【2022年】SES業界のM&A動向・事例・売却相場を解説

【2022年】SES業界のM&A動向・事例・売却相場を解説

SES事業とは、自社のエンジニアを派遣し客先と委託契約を行う事業のことで、人材が不足していることから、M&Aが活発な業界です。

本記事では、SES会社のM&A動向や事例などについて説明します。M&Aを検討している方は参考にしてみてください。

SES業界の概要

SES業界の概要

本章では、SES業界の市場規模やビジネスモデルなどについて解説します。

SES企業とは

そもそもSESとは、System Engineering Serviceの略であり、エンジニア派遣サービスのことを指します。SES企業は自社に在籍するシステムエンジニアを、エンジニアの人材不足やスキル不足で人手を要している企業に派遣します。

SESでは、派遣契約ではなく、委託契約を結んでエンジニアを派遣します。派遣契約の場合には、派遣先企業の指揮命令下で業務を行う形態を取りますが、委託契約では派遣されたシステムエンジニアは派遣元のSES企業の指揮命令下で業務を行います。

SES業界の市場規模や市場動向

SES事業を含むITサービスの2020年の市場規模は、5兆6,834億円とされています。この数字は、コロナ禍の影響も受け前年比2.8%減となっていますが、今後は業績を回復し、2025年には6兆4,048億円まで伸びると予想されています。(参考:IDC Japan

SES業界を含むITサービス業界は、ほかの業種と同じく人材不足が課題の1つとなっています。エンジニアやプログラマーは知識やスキルを有した人に限られているため、優秀な人材を確保する方法として、M&Aが選択肢の1つとなっています。

SES業界のビジネスモデル

SES業界のビジネスモデルとしては、主に以下の2つが挙げられます。

  • 自社エンジニアの常駐
  • パートナー企業やフリーランスとの協業

自社エンジニアの常駐

自社社員であるエンジニアを派遣先であるクライアント企業に常駐させる形式です。給与などの固定費は高くなりますが、安定したサービスの質を保ちやすい特徴を持つビジネスモデルです。

パートナー企業やフリーランスとの協業

この形式は、自社のエンジニアではなく、パートナー企業のエンジニアやフリーランスのエンジニアに、クライアント企業に常駐してもらうというものです。派遣するエンジニアに支払う報酬は外注費として計上します。自社エンジニアを常駐させる場合に比べ、固定費が減らせることが強みで、今後増えていく可能性が高いビジネスモデルです。

SES事業のメリットとデメリット

SES業界では、人材不足が課題となっているため、参入のハードルは低く需要が高いという点がメリットといえるでしょう。ほかにも、自社でサービスを企画し、開発して利益を上げられなくても、他企業に技術者を派遣すれば利益が得られる点もメリットといえます。また、営業力が足りておらず、大型案件の元請けをするのが難しかったとしても、SESであれば案件を受けやすく、実績を作りやすいでしょう。

反対に、SES事業を行うデメリットとしては、自社で1からサービスを作り出すわけではないため自社の特徴を出しづらい点や、実績を積んでスキルアップした人材が転職したりフリーランスになったりすることが多い点がデメリットといえるでしょう。

SES事業で実績を積んで経営をある程度安定させ、社員のスキルが伸びた時点で自社で新規事業を立ち上げ、自社開発を始めるケースもあります。

SES企業が増加傾向にある理由

SES企業の数は年々増えています。その理由としては、ITサービスへの需要が高まっていることや、システムエンジニアなどの人材が不足している点があげられます。また、システムエンジニアになりたいという人も、まずはSES企業で実績を積んでスキルを磨き、その後転職や独立をするという選択をする人が増えています。このような背景があるため、SES企業は増加傾向となっています。

SES企業の一例

実際にどのようなSES企業があるのか、SES企業をいくつか紹介します。

富士ソフト

富士ソフトは、売上2,300億円を超えるSES企業です。1970年設立の独立系ITソリューションベンダーで、AIやIOTのほか、ロボット開発など幅広い事業を行っている会社です。東証一部上場をしており、グループ連結の従業員数は2020年時点で15,000名以上にのぼります。

BrandingEngineer

BrandingEngineerは、フリーランス向けのSES事業であるMidworksというサービスを運営している会社です。Midworksは、フリーランスにもかかわらず正社員並みの保障がついているという点が特徴のサービスで、コンサルタントがプロジェクト参画後までサポートしてくれます。

