
M&AとIPOは、企業のイグジット戦略における代表的な手法です。しかし、創業者利益や経営権の有無・実現までの期間など、両者には明確な違いがあります。企業の成長段階やオーナーの目的に応じて最適な選択肢は異なるため、それぞれのメリット・デメリットを正しく理解することが重要です。
本記事では、M&AとIPOを多角的に比較し、最適なイグジット戦略を選択するための判断材料を提供します。
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IPO(Initial Public Offering)とは、未上場企業が証券取引所に自社の株式を上場させ、一般の投資家が自由に売買できるようにすることです。企業は株式市場から直接的な資金調達が可能となり、社会的な信用度も格段に向上します。
経営者は上場後も一定の株式比率や議決権を維持できれば、経営権を維持したまま、経営に関与し続けながら、調達した資金を事業拡大や研究開発に投資することが可能です。そのため、多くの経営者にとってIPOは成功の象徴的な目標の一つとされていましたが、近年ではM&Aによるイグジットも一般的な成功モデルの1つとして広く認識されています。
IPOを実現することで得られる主なメリットは、企業の成長を加速させるための強力な基盤を築ける点です。具体的には、主に以下の3つの要素が挙げられます。
・社会的な信用度が上がり資金調達がしやすくなる
・企業のブランドイメージが向上し優秀な人材を確保できる
・ストックオプションで従業員の意欲を高められる
それではここから、上記3つのメリットについて詳しく見ていきましょう。
IPOを果たすと、証券取引所の厳しい審査基準をクリアした企業として、社会的な信用度が飛躍的に向上します。この信用力は、金融機関からの融資を有利な条件で受けやすくなるだけでなく、公募増資や株式交換といった多様な手法での資金調達を可能にします。
これにより、大規模な設備投資や新規事業への参入など、企業の成長戦略を実現するための資金を機動的に確保できるようになる点が大きなメリットです。知名度の向上は、取引先との関係強化にもつながります。
上場企業というステータスは、企業のブランドイメージを大きく向上させる効果があります。テレビや新聞などのメディアで取り上げられる機会が増え、社会的な知名度が高まることで、消費者や取引先からの信頼も得やすくなるのです。
このブランドイメージの向上は、採用活動においても大きなメリットをもたらしてくれます。企業の安定性や将来性に対する期待感から優秀な人材が集まりやすくなり、採用競争において優位な立場を築くことが可能です。
IPOを目指す過程や上場後に、従業員に対してストックオプションを付与することができます。ストックオプションとは、あらかじめ定められた価格で自社の株式を購入できる権利のことです。従業員は、会社の業績が向上し株価が上昇すればその差額を利益として得られます。
これにより、従業員は自身の働きが直接会社の価値向上と自らの利益につながるため、仕事に対する意欲や貢献意識が高まります。会社全体で同じ目標に向かう一体感を醸成できる点も、IPOのメリットの1つです。
IPOは企業の飛躍的な成長を支える一方で、経営における大きな転換を強いる側面も持ち合わせています。上場を実現し維持するためには、未上場時とは比較にならないほどの労力と負担が伴うためです。
特に考慮すべき具体的なデメリットは、以下の3点です。
・準備に数年単位の期間と多額の費用が必要になる
・上場後も監査や情報開示などでコストがかかり続ける
・株主への説明責任が生じ経営の自由度が下がる
これらの壁を乗り越えてでも上場を目指すべきか、慎重な検討が求められます。それでは、各項目について詳しく見ていきましょう。
IPOを実現するためには、数年単位での長期的な準備期間がかかります。主幹事証券会社や監査法人・証券印刷会社などの多くの専門機関へ支払うコンサルティング料や監査報酬、株式事務代行手数料といった多額の費用が発生します。
また、社内管理体制の構築も必須であり、取締役会の設置や内部監査部門の整備・規程類の策定など、組織全体での対応が求められます。これらの準備には数千万円から数億円規模のコストがかかることも少なくありません。
IPOはゴールではなく、上場後も継続的にコストがかかり続けます。上場企業は、投資家保護の観点から四半期ごとに業績を開示する義務を負います。そのための監査費用や、有価証券報告書などの開示書類を作成するための人件費、株主総会の運営費用などが毎年発生することになるのです。
