“売る”と“創る”の名手たち──クリエイターの創造力を、M&Aで解き放つ【株式会社そばに】

- 売却した会社
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株式会社ユハク 様
- 買収した会社
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株式会社そばに 様
写真左:佐藤 秀平氏 写真右:仲垣 友博氏
Amazonからブランドのグロースを支援する、ECコンサルティング事業で名を馳せる株式会社そばにでは、M&Aを通じて成長可能性のあるブランドをロールアップさせるブランドグロース事業にも注力しています。
2025年1月にはその一環として、手染めの国産レザーブランド「yuhaku(ユハク)」を擁する株式会社ユハクとの資本業務提携契約を締結し、同社がそばにグループの一員となりました。
クリエイターとして作品の完成度を追求したい株式会社ユハクの仲垣友博代表と、多くのブランドに飛躍の舞台を提供したい株式会社そばにの佐藤秀平代表。お二人の想いが合致した結果、今回の契約に至ったと言います。
ここではそれぞれの企業の特色、成立した経緯、今後の展開などについて、佐藤代表と仲垣代表に語っていただきました。
“売る”の名手「そばに」と“創る”の職人集団「ユハク」
――それぞれの事業内容について教えてください。
■仲垣氏 オリジナルブランド『yuhaku』の名のもと、独自の染色技術を駆使した革製品に関して企画、制作、製造、販売までを一貫して手掛けています。ルーツを辿ると2006年に自分が個人事業主として創業しており、その3年後には法人化を果たしています。
もともと自分は、ある企業の靴のデザイナーとして活動しており、おかげさまで大ヒット商品を生み出すこともできました。しかしながら、小さな靴ブランドだったことから「模倣だ」と言われるケースも多く、その悔しさから真似されないブランドを作ろうと決心しました。

仲垣 友博氏
□佐藤氏 株式会社そばには1995年に設立されているのですが、母体とする会社を私が買い取ることで現在の形になったのは2020年のことです。事業としては、BtoB向けのECコンサルティング事業、さらにはM&Aした事業を成長させるブランドグロース事業を手がけています。

佐藤 秀平氏
――どのような層をターゲットにしているのでしょうか?
■仲垣氏 「長く大切に使い続けたいもの」という意志を持つ20~30代のお客さまが、yuhakuを支持してくださっています。ハイブランドに比べると知名度は低いものの「自分だけが知っているブランドを持ちたい」という層に刺さっている手応えがあります。
□佐藤氏 そばには地方の中小企業から大手のメガクライアントまで、様々なお客さまと取引を展開しています。例えば、京都のとあるお茶屋さん。ECほぼゼロの段階で声をかけていただき、今では月1億円の売上を誇るに至っています。
以前は電話通販が主体だったそうですが、息子さんの代になるタイミングでEC化に着手。グローバルに販路が拡大したことから、今では外国人を採用するなど会社の新しい未来を作るお手伝いができました。
また、岐阜の食品卸の会社に関しても、ECゼロから売上1億円を達成。この企業のEC担当者はおひとりだけで、面倒な裏側の作業は全て当社に任せてもらうという役割分担がはっきりした好例となっています。

「モノづくりに集中したい」との思いから提携先を探し始める
――株式会社ユハクとしては、どのようなきっかけから今回のM&Aを検討するようになったのでしょうか?
■仲垣氏 私自身、何よりも人材のマネジメントが苦手という自覚がありました。経営よりも「クリエイティブに集中したい」という気持ちを悶々と抱いていているなかで、今回のM&Aを検討するようにしました。
というのも、もともとは個人事業主のクリエイターとして事業を始めており、当初は会社を持つつもりもなく、「ゆるく一人でやっていけばいい」と考えていました。
しかし、必要に迫られて株式会社ユハクを設立して以降、事業の規模が次第に大きくなり、経営というものから目を背けられなくなっていきました。
その時期から、会社をしっかりと回していただける方と一緒になることで、クリエイターとしての本分に集中したいと考えており、コロナ禍の前から動き出してはいました。
――検討中、不安や悩みなどはございましたか?
■仲垣氏 M&A自体には不安はなかったものの、会社経営自体の悩みが大きく、切迫感に苛まれる日々を過ごしていました。実はコロナ禍をきっかけに業績が下がってしまい、このままでは会社の存続や社員の生活を守ることが難しくなる。そんな不安を抱えていました。また、(ウィルゲートではない)M&A仲介会社に声掛けしてみたものの、表では積極的に買主さんを探してくださっているようには見えたのですが、残念ながら実際にはあまり進展が感じられない状況でした。
規模感が小さな当社ではうまみが少ないのかもしれませんが、軽く扱われているのがわかってしまったので、新たな可能性を開拓するべくウィルゲートさんにお声掛けした次第です。
――買い手に求めていた条件はあったのでしょうか?
■仲垣氏 唯一の条件は同業者ではないこと。私自身、同じ業界の中では最も高いレベルのブランディングを行い、製品開発の技術も有していると自負しています。そのため、同業者と一緒になっても、結局はこちらが教える立場になってしまうと考えています。
成長するためには自分たちが持ってない何かを持っている会社さんと一緒にならないと意味がないので、EC事業やマーケティング事業を手掛けている会社さんが相手になるだろうというイメージでした。