また、取り扱う案件は中小企業から大手企業のものまでさまざまで、フリーランスエンジニアは自分に適した案件を選べるという点が強みとなっています。

クラウドワークス

クラウドワークスは、フリーランス向けのサービスであるクラウドテックを運営し、SESを行っています。クラウドテックでは、リモートワークや週3勤務の案件などがあり、自身が希望する条件にあった仕事を選べます。キャリアアドバイザーが在籍しているため、不安な点は相談できるほか、web上で作業報告ができる点も魅力の1つです。

SES業界のM&A最新動向

SES業界のM&A最新動向

IT・ソフトウェア業界のM&A件数は、2019年に135件あり、2017年から3年連続で前年の数を上回っています。日本経済新聞によると、M&Aの売り手の3分の1がIT企業だったとされています。

今後も、事業拡大や人材確保のためのM&Aは増加していくと予想されています。そのため、M&AによるSES企業の売却を考えているのであれば、買い手が見つかりやすいといえるでしょう。

SES会社のM&Aが増えている要因としては、以下のようなものが考えられます。

  • 人材確保のためのM&A
  • 大規模開発におけるコスト削減のためのM&A
  • 法改正の影響によるM&A

それぞれの要因について詳しく説明します。

人材確保のためのM&A

SES業界を含むIT業界全体では、特に若年層の技術者が少ないなど、人材不足が課題となっています。課題解決のためには、多数の技術者が所属しているSES企業を買収するという方法が効果的だと考えられています。SES企業を買収することで、エンジニアやプログラマーなどの技術者を囲い込めるからです。

今後も人材不足が続くと予想されているため、人材確保を目的としたM&Aは活発に行われるでしょう。

大規模開発におけるコスト削減のためのM&A

例えば、海外の大手企業などの案件では、プロジェクトの規模が大きく、システム開発に多額の資金が必要です。さらに、システムのアップデートのために費用の支払いが必要となります。

そのようなケースでは、有力なSES企業をM&Aによって買収し、自社でシステム管理や運用の体制を整えることで、コストを削減するという戦略が取られることがあります。

法改正の影響によるM&A

国内のSES企業が、他のSES企業を買収するケースも増えています。要因としては、労働者派遣法の改正が挙げられます。

労働者派遣法が改正されたことで、2018年9月30日をもって、労働派遣事業が許可制となり、許可がない企業は派遣業を行えなくなりました。労働派遣事業の許可を得るためには、資産面などで条件が設けられており、この条件を満たせないSES企業がM&Aによって会社の継続を目指すケースが増えました。

参考:厚生労働省HP

SES企業をM&A・買収・売却するメリット

SES企業をM&A・買収・売却するメリット

SES企業を買収・売却するメリットには、どのようなものがあるでしょうか。買い手側、売り手側それぞれで考えられるメリットについて解説します。

SES企業を買収するメリットとは

自社がSES事業やシステム開発の事業を行っている場合、SES企業を買収することで、優秀なシステムエンジニアやプログラマーを確保し、人材不足を解消できます。

元々SES事業を営んでいる場合には、自社に在籍する技術者が増えれば、クライアント企業に派遣できる要員も増えることになるため、売上を伸ばせる可能性が高まるでしょう。また、これまで外部のIT企業に依頼しシステム開発を行ってもらっていた企業は、SES企業を買収し技術者を自社で雇うことで外注費を削減できるため、開発のコストを下げられます

SES企業を売却するメリットとは

SES企業を売却するメリットとしては、主に以下の3点が考えられます。

  • 後継者不足の問題解消
  • 会社売却による利益獲得
  • 経営の安定化

後継者不足の問題解消

特に中小企業に多く見られる問題が、後継者不足です。2020年度の中小企業白書によれば、経営者の高齢化や後継者不足が原因で休業や廃業をする中小企業のうち、半数以上が黒字であるとされています。経営者が引退を考えたとき、後継者が不在であれば、その会社が例え黒字であっても廃業するしかない状況に陥るのです。