これらの上場維持コストは、企業の規模にもよりますが、年間で数千万円以上にのぼるケースも珍しくありません。この継続的な負担は、経営上の大きな課題となり得ます。
株式を公開するということは、経営者が株主に対して経営責任を負うことを意味します。株主は企業の所有者であり、経営陣は常に株主の利益を最大化するよう努めなければなりません。そのため、株価を意識した短期的な利益追求を求められるプレッシャーが生じます。
また、重要な経営判断を下す際には、株主への説明責任と納得を得るプロセスが必要となり、未上場時のような迅速かつ大胆な意思決定が難しくなる可能性があります。経営の自由度としては、一定の制約を受けることになるのです。
とは?会社売却で創業者利益を最大化する戦略-1024x609.jpg)
M&A(エムアンドエー)とは「Mergers and Acquisitions」の略で、企業の合併・買収の総称です。
イグジット戦略としてのM&Aは、主にオーナー経営者が自社の株式や事業を第三者(企業や投資ファンド)に売却することを指します。これにより、オーナーは創業者利益を現金で獲得できます。
後継者不在による事業承継問題の解決策として、あるいは大手企業の傘下に入ることで事業のさらなる成長を目指す手段として活用される、非常に有効な戦略です。
M&Aによって企業を売却することで得られるメリットは、主に資金面や事業の継続性、そしてさらなる成長性の確保という点にあります。具体的には、主に以下の3つの要素が挙げられます。
・短期間で株式を現金化し大きな創業者利益を得られる
・後継者問題を解決し会社の存続を図れる
・大手企業の傘下で事業のさらなる成長が期待できる
M&Aは、一般的にはIPOと比較して成約までのスピードが早く、不確実な市場環境に左右されにくいという特徴があります。それでは、これら3つのメリットについて詳しく見ていきましょう。
M&Aの最大のメリットの一つは、保有する株式の大部分またはすべてを売却し、短期間で多額の現金を一度に手にできる点です。買い手企業が見つかれば、交渉から契約締結まで数ヶ月から1年程度で完結することが一般的です。IPOのように上場後のロックアップもないため、創業者利益を速やかに確定させることができます。
アーリーリタイアや新たな事業への挑戦を考えている経営者にとって、非常に魅力的な選択肢となります。
多くの中小企業が直面する後継者不在の問題に対し、M&Aは有効な解決策となります。親族や社内に適当な後継者が見つからない場合でも、事業の継続を望む第三者に会社を譲渡することで、廃業を避けられます。
これにより、長年培ってきた技術やノウハウ、ブランドを次世代に引き継ぎ、従業員の雇用を守ることが可能です。会社の存続と発展を願う経営者にとって、M&Aは事業承継を実現するための重要なメリットを提供します。
自社単独では限界があった事業展開も、資金力やブランド力・販路を持つ大手企業の傘下に入ることで、飛躍的な成長が期待できます。買い手企業の持つ経営資源を活用することで、新たな市場への進出や大規模な設備投資、研究開発の促進が可能になるのです。
これにより既存事業の競争力を強化し、より大きなスケールで成長を目指すことができます。これは従業員にとっても、キャリアアップの機会が増えるなどのメリットにつながります。
M&Aによって企業を売却する際には、オーナー利益の獲得や事業の継続といったメリットがある反面、慎重に検討すべきデメリットも存在します。特に経営体制や組織文化が大きく変化する点については、あらかじめ理解を深めた上での判断が必要です。
具体的には、主に以下の3つの要素が挙げられます。
・会社の経営権を買い手に譲渡することになる
・従業員の雇用条件や労働環境が変わる可能性がある
・企業文化の違いから組織の統合作業が難航する場合がある
売却後のトラブルを防ぎ、円滑なイグジットを実現するためにも、これらのデメリットについて詳しく確認していきましょう。
M&Aによって株式の過半数を売却した場合、会社の経営権は買い手企業に移ります。創業者として会社を育ててきた経営者にとっては、自らの意思決定で経営ができなくなるという大きな変化を受け入れなければなりません。売却後も役員として会社に残るケースはありますが、その場合も買い手企業の方針に従う必要があります。
経営の自由を失うことになるため、契約条件についてはFA(ファイナンシャルアドバイザー)などの専門家と慎重に交渉することが不可欠です。
