事業譲渡の仕訳方法とは?会計処理・税務処理・注意点も紹介

事業譲渡の仕訳方法とは?会計処理・税務処理・注意点も紹介

この記事ではこれからM&Aを検討しようとしている会社・経営者の皆さんにM&A手法の1つである事業譲渡、譲受の仕訳方法についてまとめました。

会計処理や税務処理、のれん発生時の注意点などあわせて見ていきましょう。

事業譲渡とは

事業譲渡とは

M&Aにおける事業譲渡とは、会社がその事業(保有する資産、土地、商標権など含む)を売却する手法のことをさします。経営そのものを譲渡する株式譲渡とは違い、事業譲渡は事業の一部からでも売却できます。そのため、経営者が会社の方針等を変えない限り、事業譲渡後も売り手企業の独立性、ビジネスの実態など変わることはありません。

つまりM&A手法の事業譲渡は、会社の存続や意義など失われることなく、会社が長年培ってきた社風や文化を後の世代に引き継げるのです。

事業譲渡の仕訳方法・会計処理

事業譲渡の仕訳方法・会計処理

売り手企業が事業譲渡を行うもしくは買い手企業が事業譲受を行う際に、会社の事業または資産、土地などを仕訳し、会計処理を行わなければなりません。

仕訳とは簿記で貸方、借方を区別して書き込むことです。仕訳をすることで、会社の利益、損益が明白になり会計処理を行えます。日常的に取引等があった場合仕訳をしておかないと、確定申告ができないといっても過言ではありません。

事業譲渡も仕訳、会計処理が必要になります。譲渡する事業、財産の内容や状況によって仕訳方法は異なります。

事業譲渡の対象となる「事業」の中には有形・無形の財産や土地・人材・債務・商標権・特許権・建物・機械装置・車両運搬具などさまざまな対象があります。

M&A手法で事業譲渡、事業譲受を考えている方は基本的な仕訳方法と会計処理を行えるようにしておきましょう。

譲渡(売り手)企業の仕訳方法・会計処理

一般的に事業譲渡の際は、簿価ではなく時価で譲渡価格を決められます。しかし、譲渡する資産は簿価で計上されるので、時価総額から簿価総額を差し引いた金額が「事業譲渡益」となります。

売り手企業の場合、借方には現金預金(譲渡価格)、貸方には売却した資産や事業譲渡益を記載しましょう。なお、消費税に関しては貸方に「仮受消費税」を記載し、借方に同額の現金預金を記載します。

ただし、土地は課税対象ではありません。

譲受(買い手)企業の仕訳方法・会計処理

買い手企業の場合、簿価ではなく時価で資産を譲受するので資産の金額はすべて時価で記載していきます。借方に取引対象の資産を、貸方に取引価格をそれぞれ計上します。つまり、売り手企業の仕訳とは反対になるよう仕訳しなければなりません。

消費税に関しても、借方に「仮受消費税」と記載し、貸方に同額の現金預金を記載するため売り手企業と反対になります。

土地の仕訳も売り手企業と同様に課税対象にはなりません。

のれんが発生する場合の仕訳方法・会計処理

のれんが発生する場合の仕訳方法・会計処理

事業譲渡においてのれんとは、帳簿上にはない無形資産や将来的なキャッシュフローを加味した帳簿外の企業価値を表すものです。実際の事業譲渡では、「のれん(営業権)」を含めるのが一般的です。

もしかすると、帳簿外の企業価値という言葉に大きな落とし穴があるかもしれません。

のれんが発生する場合の仕訳はどのようになるのか売り手側、買い手側の両方の仕訳方法、そして先ほど述べた大きな落とし穴を解説します。

譲渡(売り手)企業の仕訳方法・会計処理

のれんが発生する場合、のれん分は事業譲渡益に加算されます。例として時価8億円の譲渡価格からのれんが発生し、実際には10億円で譲渡されたとします。その差額2億円が帳簿外の企業価値としてのれん分になります。その差額2億円を借方の事業譲渡益に加算します。

そのため、のれんが発生した場合の仕訳では、借方に譲渡価格をそのまま現金預金に記載し、貸方の事業譲渡益にのれん分の差額が記載されます。

のれんは消費税の課税対象になります。のれんによって消費税額も大きく変わるので注意が必要です。

譲受(買い手)企業の仕訳方法・会計処理

売り手企業の場合、事業譲渡益にのれん分が加算されましたが、買い手企業の場合、新たな勘定科目を追加しなければなりません。

先ほどと同じで時価8億円からのれん分を足した10億円で実際の取引が行われたとします。その場合、貸方の現金預金は取引額と同じ10億円と記載してください。そして、借方に新たな勘定科目として「のれん」を追加し、のれん分2億円を記載します。

のれんは資産価値が年々減少していく償却資産です。そのため、費用計上するための会計処理が必要になります。一般的にのれんの会計処理方法は定額法で行われます。のれんの資産額を償却期間で割って、毎年一定額を償却します。

仕訳の仕方は借方に「のれん償却費」貸方に「のれん」と記載し、最長20年減価償却が行えます。

負ののれんが発生する場合の仕訳方法・会計処理

負ののれんが発生する場合の仕訳方法・会計処理

のれんが発生する場合、すべてが売り手企業のプラスになるわけではありません。売り手企業がプラスになるのれんのことを「正ののれん」といいます。ですが、反対に譲渡価格が時価総額を下回る場合があります。そのことを「負ののれん」といいます。