会社を廃業する場合には従業員は働く場を失うことになりますが、M&Aによって会社を売却できれば、会社は存続し、新しい経営者に事業を承継できます。

会社売却による利益獲得

SES企業を売却する場合、その対価として会社の規模や業績に応じた額の現金を得られます。獲得した現金は、新しい事業を始める元手にしてもよいですし、老後の資金にしてリタイアするという選択肢もあります。廃業をする場合と違い、費用がかからないという点は、M&Aによる会社売却のメリットといえるでしょう。

経営の安定化

SES企業を売却した後は、買い手企業のグループ企業として傘下に入れるケースもあります。買い手は売り手よりも大きな規模の会社であることが多く、相手企業のブランド力や資金力、ネットワークを活用できます。

そのため、自社のみで事業を継続する場合と比較して、より事業を加速させたり、安定的に事業を運営が可能になったりする可能性が高まります。その結果として、M&A前に比べて経営を安定化させ、社員を雇い続けることも可能となるでしょう。

SES企業のM&Aにおいては、いきなり社長が変わるケースは少なく、M&A後もしばらくの期間は社長として経営を続けるケースが多いため、買い手によって社員の待遇面が悪くなることは少ないといえます。SES事業を上手く運営するためには社員の協力が必要だと考えている買い手企業も多いため、M&A後に社員の待遇が改善されるケースも多く見られます。

SES企業の売却金額の相場

SES企業の売却金額の相場

SES企業の売却相場は、どのように算出されるのでしょうか。一般的には、企業の純資産と営業利益によって大体の相場が計算されます。しかし、この価格は簡易的なものであり、実際のM&Aの現場では、それ以外にも企業価値などの要素も加えて交渉を行い、売却価格が決められます。

簡易的な売却相場の算出方法

実際のM&Aでの売却価格を決める際には、企業価値の算出のためにバリュエーションと呼ばれる企業価値評価が行われます。しかし、バリュエーションを行う前でも、簡易的に売却相場を算出できます。

具体的には、時価純資産にのれん代とも呼ばれる営業権を加えることで算出します。一般的に営業権とは、2~5年分の営業利益を足した金額となります。

例えば、時価純資産が1億円で、年間の営業利益の平均が2000万円の会社の場合、時価純資産の1億円に営業利益の2000万円の2~5年分を加えることになるため、その会社の売却相場は約1億4000万円~2億円と算出できます。

株式譲渡と事業譲渡で計算式を変えるという考え方もあり、その場合、株式譲渡では、時価純資産に2~5年分の営業利益と役員報酬を加える方法で相場を算出します。事業譲渡では、売却資産の金額に2~5年分の事業利益を加えて相場を算出します。

また、SES企業のM&Aにおいては、売却する会社で抱えているエンジニアなどの技術者の人数と、その価値単価を基準とするケースもあります。

実際の売却金額の算出方法

この章では、M&Aを行う際の最終的な売却金額を決定する際に重要な、企業価値や株主価値とはどのようなものか解説します。

企業価値・株主価値とは

これまで延べてきた通り、実際のM&Aの現場では、企業価値や株主価値などを基にして算出します。企業価値や株主価値と似た言葉として事業価値という言葉もあります。まずはこれらの言葉の意味を整理しておきましょう。

企業価値とは、企業全体の経済的価値の合計額のことを指します。株主価値は、株主に帰属する経済的価値のことを指し、自己資本価値とも呼ばれます。事業価値とは、企業価値から余剰資金や遊休資産などの事業外資産を差し引いた金額のことを指します。

企業価値や株主価値の算出方法

企業価値や株主価値を評価することを、バリュエーションといいます。バリュエーションを行う主な方法には、インカムアプローチ、コストアプローチ、マーケットアプローチの3つがあります。それぞれの方法でメリットやデメリットなどが異なるので、適切な方法を選択しましょう。

インカムアプローチ

インカムアプローチは、中期計画や収益力などを基準として算出する方法です。将来性を評価に加えられる点がメリットで、M&Aでもよく活用されている方法です。企業価値の算出に恣意が含まれる可能性がある点がデメリットです。インカムアプローチの具体的な手法には、DCF(Discounted Cash Flow)法、残余利益法、配当還元法などがあります。