M&Aが成立すると、売り手企業の従業員は買い手企業の組織に統合されます。その過程で、給与体系や福利厚生、人事評価制度といった雇用条件が買い手企業の基準に変更される可能性があります。多くの場合、従業員の雇用は維持されますが、労働環境の変化が従業員のモチベーション低下や離職につながるリスクも否定できません。
両社の制度を組み合わせたハイブリッドな仕組みが導入されることもありますが、従業員への丁寧な説明とケアが求められます。
M&A後の統合プロセス(PMI)において、最も難しい課題の一つが企業文化の融合です。意思決定のスピードや仕事の進め方・価値観などが大きく異なる企業同士が一つになることで、従業員間に摩擦や対立が生じることがあります。この文化的なコンフリクトが原因で、期待していたシナジー効果が発揮されなかったり、主要な人材が流出してしまったりするケースも少なくありません。
M&A仲介会社などを通じて、契約前に相手企業の文化を深く理解しておくことが重要です。
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M&AとIPOは、イグジット戦略としてそれぞれに利点がありますが、どちらを選択するかは経営者の目的によって大きく異なります。両者の違いを明確に理解した上で自社の状況と照らし合わせることが、最適な意思決定につながります。
ここでは「創業者利益」「経営への関与」「期間」「成功可能性」「従業員への影響」「イグジット後の責任」という6つの重要な観点から、M&AとIPOの具体的な違いを比較・解説します。
創業者利益を比較すると、短期間で一度に現金化しやすいのはIPOよりもM&Aです。M&Aでは保有する株式のすべてを売却することが多く、売却代金を一括で受け取れるため、早期に大きな利益を確定できます。
一方、IPOの場合、創業者や役員が保有する株式にはロックアップ期間が設けられ、上場後すぐに全株式を売却することはできません。株価の変動リスクもあるため、M&Aの方がより確実かつスピーディーに創業者利益を最大化できる可能性が高いと言えます。しかし、IPO後の株価上昇によって、長期的にはより大きなリターンを得るケースもありえる点は注意が必要です。
経営への関与という点で比較すると、両者には決定的な違いがあります。IPOは、株式を公開しつつも創業者が引き続き大株主として経営権を維持し、経営の舵を取り続けることが可能です。企業の成長を自らの手で実現したいと考える経営者にとっては、IPOが適しています。
対照的に、M&Aでは経営権を買い手に譲渡するケースが多いため、経営から引退したい、あるいは別の事業に集中したい場合にM&Aは適しています。しかし、円滑な事業引き継ぎのため、創業者が一定期間経営に関与し続けるケースも少なくありません。
イグジット実現までの期間を比較すると、M&Aの方が圧倒的にスピーディーです。M&Aは、適切な買い手候補が見つかれば、交渉から最終契約まで数ヶ月から1年程度で完了するケースが一般的です。
一方、IPOは証券取引所による厳格な審査に備える必要があり、監査法人による監査や内部管理体制の構築など、企業の規模や管理体制によりますが、一般的に3年以上を要するケースが多いとされています。
時間をかけずに速やかにイグジットを完了させたい場合には、M&Aが有力な選択肢となります。
成功の可能性を比較すると、M&Aの方がIPOよりも実現可能性は高い傾向にあります。IPOには、売上規模や利益、コーポレート・ガバナンスなど、証券取引所が定める非常に厳しい上場審査基準をクリアしなければなりません。そのため、準備を進めても必ず上場できるとは限りません。
一方、M&Aは、自社を評価してくれる買い手企業が1社でも見つかれば成立します。イグジットの割合で見ても、IPOに至る企業はごく少数であり、M&Aの方が現実的な選択肢となる場合が多いです。
従業員への影響を比較すると、IPOは知名度向上やストックオプション制度の活用により、従業員のモチベーション向上につながる場合があります。しかし、上場後の業績プレッシャーや管理体制の厳格化により、負担が増すケースもある点には注意が必要です。
一方、M&Aでは買い手企業の文化や人事制度に統合されるため、給与体系や働き方が変わる可能性があります。これが従業員の不安やモチベーション低下につながるリスクも考慮し、丁寧なコミュニケーションを取る必要があります。
EXIT後の責任について比較すると、IPOは責任が増大し、M&Aは軽減される傾向にあります。IPOを果たすと、企業は上場企業として株主や社会全体に対する説明責任やコンプライアンス遵守など、重い社会的責任を負うことになります。