選んだポイント「どのようなビジョンを持っているのか、直接、顔を見て話せた」
――買い手側の株式会社そばにとしては、M&Aなどにどのような条件を求めていたのでしょうか?
□佐藤氏 当社のM&Aポリシーは、プロダクトに強みがある企業を選ぶという点に尽きます。ブランドグロース事業を展開していることもあり、かねてからM&Aは積極的に進めてきていましたが、当社ではマーケティングや売り方などでM&Aした企業を支援できるものの、プロダクトの良さはどうあがいても改善できませんので、おのずと重要視するポイントとなっています。
――お互いにどのような印象を持ちましたか?
□佐藤氏 私はyuhakuについてほぼ予備知識がないまま面談したのですが、仲垣さんをはじめ職人肌の集団が良質のプロダクトを作っているのがよく伝わってきました。
その一方、ECマーケティングの基本がほぼ何もできていないのもわかり、シンプルに当社が改善できる余白が十分にあるのがわかりました。
■仲垣氏 佐藤さんと話をしていて「この人と組んだら面白い未来が待っているのではないか」と思えました。他にも何社かと面談していますが、手堅い事業を営んでいる企業と組んだ方が堅調に成長できるとは感じていました。
(いくつかの企業担当者と話をしましたが)話の面白みという点では、佐藤さんに勝てる企業はなく、その人柄に惹かれました。
――最終的にお互いを選んだポイントは?
■仲垣氏 最初から代表者の佐藤さんが出てきてくれて、何を考えている会社なのか、どのようなビジョンを持っているのか、直接顔を見て話せたことが大きかったです。
実際、最初の面談はわざわざ大阪から首都圏の工房にふらっと現れてくれて、そのアグレッシブさや行動力には共感できるものがありました。
振り返ると、他社の場合、M&Aをまわす担当者との話がほとんどで、代表者と話す機会がなかったので、佐藤さんのアグレッシブで温かみのあるスタイルは心に残りました。
□佐藤氏 もっと広い層に受け入れられるブランドだと思ったのが大きかったですね。
仲垣さんはyuhakuを「20~30代に強いブランド」と話していましたが、当社の40~50代の幹部メンバーもyuhakuのアイテムを気に入って使っていますし、価格帯を見ても40代以上が使っても良いブランドのはずです。
これは単純に(40代以上に)「届いていない」に過ぎません。若い人は自分にとって納得できるブランドを探しに行きますが、年齢が上がってくとどうしても保守的になってしまいますので、そこに工夫の余地を見出しました。
もっと言えば遠い将来、海外展開を見据えたときも十分に商機があると考えています。