コストアプローチ

コストアプローチは、貸借対照表の純資産額を基準として算出する方法です。客観性が高く、計算がかんたんであることがメリットですが、将来性を評価できない点がデメリットで、M&Aで使われることはあまりありません。コストアプローチの具体的な手法には、時価純資産法、簿価純資産法などがあります。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチは、過去のM&A事例や上場している同業の類似企業などを基準として算出する方法です。市場での取引を反映できるため、客観性が高い評価が可能です。一方、企業ごとの固有の性質を反映しづらく、市場の短期的な要因によって評価に影響する可能性があることがデメリットです。

また、類似の企業やM&A事例が見つからないケースでは、評価自体ができない点もデメリットといえるでしょう。マーケットアプローチの具体的な手法には、類似会社比較法や類似取引比較法、市場株価法などがあります。

SES企業の買収を成功させるポイント

SES企業の買収を成功させるポイント

SES企業の買収を成功するためのポイントとして、以下2点について詳しく解説します。

  • 買収対象企業の社員のスキルやノウハウを評価する
  • 買収後のビジョンを明確にしておく

買収対象企業の社員のスキルやノウハウを評価する

SES企業のビジネスモデルは、他社のサービス開発のための人材を派遣するというものです。そのため、SES企業にとっての財産は、社員のスキルやノウハウだといえるでしょう。

M&AでSES企業を買収する場合には、買収対象の企業に所属している技術者のスキルやノウハウを含め、きちんと評価し検討する必要があります。社員に対する正しい評価ができていなければ、買収後、計画よりも利益が上がらなかったり、社員の会社への貢献度が下がってしまったりする可能性が高まります。

買収後のビジョンを明確にしておく

SES企業を買収することで、多数の技術者を獲得できます。M&A実行後には、もともと行っていたSES事業で利益を生み出せますが、M&Aの効果と収益性をより高めるためには、獲得した技術者のスキルを効果的に活用できるビジョンが必要となります。

SES企業の売却を成功させるポイント

SES企業の売却を成功させるポイント

SES企業の売却を成功するためのポイントとして、以下6点について詳しく解説します。

  • M&A前に黒字化しておく
  • 優秀な人材を確保しておく
  • 汎用性の高い技術を扱える人材を確保しておく
  • 海外企業との取引実績を作っておく
  • 自社の強みを整理しておく
  • SESに詳しいM&A仲介会社などに依頼する

M&A前に黒字化する

営業利益が赤字か黒字かで、M&Aの際の売却価格は大きく変わります。営業利益が出ておらず赤字の状態だと、たとえ優秀な技術者が多数所属していたとしても、価格が安くなってしまう可能性があります。高値で売却をするには、赤字を黒字に変えておく必要があるでしょう。

また、どうしても赤字が解消できない場合には、赤字を放置しておくのではなく、改善策を講じて対処しておくことが重要です。赤字を放っておくのではなく、きちんと対応しようとしているという意思表示を行うことで、買い手企業への印象は良くなります。

優秀な人材を確保する

これまでに説明してきた通り、SES業界を含むIT業界では人材不足が課題となっており、今後もその状況が続くことが予想されています。また、技術者を教育するには多額の費用と時間がかかり、優秀な人材は他社に引き抜かれる可能性もあります。

そのため、人材確保をするためにM&Aを行う買い手企業も多く、買収により多数の技術者を確保しようとするケースも増えています。したがって、優秀な技術者が所属しているSES企業は買い手が見つかりやすく、高値で売買できる可能性があります。

汎用性の高い技術を扱える人材を確保する

特に大手企業では、後のトラブルや損失を避けるため、最新の技術や言語を使ってシステム開発を行うケースは多くありません。そのため、例えばJavaやPHPなどの汎用性の高い技術を扱える技術者が在籍しているSES企業は、高い価格で売却できる可能性が高まります。

すでに開発されたシステムのメンテナンスを行う際にも、開発時に使われた技術に関する知識が必要となるため、汎用性の高い技術に対応できる人材には需要があるのです。SES企業の売却をする可能性があるなら、汎用性の高い技術を扱える技術者の教育と確保に力を入れておくと良いでしょう。

海外企業との取引実績を作る

SES企業の買収を考えている買い手企業の中には、海外進出を目指している、または海外での事業を行っている企業もあります。そのような企業は、海外企業との取引実績がある企業を求めている場合があります。

