離職してしまうことも考えられます。買収後に買収を試みるほど独特のアイデアや技術を生み出した社員の流出は、なるべく避けたいものです。
買収後の人材の流出をなくしたいのであれば、買収前からビジョンの共有を図ることが大切です。異なる企業文化をうまく統合し、組織内で摩擦が起きないように注意します。
特に運営方法や人事評価制度、細かいところでは社内での過ごし方などについて、できるだけ買収前の企業文化を考慮したものにすることが大切です。事前にしっかりと準備をし、社員に不満や不安を広げないように注意することで、M&Aを成功させることができるでしょう。
M&Aで使われるスキームには、以下の種類があります。
上記のスキームの中で、スタートアップのM&Aによく使用されるのは株式譲渡です。株式譲渡とは、売り手側が保有する株式を買い手側に譲渡するものです。
もちろん無料で譲るのではなく、売り手側は株式の代わりに買い手側から金銭を受け取ることになります。他の手法に比べると手続きが簡単であり、資金の帰属などの観点から、多くのスタートアップのM&Aでは株式譲渡が使用されます。
スタートアップM&Aを成功させるには、コツを抑えることが重要です。たとえば、スタートアップのM&Aを行うにはタイミングがかなり重要で、適切な時に即決できる人が成功することができます。
また、企業が成長途中であるときに買い手側に提案することがおすすめです。なぜなら、買い手側の企業はスタートアップ企業に将来性を感じることができるからです。
売り手と買い手の相性もきちんと見極めておきましょう。シナジー効果が得られる企業であれば、なお良い相手といえます。また、従業員には事前に説明をしておき、買収後に混乱しないようにしておくのも、スタートアップM&Aを成功させるのに抑えておきたいコツです。
本記事では、スタートアップ企業とM&Aについて詳しく解説してきました。スタートアップM&Aを成功させるには、大手企業や投資家が興味を持つような独創的なアイデアや高い企画力が必要です。
また、買い手を見つける確かな目利きと、適切なタイミングで売却できる決断力が重要です。資金力に乏しいスタートアップ企業は豊富な資金力を持つ大企業に買収されることで、より高みを目指すことができます。
スタートアップのM&Aは、成功している事例も数多いため、スタートアップのイグジットを考えているならぜひ、M&Aも検討してみてください。もし専用の人材が不足しているなら、ウィルゲートに依頼してみるのも一つの手段です。
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