これが上記で述べた、大きな落とし穴です。負ののれんは計上では売り手側は損をして、買い手側が得をするという構図になります。

負ののれんは偶発債務や簿外債務などが発覚したときに発生します。負ののれんが発生した場合、譲渡価格が簿価を下回る金額になると仕訳方法がより複雑化してしまうので注意が必要です。

例を挙げて、負ののれんが発生した場合の仕訳方法を解説します。

譲渡(売り手)企業の仕訳方法・会計処理

負ののれんが発生した場合、正ののれんが発生した場合と同じく、売り手企業はのれん代について処理する必要はありません。負ののれんは時価総額からのれん代を差し引いた金額が譲渡価格になります。なので、負ののれんは正ののれんとは反対に事業譲渡益が減少してしまいます。

例として時価総額8億円の譲渡価格から負ののれんが発生し、7億円の取引が行われたとします。するとその差額1億円分事業譲渡益が減少してしまうのです。

なので、負ののれんが発生してしまうのは、譲渡側にとって計上的にはマイナスになってしまいます。

譲受(買い手)企業の仕訳方法・会計処理

負ののれんが発生した場合、譲受側では時価総額よりも低い取引価格で事業を譲受できます。仕訳方法は正ののれんと違い、のれんを貸方に時価総額との差額を仕訳します。

先ほどと同じ例で行くと、時価総額8億円から負ののれんが発生し7億円の取引を行って譲受した場合、1億円を負ののれんとして貸方に記載します。

ここで1つ注意点があります。先ほど正ののれんではのれん代を減価償却として処理しましたが、負ののれんでは「特別利益」として一括で処理します。負ののれん分の利益が出ていると考えればよいでしょう。

事業譲渡で気をつけたい税務上の留意点

事業譲渡で気をつけたい税務上の留意点

事業譲渡では会計だけでなく、税務に関しての知識も必要です。会計と税務は関連しているようで、一致しない部分があり注意が必要です。よりお得に事業譲渡を行うために、会計だけでなく事業譲渡に関する税務の知識も深めていきましょう

法人税の税務処理

事業譲渡によって得られた対価で利益が生まれた場合、差額が課税所得となり法人税が課税されます。反対に譲渡価格が簿価総額を下回る場合には課税所得はマイナスとなります。利益額の計算は「譲渡価格-譲渡資産の簿価=事業譲渡益」になります。

のれんの税務処理

譲渡価格と簿価総額との間に差額がある場合、会計上ではのれんと呼びます。ですが、税務上では「資産調整勘定」または「差額負債調整勘定」と呼ばれます。この2つは60カ月に渡って償却していきます。

資産調整勘定や負債調整勘定を計上する際は資産調整勘定の金額の当初計上額(または差額負債調整勘定の金額の当初計上額)×その事業年度の月数/60(カ月)を用いて計算します。

減価償却資産の税務処理

事業譲渡によって減価償却資産に当てはまる固定資産を得た場合、残りの使用可能年数を見積もって耐用年数を計算します。その中でも見積もりが難しいケースもあります。

法定耐用年数の経過した資産について次の計算式で求めます。

「(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%」

また、法定耐用年数の全部を経過している資産の耐用年数の計算式は次の通りです。

「法定耐用年数×20%」

このように、法定耐用年数によって計算式を当てはめれば、見積もりを計算できます

消費税の税務処理

事業譲渡では株式譲渡と異なり、譲渡対象の資産に対して消費税が課税されます。つまり売り手企業が消費税を納税しなければならないのです。消費税額は、課税対象になる資産の売却価格に消費税率をかけて求めるので、あらかじめ課税対象と非課税対象をよく把握しておくことが重要です。非課税対象は土地や有価証券などがあげられます。

ちなみに土地や有価証券がなぜ非課税対象になるのか、その理由は通常非課税資産を持っているだけで事業を展開することはできないからです。

納税の義務は売り手企業だけにかけられるので、一見売り手企業だけが損をするかのように思えますが、取引の際に買い手企業に譲渡対象の消費税に相当する金額を請求すれば問題はありません。うまくいけば、より手持ちを多く残せるチャンスになるかもしれません。

企業買収・M&A相談ならウィルゲートM&A

企業買収・M&A相談ならウィルゲートM&A

いよいよ事業譲渡に踏み切ろう、M&Aを本格的に検討したいという方の中には「でもどこで、どうやって、誰に相談すればいいのだろう」と思った方もいらっしゃるかもしれません。

不慣れなことに取り組む場合は、その道のプロにお任せするのが安全かつ安心です。ただし、信頼できるプロに相談するとしても、最低限の知識をもって臨んだ方が賢明ですので、自身でも準備は怠らないようにしましょう。

事業譲渡を検討している方におすすめなのが、ウィルゲートのM&Aサービスです。幅広いジャンルの事業譲渡をサポート可能ですが、中でもIT・Web事業領域のM&Aを得意としています。

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事業譲渡の仕訳方法 まとめ

事業譲渡の仕訳方法 まとめ

事業譲渡を行う際、会社の事業または有形・無形の資産など、しっかり調査して取り組む必要があります。

  • 土地
  • 人材
  • 債務
  • 商標権
  • 特許権
  • 建物
  • 機械装置
  • 車両運搬具

事業譲渡の対象になる上記の資産の中には、課税されるもの、非課税のものがあるので、売却時には注意が必要です。

自分が思っている価格で売却するためには、正ののれんを発生させることが重要です。正ののれんを発生させるには事業譲渡前に帳簿外の会社の付加価値を改めて見直し、負ののれんが生じないよう戦略をたてる必要があります。

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