海外進出をするには失敗のリスクが伴いますし、多額の費用もかかります。しかし、海外企業との取引実績のある企業を買収することによって、海外の顧客や海外で事業を行うためのノウハウを得られるため、海外進出するためのリスクを低減できます。

そのため、海外企業との取引実績があるSES企業は、買い手から評価され、高値で売れる可能性が高まります。

自社の強みを整理する

会社の売却を行う前に、まずは自社の強みや魅力を整理しておくことも必要です。会社の最終的な売却価格は買い手との交渉によって決まるので、自社の強みや魅力をアピールすることが重要なのです。少しでも高い金額で売却するために、買い手に自社の魅力を効果的に伝えられるよう、アピールできるポイントをあらかじめ整理しておきましょう。

自社をアピールする際には、数字などのデータを用いて、客観的に説明することが重要です。漠然と強みを伝えるのではなく、例えば営業利益や従業員数などの数字を見せてアピールすることで、自社のことを正確に伝えられ、信ぴょう性も高まるでしょう。

また、買い手側のニーズを事前に分析したうえで強みをアピールすることも重要です。買い手が必要としている人材や技術などを把握し、それに合致する自社が持っている強みをアピールできれば、買い手からの評価が高まり、高い金額で売却できる可能性が高まります。

SESに詳しいM&A仲介会社などに依頼する

SES企業のM&Aを行う際には、M&Aに関する知識はもちろん、それ以外にもSES業界に関する専門的な知識も必要となります。SESに関する知識がなければ、技術者の価値単価を求められず、正確な売却価格を設定できません。また、適切な買い手企業を選定するためにも、SES業界の知識が必要となるでしょう。

会社の売却を行う際、M&A仲介会社への依頼を検討するケースも多いですが、M&A仲介会社には、会社ごとに得意な領域があることをご存知でしょうか。中には、IT業界やSES業界に精通しているM&A仲介会社もあります。

適切な価格で最適な買い手へ会社を売却するためにも、SES企業を売却する際にM&A仲介会社へサポートを依頼する場合には、SES業界に対する知識がある会社へ依頼した方がよいでしょう。

SES企業をM&Aする際の注意点

SES企業をM&Aする際の注意点

SES企業をM&Aする際には、注意すべき点がいくつかあります。代表的な以下3点について、詳しく説明します。

  • 焦らず慎重にM&Aを進める
  • 自社を大切にしてくれる企業を買い手に選ぶ
  • 売却価格が適切な金額かどうか

焦らず慎重にM&Aを進める

M&Aでは多数の手続きが必要となり、時間もかかるので、早く進めようとして焦ってしまうケースがたくさんあります。しかし、M&Aを成功させるためには焦りは禁物です。

自社を売却する場合には、買い手との交渉前に自社のアピールポイントを分析したり、売却価格を決定したりと、多数のプロセスが必要となりますが、それらのプロセスは重要で、慎重に行うべきものです。

焦ってM&Aを進めてしまうと、売却前後に社員が退職してしまったり、自社の強みを明確にできず適切な売却価格を定められなかったりする可能性が高まります。

これまでにも述べてきたように、SES企業の売却価格には、在籍している技術者のスキルや人数が影響するので、売却前に社員が減ってしまうと売却価格が下がる可能性もあります。また、焦ってあまりに早い段階でM&Aを実行することを社員に伝えてしまうと、情報漏洩のリスクも高まります。

これらのリスクを下げるためにも、M&Aは慎重に進めていかなければなりません。なるべくリスクを下げ、スムーズにM&Aを行うためにも、専門家であるM&A仲介会社に依頼するのがおすすめです。

自社を大切にしてくれる企業を買い手に選ぶ

SES企業は、社員の評価が企業の評価に直接的に結びつくビジネスモデルです。そのため、従業員や他社との関わりで成り立っているともいえます。M&A実行後、買い手企業が従業員のことをないがしろにして仕事を進め、取引先との関係性を悪くさせると、今までの信用や関係性が崩れてしまうかもしれません。

そのため、買い手の企業選定には、自社や人との繋がりを大切にしてくれる会社を選ぶとよいでしょう。

売却価格が適切な金額かどうか

SES企業の売却価格は、これまでに説明してきた通り、純資産や営業利益、企業価値などによって決まります。会社を売る場合も買う場合も、売却価格が適切かどうかをきちんと見極める必要があります。売却価格が相場からかけ離れていないか確認したり、過去の似たようなM&A事例を調べたりしておくとよいでしょう。