契約締結後、経営状況に問題があったので、急いで経営改善に走り出した
――交渉中に苦労したことは何でしょうか?
□佐藤氏 ユハクの場合、経営状態に課題があっただけに、M&Aを急がなくてはなりませんでした。極端に言えば、ブランドを残すか、個人で生きるか、という究極の選択でしたが、仲垣さんは「ブランドを残す」と覚悟を決めていらっしゃいました。
その覚悟があるならば、この先、一緒にやっていけるとの感触は持ちましたね。
■仲垣氏 苦労と言いますか、途中でウィルゲートさんの社内事情で担当者の変更が発生してしまいました。
ただ、ウィルゲートの新しい担当者さんは、かつて会社を経営されていて、M&Aの経験もある方でした。中立の立場で動いて下さり、売り手にも買い手にもwin-winとなる理想的な着地点を示してくれました。経験をした方の言葉は非常に力強いと感じました。
――契約締結後はどのような動きがありましたか?
□佐藤氏 まず支出が膨らんでいたことに問題があったので、急いで経営改善に走り出しました。経費の洗い出しと削減は真っ先に行い、結果としては月約600万円の出費を減らすことに成功しました。
マーケティングでブランド価値を高めるといっても、結局はお金がなかったらどうしようもないので、良いスタートが切れたと思います。
■仲垣氏 佐藤さんたちと一緒になってからは、自分自身の甘さを改めて痛感させられてばかりです。今までは社員を動かすのも一苦労でしたが、そばにという外部の目線が入ったことで社員も“自分事”だと捉えるようになり、積極的に改善を進めてくれました。
P/Lも圧倒的に改善され、正直、ホッとするところが大きかったですね。
□佐藤氏 うまく行っていない会社は、経営者や社員だけが要因になっているわけではありません。負け癖がついている野球チームのようなもので、きっかけを与えて勝ち癖を付けていくと、同じチームでも全く勢いが変わっていきます。
もちろん、簡単に変わるわけではないですが、仲垣さん自身が危機感を持って動いてくれた結果、当初は1割程度しか発揮されていなかったポテンシャルが、6~7割まで改善された感覚です。

M&Aの敷居が下がってはいるものの「誰かの人生を左右する行為」なので慎重にすべき
――今後はどのような展開をお考えですか?
□佐藤氏 まずは、yuhakuを支えるメンバーが自信をもって展開できる状況づくりが先決です。M&Aによっていきなりシナジー効果が発揮されるというのは幻想に過ぎません。やるべきことを淡々と積み重ねていった先に、結果がおのずとついてくるのです。
買い手側はあくまでも補助輪のようなアシスト役です。極端な話、僕らが「こうしたい」と思っても、当事者が「そうしたい」と思わなければやらない方が良いとさえ考えています。
■仲垣氏 佐藤さんが言うようにM&Aしたから全てがうまくいくわけではないですね。本当に毎日、毎日コツコツと地道に積み重ねていくことで、ようやく新しい未来を作れるという認識は全員が共有しています。
ただ、佐藤さんたちと一緒になったことで、以前は3歩進んで4歩下がっていたのが、3歩進んで2歩下がるというレベルになり、一段一段、着実に上がっていける状況になったのは間違いありません。
――本日は貴重なお話をありがとうございました!最後にM&Aを検討している企業にメッセージをお願いします。
□佐藤氏 結局、M&Aは始まりでしかなく、長く続いていく“縁”の中で、ともに多くの物事を乗り越えていくという姿勢が重要になるというのは伝えておきたいですね。
昨今、M&Aの敷居が下がってはいるものの、誰かの人生を左右する行為でもありますから、僕自身、改めて慎重に進めなくてはならないと思わせられています。
■仲垣氏 自分が編み出したほかにない染色技術を、日本の文化に昇華させたい。そんな思いが強かったからこそ、ブランドを後世まで残すべく、今回の決断に至りました。
一人で自由にものづくりを続けたいなら、M&Aはあまり向かないと思います。一方で、自分のことよりもブランドやスタッフを守りたいという想いがあるのなら、M&Aを検討する価値は十分にあると思います。ただし、他社の力を借りただけで経営が楽になるわけではないのは忘れないでほしいですね。

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弊社はこれまで数多くのベンチャー企業の経営者と深い関係性を築いてきました。このネットワークを活用し、他社では見つからないような様々なM&Aニーズの収集が可能。デューデリジェンス(企業の収益性やリスクなどを総合的に評価すること)も実施の上で、最短2ヶ月でM&Aが成立した実績を出すこともできました。
■Web・IT業界に関するノウハウ
2006年の設立以来、提供をしているWebマーケティング支援サービスに加え、自社でメディア運営の事業も展開しており、これらの事業運営の経験を通して得たノウハウがあります。そのため他社が得意としないベンチャー・IT 領域において、業界や事業の背景を理解した適切なアドバイスが強みです。