一方、M&Aで株式をすべて譲渡した場合、株式をすべて譲渡した場合でも、表明保証や契約上の補償義務など、一定期間の責任を負うことが一般的です。特に、経営者が個人で負っていた金融機関からの借入金の連帯保証も解消されることが多く、イグジット後の個人的なリスクを大幅に軽減できます。
M&AとIPO、それぞれの特徴を理解した上で、自社の状況や経営者の目的にとってどちらが最適かを見極める必要があります。特にスタートアップ企業にとっては、将来の成長戦略を左右する重要な選択です。
会社のビジョン、事業の成長ステージ、市場環境、そして経営者自身のライフプランなどを総合的に考慮して判断することが求められます。
ここでは、どのようなケースだとIPOが向いていて、どのような場合にM&Aが適しているのか、具体的な判断基準を解説します。
IPOが向いているのは、創業者が今後も経営の第一線に立ち続け、事業をさらに大きく成長させたいという強い意志を持っている場合です。IPOによって得られる知名度や信用力、そして市場からの資金調達能力は、事業拡大の大きな原動力となります。
未上場企業のままでは難しかった大規模な投資や優秀な人材の獲得も可能になり、業界のリーディングカンパニーを目指すことができます。経営者として、自らの手で会社を次のステージへと導きたいと考えるなら、IPOは最適な選択肢です。
M&Aが向いているのは、経営者がリタイアを考えており、創業者利益を早期に確定させたい場合です。
M&Aとは、事業の価値を正当に評価してくれる第三者にその未来を託すことであり、ハッピーリタイアメントを実現する有効な手段です。
また、後継者がいないために事業の将来に不安を感じている場合や、自社単独での成長に限界を感じ、大手企業の傘下で事業を存続・発展させたいと考える場合にもM&Aは適しています。
会社の未来と自身の人生設計を考えた上での合理的な判断と言えます。
かつての日本では、企業のイグジット戦略としてIPOが成功の証と見なされる風潮が強くありました。
しかし近年、そのトレンドは大きく変化しています。後継者不足に悩む中小企業の事業承継問題が深刻化し、その解決策としてM&Aが積極的に活用されるようになりました。
また、スタートアップ業界においても、短期間で事業を成長させて売却するというイグジットモデルが一般化しつつあります。M&A仲介会社やFA(ファイナンシャルアドバイザー)といった専門家のサポート体制が充実してきたことも、M&Aの増加を後押ししています。
M&AとIPOの選択を検討する上で、多くの方が抱く疑問について解説します。
特に、両者の根本的な違いや創業者利益の大きさなど、重要なポイントをQ&A形式で簡潔にまとめました。
イグジット戦略とは何かを考え、最終判断を下す前にこれらの点を再確認しておきましょう。
m&aとipoはどちらも有効な手段ですが、その特性を理解することが成功への鍵となります。
最大の違いは「経営権の所在」です。
IPOは株式を公開した後も創業者が経営権を維持し、経営を継続することが前提です。
一方、M&Aは会社の経営権を買い手企業に譲渡するため、創業者は経営から退くことが一般的です。
この経営への関与の仕方が、両者を分ける最も本質的な違いと言えます。
一般的に、短期間で一度に大きな創業者利益を得やすいのはM&Aです。
保有する全株式を一度に現金化できるためです。
IPOは市場から多額の資金を調達できますが、創業者保有株の売却には制限があり、利益確定に時間がかかります。
株価変動のリスクも考慮する必要があります。
可能ですが、非常に高いハードルがあります。
IPOには厳しい審査基準があり、売上や利益の規模、強固な内部管理体制が求められます。
そのため、多くの中小企業にとっては現実的ではない側面もあるのです。
急成長を遂げているスタートアップや、独自の技術を持つ一部の企業に限られるのが実情です。
M&AとIPOは、企業のイグジット戦略における二大選択肢ですが、それぞれに異なる特徴と目的があります。経営権を維持し、社会的な信用を得て事業の継続的な成長を目指すのであればIPOが適しています。
一方、エムアンドエーは、創業者利益の早期確定、後継者問題の解決、大手企業の傘下での事業発展を望む場合に有効な手段です。どちらが優れているということではなく、自社の状況、将来のビジョン、そして経営者自身のライフプランに合致したイグジット戦略を選択することが重要です。
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