SES業界のM&A事例15選

SES業界のM&A事例15選

実際に行われたSES業界のM&A事例を15例紹介します。SES企業の買収や売却を検討している方は参考にしてみてください。

RINETがITbookへ企業売却

RINETは、システム開発事業を手掛ける会社です。ITコンサルティングサービスを提供しているITbookに1億円で企業譲渡しました。RINETは、システム開発の中でも、特にAIやIoTの分野で強みを持っている会社です。AIやIoTは、今後も成長していくと予想されている分野であるため、1億円という売却価格になったと想像できます。

AIやIoTに強い技術者を自社で1から教育するよりも、すでに実績やノウハウのある会社を買収した方が、スピーディーに新たな領域での事業を進められるというメリットがあるため、このM&Aが実行されたと考えられます。

ピクタスがナレッジスイートへ企業売却

東京にあるSES企業であるピクタスは、ナレッジスイートに企業を譲渡し、子会社化されました。譲渡金額は3億1,700万円とされています。ナレッジスイートは、もともとビッグデータの活用を軸として事業を行ってきた会社です。

ナレッジスイートは、ピクタス子会社化と同じ年に、株式会社フジソフトサービスの前株式も獲得しており、この2社のM&Aによって合計100名以上の技術者を獲得しました。このM&Aによって、先端技術に詳しい技術者を育成し、事業拡大の加速化を目指すをしています。

エニシアスがクレスコへ企業売却

売り手であるエニシアスはSES事業のほか、アプリケーション開発やシステムインテグレーション事業を手掛ける会社です。エニシアスは、システム開発やITコンサルティングサービスを提供する企業のクレスコに買収されました。

クレスコは、クラウド関連事業の強化のために買収を行い、エニシアスはクレスコのグループ企業となることでビジネス拡大を目指しました。株式譲渡の方法でM&Aが行われ、株式の取得価格は2億8,000万円でした。

ヒューマンウェアがスリープログループへ企業売却

SEの派遣事業を行うヒューマンウェアは、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)を手掛けるスリープログループに買収されました。売却価格は4億6,500万円でした。

スリープログループは慢性的に技術者不足に悩んでおり、優秀な技術者が多数在籍しているヒューマンウェアを買収することで、技術者不足の解決を目指しました。また、技術者へ転職希望の社員に向けて研修会を開いたり、案件紹介をしたりできるというメリットが生まれたとされています。

コンピュータシステムがシノケンオフィスサービスへ企業売却

売り手のコンピュータシステムは、SES事業のほか、ソフトウェア開発やアプリ開発を手掛ける会社です。一方、買い手であるシノケンオフィスサービスは、シノケングループの経理や総務、社内システムの開発などのバックオフィス業務を行う会社です。

売却価格は非公開ですが、コンピュータシステムはすべての株式をシノケンオフィスサービスに売却し、完全子会社化されました。シノケンオフィスサービスは、コンピュータシステムのSES事業や技術者の教育ノウハウを獲得するためにこのM&Aを実行しました。

ITソフトジャパンがインフォメーションサービスフォースへ企業売却

売り手であるITソフトジャパンは、大手企業を顧客として抱えるSES企業でしたが、トライアンフコーポレーションの連結子会社で、同じくSES企業であるインフォメーションサービスフォースに買収されました。すべての株式を譲渡する方法でM&Aが実行され、売却価格は3,200万円となっています。

ITソフトジャパンは、大手企業などの優良顧客との関係がありましたが、経営者の高齢化による事業承継の問題も抱えていました。そのような背景から、このM&Aは、事業承継問題の解決を目的として行われました。

買い手であるインフォメーションサービスフォースは、同業他社を買収することによってSES事業の強化を目標としています。

エイムがユビキタスへ企業売却

組込みソフトウェアやサーバー系のエンジニアが在籍している会社のエイムは、組込みソフトウェアやネットワーク関連の製品開発を行っているユビキタスに企業売却を行いました。このM&Aは株式譲渡によって行われ、売却価格は7億2,000万円でした。

ユビキタスは製品開発に力を入れていましたが、受託開発案件を受けられないケースがあり、機会損失が課題となっていました。そのような背景から、組込みソフトウェア関係の技術力が高かったエイムを買収することとなりました。

リアルタイムアニバーサリーがアイフリークモバイルへ企業売却

売り手であるリアルタイムアニバーサリーは、人材育成やSES事業を手掛けていた会社で、女性の社会進出を目標として運営していた会社です。リアルタイムアニバーサリーは、IT技術者の育成やスマホ向けのコンテンツ事業を行うアイフリークモバイルに買収されました。M&Aには、株式譲渡の方法が採用され、売却価格は2,277万円でした。

このM&Aは、リアルタイムアニバーサリーに在籍する人材の獲得を目的として行われ、主力事業にあたる人材が確保でき、より効率的な業務体制が構築されました。

アンドールシステムサポートがソーバルへ企業売却

アンドールシステムサポートは、車載システムや物流搬送設備の制御システムの開発を得意とする会社で、組込み開発を得意とするソーバルに買収されました。株式譲渡によってM&Aが行われ、株式の売却価格は概算で9,900万円とされています。

収益を拡大するため、新規顧客獲得や事業拡大を狙っていたソーバルは、組込み用システムの受託開発で事業を拡大するために、このM&Aを実行しました。

アスカ・クリエイションがアウトソーシングへ企業売却

IT・通信分野でSES事業を展開する会社であるアスカ・クリエイションは、技術や製造、サービスなどでアウトソーシング事業を行う企業であるアウトソーシングに企業売却を行いました。自己株式を除くすべての株式が3億30万円で売却されました。

アウトソーシングは、ITや通信の分野の強化を目的としてM&Aを実行しました。アスカ・クリエイションの優秀な技術者と、アウトソーシングの顧客基盤が組み合わさり、受注拡大に成功したとされています。

スプレッドシステムズがインフォネットへ企業売却

売り手であるスプレッドシステムズは、フロントエンドエンジニアリングとディレクション業務をメインとしたSES事業を行っていた会社ですが、Webサイト構築や運用保守、チャットボットシステムの開発などを行うインフォネットに買収されました。

スプレッドシステムズは、すべての株式を売却する方法で、インフォネットの子会社となりました。なお、売却価格は非公表となっています。

インフォネットは、スプレッドシステムズを買収することにより、収益基盤の確立や、技術者などの人材確保を行い、事業規模の拡大や企業価値の向上を目指しました。

一方で、売り手であるスプレッドシステムズは、大手システム開発会社であるインフォネットの子会社となることで、経営の安定化を目指しました。

アローインフォメーションが夢真ホールディングスへ企業売却

Java系のエンジニアのSES事業をメインとしているアローインフォメーションは、建設技術者の派遣をメインで行う、夢真ホールディングスに買収されました。

夢真ホールディングスは、近年では建設関係だけでなく、ITエンジニアの派遣事業を強化していることもあり、IT業界でのM&Aを積極的に行っています。このM&Aでは、株式譲渡の方法が採用され、すべての株式を売却することによって買収が行われました。なお、売却価格は公表されていません。

夢真ホールディングスは、ITエンジニアの派遣事業強化の目的でM&Aを実行しました。一方、アローインフォメーションは、夢真ホールディングスの子会社となることで、事業成長を加速させることを目的として売却を実行しました。

キャスレーコンサルティングがISIDインターテクノロジーへ事業譲渡

キャスレーコンサルティングは、SES事業のほか、ITコンサルティング、IoTやビッグデータ関連の事業を手掛ける企業で、ISIDインターテクノロジーに事業譲渡を行いました。ISIDインターテクノロジーは、金融や広告などの領域でシステム開発を行う電通グループのIT企業です。

キャスレーコンサルティングは、事業譲渡によってSES事業をISIDインターテクノロジーに売却しましたが、売却価格は非公表となっています。

売り手であるキャスレーコンサルティングは、SES事業の拡大を目的にこの事業譲渡を実行しました。SES事業の売却によって得た資金で、AIや画像解析などの新規事業などに投資を行うとしています。

また、買い手であるISIDインターテクノロジーは、開発体制を強化し、事業を拡大をするためにこのM&Aを実行しました。

アムズブレーンによるTOKAIコミュニケーションズへの株式譲渡

ソフトウェアの受託開発やシステムの運用保守を行うアムズブレーンは、通信やデータセンター事業、システムインテグレーション事業を手掛けるTOKAIコミュニケーションズの子会社となりました。

TOKAIコミュニケーションズは、請負型だけでなく、SES型のサービスも提供しているIT企業です。アムズブレーンは、99%の株式を売却し、TOKAIコミュニケーションズの子会社になりました。

このM&Aは、開発体制を強化し事業領域の拡大を行うことで、顧客のニーズに迅速に対応することを目的として実行されました。

バリストライドグループがSHIFTへ企業売却

バリストライドグループは、SES事業のほか、Webアプリケーションの開発や、インフラ・ネットワークの構築なども手掛ける企業です。バリストライドグループは、ソフトウェアのテスト事業を行うSHIFTによって買収されました。SHIFTがバリストライドグループのすべての株式を取得し、M&Aが実行されました。売却価格は非公表となっています。

このM&Aは、SHIFTがバリストライドグループの優秀なソフトウェアの技術者を獲得することを目的として行われました。SHIFTはこのM&Aにより、これまでは機会損失が生まれていた、大規模案件への対応力を高められました

SES企業をM&A・売買する方法

SES企業をM&A・売買する方法

SES企業をM&A・売買する方法としては、主に「株式譲渡」と「事業譲渡」があります。ここでは、それぞれのメリットやデメリットについて解説します。

株式譲渡のメリット・デメリット

株式譲渡は、発行済みの株式を売却する方法です。この方法では、支配権も買い手企業に譲渡されます。

メリットとしては、事業譲渡に比べるとかんたんな手続きで済み、資産や契約などをすべて売却できる点が挙げられます。SES企業を会社ごと売却したいケースに適した方法です。

株式譲渡では、売り手企業に負債があれば、その負債も含めて引き継ぐ必要があるため、多額の負債を抱えている場合は買い手が見つかりにくいというデメリットがあります。

事業譲渡のメリット・デメリット

事業譲渡は、会社内の一部またはすべての事業を売却する方法です。

どの事業を売却するか選択できるため、SES以外の事業も手掛けている企業であれば、例えばSES事業のみを売却したり、利益が出ていない事業を売却してSES事業のみを残したりできる点がメリットです。

一方で、株式譲渡と比べると手続きに時間や手間がかかる点がデメリットです。手続きが大変になるのは、契約の移転を行う際に従業員や取引先から同意を得る必要があるためです。

事業譲渡・M&A相談ならウィルゲートM&A

会社売買・M&A相談ならウィルゲートM&A

ウィルゲートM&Aは、15年以上Webマーケティング支援事業を行ってきた会社です。IT業界に関する豊富な知識や経験を活かし、M&Aの仲介を行います。

9,100社以上の経営者とのネットワークがあるため、最適なM&Aの相手とスピーディーにマッチングすることが可能です。交渉の場でのサポートはもちろん、契約書のフォーマット提供などさまざまな支援を受けられるので、安心してM&Aを進められます。

特にWeb・IT業界のM&Aを得意としているため、SES企業のM&A仲介、事業継承ならウィルゲートM&Aに依頼ください。ウィルゲートM&Aでは、完全成果報酬制を採用しており、ご相談や着手金は不要です。SES企業のM&Aを検討している方は、まずは無料でご相談ください。

SES業界のM&A最新動向 まとめ

SES業界のM&A最新動向 まとめ

SES企業とは、自社に在籍するシステムエンジニアを、人手を要している企業に派遣する事業を営む会社のことです。SES業界では、人材不足が深刻な課題となっているため、優秀な人材確保のためのM&Aが行われるケースが増えています。

M&Aを行うには、企業価値の算出や条件交渉などのさまざまな場面で、専門的な知識やノウハウが必要となります。M&Aを行うにあたり注意すべき点も多数あるため、M&A仲介会社に依頼して支援してもらうとよいでしょう。

ウィルゲートM&Aは、WebやIT業界でのM&Aを得意領域としているM&A仲介会社です。完全成果報酬制という料金システムを採用しており、相談や着手は無料です。M&Aの成約まで料金は一切かからないので、SES企業のM&Aを検討中の方は、是非無料でご相談ください。

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